ケース9:"蝉蝦"の活造り
場面は前回ラストから暫く経った頃のある昼下がり。
『死刑ダァァァァッ! 死刑ダァァァァッ!
死刑ダッ! 死刑ダッ! 死刑ダッ! 死刑ダッ! 死刑ダァァッ!
ミイン! ミイン! ミイン! ミイン! ミイイイイイイイン!』
観光客で賑わうレジャー施設を襲うのは、
全身銀色の外骨格に覆われたセミっぽい面構えの怪人だ。
ただその両腕はハサミになっていて、
しかも船の碇っぽい形の尻尾を生やしてるもんで、
ぶっちゃけシルエットそのものはエビとかザリガニの怪人にも見えてくるワケだが……
「よォバルタンモドキ、よくもやってくれたなぁ。
てめえが乱入してきた所為で"うおむすめ"のリアイベ中止になっちまったじゃねェか」
逃げ惑う観客の波をかき分け現れたのは、
お馴染み本作主人公"遺恨リーパームジョウ"ことホンゴウ・ユウト。
ほぼ丸一ヶ月の異星遠征を終え休暇を取ったヤツは、
上記の台詞通りVtuberグループのリアイベを見にこの施設へやって来ていた。
「今日のゲストは根間ういお嬢にホモサピの旦那、
アウトドア日誌の"ヘビさん"やらVEEの亞生うぱるはじめ豪華な面々で、
しかも魚介料理対決企画もあるって聞いたから、
結構気合入れて楽しみにしてたっつーのに……
何を台無しにしてくれてんだ、この節足動物風情がぁ」
だが、ユウトの台詞を見りゃ分かる通り、
イベントはこの空気読めねぇ節足動物怪人のせいで中止に追い込まれた。
即ち"汚れ切った衣類の洗濯をしようとコインランドリーへ来たのに、
洗濯機ん中へ墨汁をブチ撒けられてた"ような、そんな感じ。
休日のレジャーとかまさに"命の洗濯"だからな、
そりゃキレねえ方がおかしいってモンだろう。
……"洗濯機を買え"ってツッコミは無しで頼む。
「その半翅目特有の面構え……
死刑だ死刑だと喚いてる辺りからして、さてはセミかオメー?
その割にはハサミに尻尾までついてエビみてえだが……
ま、どっちにしろ蛋白源には変わりねえ。
よぉ節足動物、てめえは何として扱われ何の料理になりてぇんだ?
セミ扱いで南蛮漬けか? それともエビ扱いでエビフライか?
リクエストがありゃ応じるぜぇ~?」
[列席御礼♥]
挑発的に問い掛けながらクラナドライバーを出すユウト。
さて、対する怪人からの返答はっつーと……
『ギイギギジンジイイッ!
オ、オマエハ、"ムジョウ"ッ!
遺恨リーパームジョウノ"ホンゴウ・ユウト"ッ!
腐敗シキリ悪ニ染マッタヒーロー業界ノ象徴メッ!
アノ時国外追放シテヤッタトイウノニ、何故コンナ場所ニイルンダッ!?』
なんとまあ、返答として成立すらしちゃいなかった。
となるともう、この後の展開なんて言うまでもなく……
『コノ国ニハオマエノ居場所ナンカ
ソモソモ存在シナイッテノニ――ツクホォシ!?』
無駄口を叩く怪人の顔面にナガシノマグナムの散弾が炸裂!
不意打ち気味の一撃を喰らい、
怪人は間抜けな声を上げながら盛大に吹っ飛ぶ!
……最早本作の読者にしてみりゃ見飽きた展開だろう。
いやホント『遺恨リーパームジョウの質問に質問で返すと攻撃される』ってのは、
そろそろヴィラン界隈で周知ぐらいされてていいハズなんだが……
「質問を質問で返すンならせめて事前に断りを入れろ。
あとさも因縁の相手みてーにぬかしやがるが、
俺ぁてめえ如きハタ迷惑な節足動物なんざ知らねンだわ。
喧しいだけで中身がなくてすぐ死んだ、
"セミの足元にすら及ばねえクズ"なら知ってるけどなァ」
『カッッンナカナァァァ……!
コノ悪党ガァッ! ドコマデモ不愉快ニサセテクレルッ!
イイダロウ! マズハオマエカラ"死刑ダ"アーッ!』
「ふん、それで啖呵切ったつもりか。藻雑魚一匹もビビんねえよ」
[フォルネウスモード♥]
尻尾をコンクリへビタンビタンと打ち付けながら、
ハサミをガチガチと鳴らし威嚇する怪人!
対するユウトは即座にドライバーを操作、フォルネウスモードに変身する!
『……遺恨リーパームジョウ、【フォルネウスモード】。
我欲の牙で、深く喰らい付く……』
柄にもなく"多少ヒーローチックに格好つけたような"名乗りを上げるユウト。
ライホウの引退を受けて組織も新しくなったってコトで、
てめえなりに新しいことに挑戦してみようって心境の変化による行動だった。
『ミインミンミンミイイイインッ!
死刑ダ! 死刑ダ死刑ダ死刑ダ死刑ダアアアアッ!』
それに腹を立てたかどうか知らんが、
怪人は両腕のハサミをカチ合わせ砲弾じみた衝撃波を放つ。
『ジュワッ! シャワッ! シャワアアアアッ!』
『しっかり狙え間抜けぇ~。
俺を死刑に処すんだろうが。
どんな致命の一撃だろうと、命中しなきゃどうにも――ィってエ゛ッ!?』
その破壊力は中々のもんだった。
運悪く喰らったユウトの顔面左半分には蜘蛛の巣状の亀裂が入り、
内部からは血の混じった毒々しい色の粘液がダラダラと流れ出る。
……ま、傷自体は持ち前の再生能力ですぐ治ったんだけどな。
『ああ、クソッ……!
如何にも噛ませ臭ェノリしてやがるクセして、
マグレとは言えこの俺へ一撃入れやがるとは……』
『黙レエエエ~! オマエナンテ、死刑ガ相応シインダア~ッ!』
『それ以外に台詞がねえのか?
……要請-"断ち切る刃は海魔の顎が如く"ッ』
[要請受理♥ 供給、フォルネウスハルバード♥]
フォルネウスハルバードを形成したユウトは、
一気に勝負を決めにかかる。
『ジリジリジリギギイイッ!
死刑ダ死刑ダ死刑ダ死刑ダ死刑ダァァァァッ!』
『この調子だと斧も刃が通るかわからねえな。
となりゃアレで行くかっっ……』
[葬儀開催♥ 海洋葬-ローエンドプラン♥]
ユウトがベルトを操作すると、
フォルネウスハルバードの刃を起点に瓦礫の砂粒を含んだ水が円盤状に纏わりつく。
高速回転するそれは、さながら水でできた電動丸鋸ってトコか。
『死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑ダ! 死刑!
死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑ダ! 死刑!
死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑ダ! 死刑!』
『んな不適切極まりねえ三本締めがあるかっ!』
[フューネラル・ストライク♥]
柄のボタンを押し込んだユウトは、
そのままフォルネウスハルバードを構え、強烈な踏み込みで一気に加速!
『死刑死刑死刑! 死刑死刑死刑! 死刑死刑死け――
『さらっと"四本目"行こうとすんなッ!』
一気に怪人の懐へ入り込むと、そのまま一気に切り上げる!
『イッジギイイイイイイイッ!?』
豪腕でもって振り上げられたフォルネウスハルバード!
その刃に纏わりつく水の刃はそれだけで確かな切断力を誇るが、
微細な砂をも取り込んだことで標的を"削る"性質をも獲得!
ともすりゃ"頑強さ"と"柔軟性"を併せ持ち、
特殊な身体構造もあって地味に防御力の高かった怪人とて一溜りもねえ!
『ミィィィン……ミ゛イイイイッッ……!』
結果見事"腹開き"にされた怪人は、
得体の知れない色の体液とも内臓ともつかねぇ半固体状の物体を垂れ流しながら崩れ落ち、
程なくエンスト起こした中古車みてぇに動かなくなった。
『やれやれ、やっぱグレードの低いプランだと死体が残っちまうか。
駆除した敵の死骸を爆散させずに抹消処理できるっつーのが
ムジョウシステムの優位性だっつーのに……』
[葬儀閉式♥]
「ま、その分死骸を分析計の部署に回せると考えりゃ悪くねーが……
シンプルに火力や規模が下がっちまうからなぁ~」
変身を解除したユウトは、
そのままセキガハラ本部へ連絡を入れる。
(行きたかったな~、リアイベ……)
仕方のない後悔を抱えながら、
駆け付けた事後処理班に業務を引き継いだユウトは報告のため拠点へ向かう。




