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デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
間章:雷霆を継ぐ者、ニカイドウ・ヒナミ!

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幕間B:ヒナミの湯浴み【後編】

 場面は前回から引き続き、ニカイドウ邸の浴室……


「……んん、ッフゥー……」


 熱湯で満ちた浴槽に肩まで浸かるヒナミ。

 元々それを想定した設計だからだろう、

 長身かつ一部分(両乳)が規格外にデカい彼女であって尚、

 窮屈そうには見えて来ねえ。


「さて、そろそろ……お、始まったな」


 程なく、浴槽に満ちた熱湯がじわりじわりと白く染まりだす。

 煙状に広がる"白い濁り"の正体は入浴剤で、

 湯に漬かった入浴者の体質や体調を考慮し配合されたその時限りの一点モンだ。


「ン~……今晩のは心労回復効果メインか。

 分かってるじゃないか……」


 瞬く間に乳白色に染まり切る熱湯……

 姿勢も相俟って湯に浮くヒナミの乳……

 深夜アニメのワンカットか、

 さもなきゃエロゲの一枚絵みたいな光景だった。


(……どこかで一月ほどと纏まった休暇を取って、

 ユウトくんや撃鉄戦隊(マズルフラッシャー)のみんなと一緒に観光旅行へ行ってみたいなぁ)


 ふと、ヒナミはそんなことを思う。

 勿論奴らにもそれぞれ都合があるから上手く行くかは分からんが、

 ともあれ普段から世話になっている大切な仲間なら、

 労いや恩返しも兼ねてド派手に大金をつぎ込んでサービスしてやるのも悪くはないだろう。


(行き先はどこがいいだろう。

 地球のリゾート地もいいが、異星や異世界なんかの地球外も捨てがたいな。

 みんながそれぞれの特性を遺憾なく発揮して楽しめる場所を選ばなくては。

 とすると、まず考慮すべきは――おっと、電話か」


 風呂場に端末を持ち込んでないヒナミが着信に気付けたのは、

 浴室の制御システムを端末と同期させてたからだった。

 とは言え通話に出ようモンなら、

 一旦湯から上がらなきゃならん……かと思いきや、


「こちらニカイドウ」


 事もあろうにヒナミは、浴槽から一歩も出ずして通話に応じてみせた。

 秘密はやはり浴室全域に及ぶ制御システムにあって、

 全域がやはり端末と同期した一つの巨大な骨伝導スピーカー兼収音マイクになっている。

 よってどこにでも現れるホログラムのタッチパネルで通話をオンにさえすりゃ、

 あとは壁や浴槽の縁にでも頭を預けるだけで、

 そのまま床面や水流の振動が相手の声を脳内へ再生してくれるんだ。


『ツキムラです。お取込み中すみません』

「構わんさ。丁度風呂場で暇を持て余してたトコだ」


 通話の相手はセキガハラ"鑑定部有機課"のツキムラって女研究員だった。

 そもそも"鑑定部"は要するに学術的な検査・調査・解析を行う部署……

 警察で言う所の鑑識に相当する集団だが、

 有機課は読んで字の如く"有機体"……

 即ち有機生命体(生物)絡みの調査を担当していた。

 さて、ヒーロー業界で調査すべき"生物絡みのもん"と言えば……


『えっ、お風呂ですかっ!? それはすみません!

 もし何でしたら掛け直しますけど!』

「構わんと言ったろう。

 それよりツキムラくん……君こそどうなんだ。

 まさか僕さえ帰って暫く経ったってのに、

 まだ仕事を続けてるんじゃないだろうね?」

『いえいえ、まさかそんな。

 ちゃんと言いつけ通りに帰りましたよっ。

 ただ、バタついてたせいで報告し損ねた解析データが幾つかありまして……』

「……わざわざ電話までしてきたってことは、

 何かとんでもないデータでも出たのかい?」

『ある意味そんな感じかも、ですね。

 細々したのは資料に纏めてメールで送らせて貰ったんですけど、

 一つどうしても口頭でお伝えしておかなきゃなってデータがありましてっ』

「ほう、興味深いな。具体的には?」

『"昨日の日中"にムジョウ(ホンゴウさん)が倒したあの怪人についてなんですけど』

「ああ、あのアブラゼミなんだかテッポウエビなんだかわからん奴か」

『はい。その"セミともエビともつかない怪人"なんですけど、

 解析したら案の定人間を素体にその二種類の形質を組み込んだ、

 よくある汎用的なバイオノイド系怪人だと判明したんですね』

「人間素体の動植物型バイオノイドは古くからの定番だからな。

 複数種の形質を混ぜ合わせたキメラ型とて珍しくもない。

 しかも昆虫と甲殻類でかなり離れているとは言え節足動物同士が二種類だろう?

 こう言っちゃなんだが、現代にあっては何ら騒ぐほどのヤツとも感じんがね」

『ええ、それは確かにそうなんです。そうなんですけど、

 素体に使われていた人間が……』

「何かしら"ワケあり"だったんだな? 当ててみようか。

 君が僕に報告しに来るってことは、特にここ最近の僕にとって因縁深い相手……

 察するに、賠償金を借金で補おうとして闇金に手を出したバンバ家の誰かだろう。

 具体的に名を出すなら……テツマ辺りか。

 元々七光りで養成校の国語教師になっただけの小物だってのに、

 ヒーロー業界を知り尽くしたような口ぶりで

 やれ『今のヒーローはなってない』だの『武器頼りのごっこ遊び』だのと……」

『あー、いえその……ニカイドウ総司令?

 お取込み中の所すみません、

 件の怪人の素体にされた人間は、バンバ・テツマではありません……』

「そうか。あいつは教員をクビになった後、

 バイク屋を始めるだのイクメンを目指すだの妄言を宣った挙句、

 政界進出まで企んでいて借金漬けだったから、

 ヴィラン組織への身売りぐらいはするものと思っていたが、違ったか。

 では誰かなあ……

 ツルギのヤツは元々バンバ家に不信感を抱いていたし……

 リョウセイ、も個人的には冤罪臭い所がある……

 トオルのジジイも反省して予てより家とは距離を置いてたし、

 何より記録映像のあの声は聊か若すぎる……

 とするとタカユキか?

 あいつも優秀なのは間違いないが、

 さりとて不正にウマい汁を吸って調子付いてたのは事実だからな……

 うーん、どうにも候補が多すぎて絞り込めないな……」

『……総司令、お言葉ですが』

「うん、どうしたね」

『すみません、私の言い方が悪かったんですけど、

 素体になったのはそもそも旧バンバ家の人間ですらなくてですね……』

「なんだと。とすると、よもやイカリ家か?

 ……まさか、イカリ・ジュンヤが素体になったなんて言わんだろうね?

 確かにヤツはユウトくんを怨んでいるだろうが、

 それにしてもそんな出来過ぎた話なんて……」


 『ありはすまいよ』と、そう締めくくりたかったヒナミだったが……


『……あの、総司令……実は、その"まさか"なんです』

「……なにぃ?」


 ツキムラからの返答には、思わず混乱せずにいられなかったんだ。


「かつてセキガハラを追い出され"ツケ"の清算に追われたイカリ家のバカガキが、

 闇金に手を出し首が回らなくなったか、

 よもやヴィラン組織に"身売り"させられ、

 "宇宙忍者もどきのなりそこない"とさえ言い難い怪人に成り果てるとはな……」

『本当ですよ。

 ヒーローを愛し研究し続けるヒーロー学者が、

 まさかヴィランに身を落とすだなんて、

 草どころか藻だって生えませんよ』

「或いは"自らヴィランと化しヒーローに殺される実験"だったのかもしれんが……

 まあ、その線はないな。

 かのカール・パターソン・シュミット博士じゃあるまいし……」


 カール・パターソン・シュミット。

 19世紀末期(1890年)のアメリカ合衆国イリノイ州に生を受けたこの爬虫類学者は、

 毒蛇ブームスラングの幼体に噛まれるも

 "口の奥に牙を持つ後牙類の毒蛇なので人間は殺せない"

 "幼体だから毒の量も強さも高が知れている"といった思い込みから

 『治療するぐらいなら毒が自身に及ぼす影響を記録しよう』と、

 二十四時間後の落命まで執念深くペンを離さなかった逸話で知られている。


「……それで? ヴィランの素体があのバカだったってのが、君の伝えたかった特記事項だと?」

『いえ、それだけではなくてですね。

 なんならこちらの方が本題かなと思うんですが……

 イカリの身体に施されていた改造に、

 なんだか妙な既視感があったんですよ』

「既視感? ……確かに、機械であれ生体であれ、

 "作品"には"生産者のクセ"が色濃く出るってのはよくある話だが……

 まさかあのバカガキ、

 要職時代(お飾りだった頃)にどこかへ組織の機密を売り渡してたってのかい?」

『確かにそういった可能性も否定しきれません。

 けどこれは、もっと別の……

 ライホウさんが現役だった頃によく見た"改造のクセ"そのものなんです……』

「なに? 彼の現役時代にだと?」


 ヒナミは驚かずにいられなかった。

 ライホウの現役時代、

 セキガハラの研究系部署に在籍してた生体改造系の研究者で、

 かつ組織を離反した経歴の持ち主といえば……思い当たるのは一人しか居ねえ。


(何ならセキガハラの長い歴史にあって、裏切者自体両手で数えるほどしかいないなら……!)


 恐る恐る、ヒナミは口を開く。


「ツキムラくん、君の言うその"既視感のある改造のクセ"の持ち主ってのはまさか……」

『……はい。お察しの通りです。

 あれは十中八九、


 "()()()()()()()()()()()"で間違いないでしょう』


「やはりかっっ……!」


 そう、つまりイカリ・ジュンヤが成り果てたのは、

 言うなれば"超簡略化した劣化コピー版遺恨リーパームジョウ"とも言うべき存在だったんだ!


(ネオフェミニニス党の残党どもめ、よもや生き延びていたとはっ……!)


 怒りに震えるヒナミは、勢いよく立ち上がる!

 湯気が上がり! 湯が爆ぜ散り! Rカップの乳が揺れ!

 全身の筋肉が隆起して、端正な顔は義憤に歪む!


「……"女"足り得ぬ"屑牝"どもめっ、

 楽に死ねると思うなよっっ……!」


 まさに"遺恨を刈り取る為の戦い"は、

 その当人(ユウト)すら知らぬ間に開幕の時を迎える……!

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― 新着の感想 ―
 これはいかに相手が下位互換とはいえヤバくないですか?  どれほどのレベルでオリジナルが再現されているか、というか制御で抑えているところを敢えて解放しているとすると暴走もあり得るだけに本来にヤバそう。…
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