幕間A:ヒナミの湯浴み【前編】
さて、場面は前回ラストから暫く経った頃……
具体的な時刻としちゃ日付が変わった翌午前零時半少々前。
「……遅くなってしまったな。まあ、仕方ないか」
現セキガハラ最高司令官兼三代目"レールガンマイスター"のニカイドウ・ヒナミは、
ユウトとの長話を終えてからも諸々の業務に奔走……
途中で緊急招集がかかりヴィランの数十人程度を蹴散らしたりもしながら、
どうにか業務を終えて自宅に帰って来た所だった。
ただ業務量の多さや予期せぬ想定外の頻発もあってか、
上述した通り帰宅時刻はかなり遅くなっちまったワケだが……
(経営者時代とは業種からして違うのだし、
いい加減意識を切り替えなくては。
折角気になる彼と距離を縮められたってのに、
体調を崩して休養だなんだとなったら笑い話にもならん)
玄関で靴を脱いだヒナミは、
屈んで靴を揃えつつスーツを脱いでいく。
……勿論雑に脱ぎ捨てたりなんかしない。
ジャケット一枚からネクタイ一本に至るまで、
丁寧に外しちゃハンガーに引っ掛けていく。
「……もう少しラフな格好の方がいいだろうか」
下着にシャツ一枚ってナリで考え込むヒナミ。
思えばこれまでの人生、マジな意味での"私服"に袖を通す機会が何度あったろうか。
学校や仕事場は――大学やバイト先に至るまで――基本ガッツリ制服だったし、
休日・休暇にしたって親族の前に顔出したり、
はたまたドレスコードのある施設に行きがちで"それなりの服装"をしてた。
百分率換算すりゃ"私服"で外に出た経験なんて、
果たして二桁行くか行かないかだろう。
「そもそも僕自身組織の皆を"部下ではなく仲間だと思いたい"クセに、
他ならぬその僕自身が"上司の格好"をしてるってのもおかしな話といえばそうじゃないか。
とすればもう少し、そう幾らか、
公序良俗に配慮した範囲で窮屈でない服装をした方がいいんだろうな」
さて、ならどんな服装がいいだろう?
ヒナミは考え込もうとして、自分がどうにも中途半端な状態なのに気付く。
「……いかんな。プライベートな空間では気を抜くのがセオリーとは言え、
だからってこんな半端な格好のまま何を悩んでんだ全く」
どうにも良くねえなと、ヒナミは腰へ手を伸ばし"何か"を操作する。
続け様に、自転車や車椅子のタイヤから空気が抜けてくような音がして――
「……しまった」
女は自分の失態を悔いたが、然し時すでに遅し……
ヤツの身体に異変が起こる!
「ゔおっ……!
ボタンを外し忘れた上、"一気に緩め過ぎた"かっ……!」
異変が起きたのは、事もあろうにヒナミの胸元だった。
元々ユメやマリエと同程度、
カップサイズにしてGとかその辺だったヤツの両胸が、
突如音でも立てそうな勢いで盛大に " 膨 張 " しやがったんだ!
「ぐうっ……! ぐごがぁっ……!
は、早くボタンを、ボタンを外さねばっっ……!」
それこそ魔術でも使ったが如き様相だが、
ともあれ明らかにシャツのサイズが合ってねえからだろう、
ヒナミは息が詰まりそうになりながらシャツのボタンを外しにかかるが……
「なあっ! くっ! このっっ……!
は、外っっ……外れんっっ……!」
まあなんというか、
みんなお察しの通り上手く行かないワケで……
程なく糸で縫い付けられたボタンも限界に到達し始める!
「くっ……!
させるかっ……!
あの性悪の所からバカ高い糸を買って
わざわざボタンを付けなおしたってのにっっ!
こんな、所でっっ……!」
尚もボタンを外そうと必死になるヒナミ。
その様は"性別問わずモテそうな王子様系美女"らしからねえ有り様で
――けれどそれでもなんでか"無駄に美しかった"のは流石(?)だろう――
少しの間ばかりはイイ感じに抵抗できていたが……
「飛ばさせはせんっ!
飛ばさせはせんっ――ぞぁぁあああっ!?」
抵抗空しく"ボタン"は限界を迎え破損……
細々した破片になってあちこちに飛び散っていく。
所謂"ボタン飛ばし"の派生形(?)……名付けるなら"ボタン割り"ってトコだろうか。
「……ああ、なんてことだっ……!
"また"これかっ……
これで何度目だ、全く情けないっ……
しかも今度は、よりにもよってボタンが割れるなんてっ……!
糸を頑丈にしたから大丈夫だろうと思っていたら、
まさかボタンかっっ……! それも、過半数っ……!」
殆どのボタンが吹き飛び見事(?)"観音開き"となったヒナミのシャツ……
容赦なく開かれた前立てから露わになるは、
白い肌着にぴっちり包まれて形成された見事な"乳袋"……
素肌ひいてはブラすら見えずとも
いっそ破壊的なほどの体積と質量からなる"着衣爆乳"は、
最早見る者を魅了しつつも圧倒せんばかりの迫力だ。
「……いい加減扱いに慣れろって話だよなぁ。
この身体になってからもう何日経ったと思ってるんだ、っていうか……」
自嘲気味にシャツを脱ぎ一先ずハンガーにかけたヒナミは、
充電器にセットしていた通信端末を操作する。
[起動完了。指示要求]
「シャツのボタンが割れて飛び散ってしまってね。
片付けておいてくれないか。……どうも自分で掃除する気になれんのだ」
[了解。清掃開始]
端末からの信号を受けて起動したのは小ぶりな円盤型ロボット掃除機だった。
しかも最低限とは言え持ち主と対話までするってんだから中々どうして侮れねぇ。
「……ともあれ風呂だ。ゆっくりしよう」
砕けたボタンの後始末をロボット掃除機に任せたヒナミは、そそくさと浴室に向かう。
「よっ……」
脱衣場。姿見の前で肌着を脱げば、
ヒナミは忽ち下着姿に……
「……まあ、見栄えはそれほど悪くないのだよな」
下着は上下とも黒、飾り気のない簡素なデザイン……
なんだが、何より特筆すべきはブラに包まれた両の乳だろう。
なんたって(既に述べたが)サイズがとんでもねぇ。
膨張前ですらGカップ……
高身長のそれともなりゃ紛れもなく"揺れる"し色々と"挟める"サイズだってのに、
それが今や数値にして一.二メートル越えのRカップだ。
いよいよ規格外、そりゃ隠さずにいられるかって話だろうぜ。
「無論、不便なことこの上ないのも事実だが……
さりとて憎みきれんというか、
何なら愛着だって湧きもするし、いっそ誇らしくも思えるほど……」
あたかも抱きかかえた愛猫を愛でるが如き手つきで乳を撫でるヒナミ……
読者のみんなも台詞回しからどことなく察しただろうが、
ヒナミは元来一応巨乳の域にこそあれ、
それでも元からこんな規格外にデカかったワケじゃねえ。
「とは言え、果たして"正しい判断"だったのかは未だに謎だな。
他にも探せば色々と"やり様"はあったんじゃないかというか……」
そこにはとある"已む無き事情"があったワケだが、まあそれは別の話……
ともあれ下着も脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿になったヒナミは、
そのまま浴室へ直行……
「っっ……ふはー……」
シャワーを浴びりゃ、当然全身を熱湯が潤し温める。
血色のいいキメ細やかな肌を伝い流れる水滴は、
さながら皮膚表面のチリや垢共々苦痛や疲労も洗い流すが如し。
「さて……」
一通り大まかに湯を浴びたら、
次は頭を、そして身体を洗っていく。
「……やはりでかくて重いと、その分洗いづらいもんだなっ」
皮膚の表面積が大きいってことはその分身体を洗うのにも手間がかかる……
至極当たり前の事実をこれでもかと実感するヒナミ。
タオルやスポンジを的確に使い分けるその手つきは流石慣れたもんだが、
さりとて慣れだけじゃどうにもならねぇトコもあるようで……
(地球の内外問わず僕と同じくらいだとか、
或いは僕より"でかい"方も多いようだが……
彼女ら、或いは彼らがこの辺どうやってんだか気になる所だな)
乳の裏側を入念に擦りつつ、ヒナミは思考を巡らせる。
(専用の器具なんかあったりするんだろうか。
若しくは機械や使い魔、使用人の補助があったりするのかな。
どうにも家に使用人を置くのは趣味じゃないんだが……)
そこでふと、ヒナミの脳裏にある考えが過る。
"考え"はやがて具体的なイメージとして形を得ていくが……
(……やめよう。変な妄想なんてするものじゃない)
即座に自分自身へ言い聞かせながら、身体についた泡を丹念に洗い流す。
(確かに"そう"ならそれは最高だが……
やはり一人前たるもの、身体くらい自力で洗えるようにならなくては、ね)
やはりキメ細かく弾力のある濃厚な泡。
幾らか分厚い不規則な層になってヒナミの身体に纏わりつくソレは、
宛ら疑似的な衣類の様相を呈していて……
そんな泡がシャワーヘッドからの熱湯であっさり崩れ去っていく様は、
言ってみりゃ女体の要所要所に張り付く謎の衣装が溶けていくようで……
要するにまあ、どうにもやたらいやらしく、その上無駄に美しい有り様だった。
「……さて」
ぬるりと立ち上がったヒナミが向かうは浴槽。
それも中々広めで若干深め……
まさに規格外気味の"デカ乳"を持つヒナミの入浴を想定して設計されていた。




