ケース2:乱入者の正体
場面は前回から引き続き、旧北海道某所……
『じゅっぼわああああああ!?』
『『『『『『あっじゃぱあああああっ!?』』』』』』
ライホウを喪った二代目"撃鉄戦隊"の危機!
巨大ロボ"バレルエンペラー"は大破、
変身も強制解除させられまさに絶体絶命って、まさにその時!
調子付き大技を放とうとした"偽物ども"のロボ"デモクラシーアイスバイン"に、
突如虚空から飛んできた稲妻が如き光弾が直撃!
直前に倒した相手より遥かに酷い損傷を負った"模倣品"は派手に崩壊、
当然中に乗り込んでた"偽物ども"とて放り出され、
マズルフラッシャーに似せて作った変身システムも機能を停止……
要するに変身解除へ追い込まれちまう!
「ほっげえええ……!
こんなの、おかしいのダ……!」
だがマズルフラッシャーの面々にしてみりゃ、
偽物どもの素顔なんてどうでもよかった。
つーよりかは、それどころじゃなかったんだ。
「なんで……」
「こんな所に、カイザージュピターが……!?」
何せ"模造品"に不意打ちをブチかましたのが、
二度と表に出て来るハズのねえ巨大飛行戦艦"カイザージュピター"だったんだからな。
何せカイザージュピターは元々歴代"雷霆勇者"にしか扱えねえ。
加えてしかも"実質最後の雷霆勇者"がダビデ王症候群で引退に追い込まれたとあっては、
最早永遠に封印しておく以外の選択肢なんてないハズなんだ。
「よう似た機体、なワケあれへんよなァ……」
「ええ、見間違えようもありません……」
「っていうか、あんなのが二機もあるとか冗談きついって……」
ライホウと共に鉄火場を潜り抜けて来た六人は確信してた。
『あれは偽物でも幻覚でもない。
正真正銘紛れもなく本物のカイザージュピターだ』ってな。
だがだからこそ、疑問を抱かずにいられねえ。
「でも、だとしたら誰が……?」
果たしてあれがマジでカイザージュピターだとして、
じゃあ操縦席で動かしてんのは誰なんだ、って疑問をな。
「……『宇宙戦艦ヤマト』だっけ」
ふと、タイセイが零す。
「主人公の上司が死んだハズなのに、
実は医者の誤診で死んでなかったっての、あったよな」
「……最終回の?」
「そうそう。
……バンバさんも、そういうパターンってこと、ないかな……」
「おお、そらァええなあ……」
「ほんとそれ、ですよ……
隊長が回復して、レールガンマイスターに復帰してくれたら……
きっと何もかも全部、一気にひっくり返してくれそうだし……」
「……となったらホンゴウも戻って来れたりして……
あいつってばキャプテンの件凄く気にしてたから、
多分大喜びするんじゃない……?」
「ええ、間違いありませんね……
あれを操縦しているのが本当にバンバさんなら、ですがね……」
傷付いたヒーローたちは口々に語らうが、
その一方で同じく変身解除に追い込まれた"偽物ども"にも動きがあった。
「パックリィィィィィ~~~……!
ライホウお兄様のカイザージュピターを真似て、
こともあろうにライホウお兄様の信者である僕らに攻撃してくるとは、
許し難い奴らなのダ~~~~!
みんな、作戦変更なのダッッ!」
「「「「「「おうっ!」」」」」」
中心人物らしきチビ野郎が呼び掛ければ、
呼応するように残る六人が立ち上がる……
いや、六匹とか六体と言った方がいいか?
何せ"偽物ども"と来たら、
揃いも揃ってガッツリ人外じみた風貌をしてやがったからな。
しかも人間離れした姿ってだけで統一感はほぼ皆無、
かつ低予算駄作映画のバケモンみたいな、
どうにも残念な姿をしてるってぐらいしか共通点はねえ。
「かくなる上は、せめて最後の"推し活"なのダ~!」
「「「「「「ダ~~~っ!」」」」」」
"推し活"だかの為に偽物どもが取り出したのは、
どぎついほど鮮やかなクリアレッドの液体で満たされたスパウトパウチ容器……
となりゃ、読者のみんなだって"それ"が何なのかは概ね察しがつくだろう。
「「「「「「「モビ~~~ディキュ~~~ルっっっっ!」」」」」」」
……そうとも。
カイデン・ヒトトキによる乱用が未だ記憶に新しい、
悪魔さえ顔を顰める宇宙最悪の劇薬"モビーディキュール"だったんだ!
となりゃ、奴らの次の行動は決まっていた。
「真のヒーローとは、しぶといもんなのダ~~!」
チビ野郎は叫びながら乱雑に容器を開封!
後の六人もこれに続き、
奴らは一斉に手元のモビーディキュールを飲み干し巨大な化け物に姿を変える!
「な~んやねんっ、あいつらま~だ凝りてへんのかいな……」
「いや~、流石にしつこ過ぎません?
そもそも喧嘩売って来た動機からして意味不明だし……」
「しかもよりによってなんでモビーディキュールなんか……」
「"地獄行き特急の片道切符"、ですもんね……」
「考え得る限り最悪の選択なんだぜ……」
「……大人しく諦めていれば、
無駄に苦しみながら死ぬこともなかったでしょうに……」
最早見た目通り"自棄を起こして巨大化する怪人"そのもの。
そもそも安定して戦えたハズのデモクラシーアイスバインが一撃でやられた以上、
まして実質弱体化を強いられるモビーディキュールなんぞ使って勝てるワケもねえ。
とは言え、だからって誰が奴らに同情するワケもなく……
『……やる気があるのは結構だが、
些かタイミングとベクトルが悪すぎる。
挙句僕の先輩方さえ傷付けられたとあっては看過できん、な』
事実カイザージュピターの操縦席に腰掛ける"ライホウでない誰か"もまた、
当初の予定通り偽物どもを始末しにかかる。
『……カイザー、天雷変形だ』
[テ~ンライッ・ヘンケ〜イ!]
操縦席の"誰か"――その姿は紛れもなく"レールガンマイスター"だった――の合図に合わせて、
カイザージュピターは瞬く間に姿を変えていく。
『完成、エレクトロブレイヴ……』
[エ・レ・ク・ト・ロッ!
ブレェ〜イヴッッ!]
十秒前後の高速変形の末に出来上がったのは、
スタイリッシュにメカメカしい二足歩行するドラゴン型ロボ"天雷闘士エレクトロブレイヴ"だった。
「来たぜ、エレクトロブレイヴ……!」
「相変わらずのイカツさやのぉ〜」
「あの偽物どももすっかり見惚れてしまっているようですね……。
命を賭す覚悟までした癖に敵前で棒立ちとは、なんとも間抜けなものです」
「結局、どうあがいても根っこは隊長の狂信者ってことですかね〜」
「っていうかちょっと待って?
このままだと私ら巻き添え喰らうんじゃない?」
「……障壁と、序でに転移も準備しておきます」
「あら、流石ねマリエちゃん」
「……ただ障壁はともかく、転移は安定発動できるかどうか……」
「だとしても助かるんだぜ……!」
ドラゴンといっても骨格は幾らかヒト型に近く、さながら竜人ってトコか。
角や牙を生やし翼どころか尻尾まであったりと、全体的にはオーソドックスなデザインだが、
一方両の拳じゃなくドラゴンの頭になっていて、
さながら三つ首のワイバーンをも彷彿とさせる異形ぶりで……
『……せめて攻撃してくればいいものを、
何を敵の前でボサっと突っ立ってんだか。
まあ暴れないなら丁度いいか』
[ボルテ〜ジッ・セットア~ップ!]
操縦席の"レールガンマイスター"がコマンドを入力すれば、
エレクトロブレイヴの"三つ首"は一気に口を開き、
口腔内に青白い電気エネルギーが球状に集束していく。
そして……
『はっ!? い、いかんのダ!
推しが眼前にいる感動の余り、
敵対している事実さえ失念してしまったのダ!』
『こ、これは一生の不覚ですぞ~!』
『危機ですわ~!』『ピンチですの~!』
偽物どもは今更ながら取り乱すが、最早後の祭り……
[ボルテ~ジッ・セミマァ~ックス!]
『喰らわせてやろう、"エレクトロ・ディストラクション"をっ』
[エレェェ~クトロッ・ディ~ストラクショ~ンッ!]
限界まで集束した電気エネルギーは、
四十九発の光弾として一斉に発射される。
『のわあああああっ!?
こ、こうして見るととんでもない迫力なのダッ!?』
『バカ野郎! 言ってる場合かっ!』
『や、やられてしまうのであ~る!』
『いやあああ! こんなのってないわあああああ!』
不規則極まりない軌道でもって素早く飛ぶ無数の光弾を、
まさかロクに状況把握すらできてねえ木偶の坊どもが対処しきれるワケもなく……
『『『『『『『アッバァァァァス!?』』』』』』』
結果偽物どもは揃いも揃って各七発の光弾を喰らい、
木っ端微塵に爆発四散……
条件が整わなかった所為で"ゴージャーフレイム"にもなれず、
何とも中途半端な形で死滅した。
『……さて、こんなものかな。案外、上手く行ったんじゃないか?』
因みに"偽物ども"の余りに呆気ない死に様は
当然と言うべきかセキガハラの空撮ドローンにしっかり記録されていて、
後年"二十一世紀で最も間抜けなヴィランの最期"として
ギネス認定されちまう羽目になるんだが……
それはまた別の話だ。




