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デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第三章:雷霆勇者救出編

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幕間:雷霆勇者の末路

 時は五月某日……

 異世界レイブラディアでの戦いから約二ヶ月後のある昼下がり。


「……どうしても、ダメですか」

「おうよ……言っちゃなんだが、ありゃもう無理だ……」


 場面はセキガハラ拠点内コンビニエンスストアのイートインスペース。

 端午の節句に因んだキャンペーンで配られた柏餅を齧りながらぼやくのは、

 セキガハラ在籍のヒーロー"遺恨リーパームジョウ"ことホンゴウ・ユウトと、

 同組織の医事課に籍を置く古株精神科医ミヤマガワ・ボタンジロウ。


「何人も見て来たんだよ、"ああなっちまった"ヒーローはなあ……」


 "依存症になるウマさ"と誉れ高い絶品柏餅片手にぼやく医者の表情は、どうにも暗い。

 気分が沈みきってるせいだろう、普段の間延びしたような口調もなりを潜めていた。


「ああなっちまったらな、もう戻れねえんだ。

 言わばありゃ"精神の死病"……

 治療するとかそういう話じゃねえんだよ」

「……」


 余りにお先真っ暗なボタンジロウの言葉に、ユウトは力なく項垂れる。


(なんでこうなるんだよ……

 俺か……? 俺が悪かったのか……?

 俺はただ……先輩を救いたかっただけなのに……)


 この独白と前回までの内容から察しはつくだろうが、

 二人の表情がこの上なく暗いのにはバンバ・ライホウの現状が関係していた。



 話は遡って約二ヶ月の同年三月某日。

 敵組織総本山から救助され無事に地球へ帰還したライホウは、

 全身を蝕む麻痺の治療やその他何かしらの不調・悪影響を見越した精密検査の為、

 セキガハラ傘下のヒーロー病棟へ担ぎ込まれた。

 治療と検査は組織傘下の医療従事者のみならず、

 外部からも複数名の専門家を呼び付けて大規模に行われ、

 凡そ二十八時間にも及ぶ長丁場になった。


 ま、そんだけやった甲斐あって全身麻痺は完全に治療されたし、

 危険極まりない異次元空間で変身強制解除級の傷を負い、

 しかもかなりの長時間無防備な状態で拘束されてた割には、

 これといった身体的な不調や悪影響の類も見受けられなかったわけだが……


 それでもまだまだ予断を許さねえ状況には変わりねえってことで、

 ライホウは大事を取って長期間の入院を余儀なくされちまった。


 事実、ヤツは直ちに生命を脅かし得る脅威からこそ逃れられていたが、

 それでも全く何も問題のない健康体だったかっつーとそんなワケはなく……

 異次元空間での凄惨な体験は、確実に戦士の精神を蝕んでいた。

 具体的な症状としちゃ鬱病の併存した心的外(P)傷後ス(T)トレス(S)障害(D)みてぇなもんで、

 一見して鉄火場でひたすら酷い目に遭った戦闘者が精神を病んだパターンの典型と思われた。


 特にライホウは東亜有数の名門バンバ家に生まれた御曹司で、

 ヒーローであるのみならず資産家・学者・経営者・芸能人を兼任し働き詰めの生活を送っていた。

 労働意欲のある優秀な金持ちは得てして自らをこそブラック体制で働かせがちなのは世の常だが、

 それにしてもライホウの働きぶりは聊か……いやかなり異常と言えた。

 寧ろ今まで精神を病まずに居たのが奇跡ですらあるだろう。


 とは言えこの当時

 ――具体的には三月末頃――

 誰もがライホウの精神病は治療できるモンと信じて疑わなかった。

 だが治療を進めるにつれ、医者たちは絶望的な真実を思い知らされた。

 "雷霆勇者"バンバ・ライホウ……

 二代目"レールガンマイスター"として名を馳せたこの男は、

 その実如何なる医療でも未だ明確な治療法の見つかってねえ、

 まさに"不治の病"か"死病"とでも言うべき恐るべき精神疾患を患ってしまっていたんだ。


 その名も"英雄性心的外傷ストレス症候群"……

 英名の"Heroic Personality Post-Traumatic Stress Syndrome"を略して"HP2TS2"と呼ばれる他、

 より簡略化すべく"ダビデ王症候群"など英雄の名を冠した通称で呼ばれることもある。

 通称のまま(?)主には壮絶な鉄火場を経験したヒーロー等の戦闘者が発症するこの病は、

 パッと見じゃフツーの精神疾患と区別がつき辛ぇ。


 だが根本的にはより複雑怪奇な代物で、

 そもそも発症の原理や原因が全くの謎、

 かつ投薬や精神分析なんかの"並みの精神疾患に効く治療法"が全く通用せず、

 オマケに患者が戦闘者時代に用いてた異能や装備が、

 患者自身の精神状態に引っ張られるが如く暴走する

 ――異能は封印処理をも突き破り、

 保管されてた武器や戦闘用メカさえひとりでに動き出す――など、

 厄介な点は挙げればキリがねえ。


 当然治療・予防法すら確立されてねえもんで、

 ヒーローたちはあくまで"フツーの健康管理をしつつ

 HP2TS2にならねえよう祈る"ぐらいしか対処法がなく、

 諸方では『ある意味どんなヴィランより恐ろしいヒーローの天敵』とまで呼ばれていた。

 ま、せめてもの救いはそもそも発症がごく稀で患者も極端に少ないってトコだが……

 そのせいで研究が遅れてるのも事実ならいよいよ始末が悪い。



「……」

「……ホンゴウ、お前もよく知ってんだろ?

 "ダビデ王症候群"になっちまったヒーローは死んだも同然……

 最早社会から隔絶する他ねぇんだ。

 事実組織はバンバの引退を決定し、

 三代目レールガンマイスターの選出に躍起になってる」


 ボタンジロウの言葉はユウトの心に重く伸し掛かる。

 自分がもっと上手くやっていればああはならなかったハズ……

 過ぎたことを悔やむのは無駄だと理解ていても、

 どうしても頭を離れなかった。


(全く、どこで間違えちまったかなぁ……)


 結局ユウトは一連の件について過剰なほど深刻に悩み続け、

 凡そ丸一ヶ月もの間引き摺り続ける羽目になったんだ。

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