エピソード7:死神連戦最終戦
『……やれやれ、全く大したものだねぇ~。
たかが地球人如きの分際がレイブラディアに立ち入るってだけでも自殺行為なのに、
その上こうして組織の基地にまで乗り込んで来るだなんてェ……
しかも目的が攫われた仲間を助け出すためってんだから、
全く前代未聞過ぎて言葉も出ないよねェ~』
『……その言葉、賞賛ってコトでいいんだよなぁ?』
場面は引き続きヴィラン組織『デリシャスパイザー』の基地内。
往く先々で待ち構える怪人どもを悉く撃破し続けたユウトは、
女怪人コンビスイーツインズの自室まであと一歩ってトコで、
待ち構えていた幹部格のワイン怪人"ドランクライマー"ジュデッカと対峙していた。
『ふん、好きに解釈すればいいさァ……
然し君には実際驚かされていてねェ~』
赤ワイン瓶と回転式拳銃を組み合わせたミリタリー風味でメカっぽい見た目によらず、
ジュデッカはどうにも湿っぽく粘つくような、やけに不気味な喋りが特徴だった。
『マリーノを圧倒したのはまだわかるけど、
まさかマセドワーヌやパレタ・マカレル夫妻、
ヒートホークロウまで倒しちゃうなんてサ。
地球にそこまで強いヒーローがいるなんて思いもしなかったよねェ~』
ジュデッカが名を挙げたのは、
いずれも『デリシャスパイザー』の武闘派と名高い幹部ども……
ドレス姿の食用花入りサラダ型怪人"プリマガンナー"マセドワーヌ。
両手足四挺のサブマシンガン連射を織り交ぜた体術で舞うように戦う才色兼備の女技師。
猛禽類風香辛料怪人"スコヴィランサー"ヒートホークロウ。
火炎操作能力と力強い槍術で獰猛に戦う、荒っぽくも情に厚い槍使いの偉丈夫。
魔女風生ハム型怪人"テラソーサレス"ミセス・パレタ。
並びに
騎士風青魚型怪人"アクアナイト"ミスター・マカレル。
揃って文武両道の武芸百般を地で行く多芸ぶりを誇り、
敵に回した際の面倒臭さじゃ組織トップクラスの夫婦怪人。
全員、ここに来るまでの道中でユウトが出会い、撃破してきた強敵たちだった。
『別に言うほど強かねえよ。
揃いも揃って戦果はギリギリ、勝てたのは奇跡みてえなもんだ。
……叶うなら今すぐこの場から逃げ出してえ気分さ』
『へェ〜〜〜……意外だねェ〜。
けどそれなら、いっそ逃げ出せばいいんじゃないかなァ〜〜?
よく言うだろう? 「自分に嘘をついちゃいけない」「我慢は身体に毒」ってさぁ~。
……もし君が今降参して大人しく身を引くってんならァ、
僕も深追いするつもりはないしィ、
何ならこのレイブラディアから脱出する手助けだってしてあげるんだけどねェ~~?』
『……ほう、そりゃまたなんとも魅力的な……。
然しどうにも……
質問を質問で返すようで恐縮だがよォ~、本当に見逃してくれんのかい?
本当にこのクソみてえな世界から地球に戻れるよう手助けしてくれるってか?』
『あァ~そうさァ~~。
うちの組織は多次元への安定した渡航手段が豊富だからねェ~。
しっかり面倒を見るさァ、罠なんかじゃなァい……
ねェ~悪い条件じゃないだろゥ~?』
『……』
俄かには信じ難い展開だった。
察するにマリーノ以後戦った主要な幹部格は軒並み殺さなかったんで、
まだ温情に値する相手だと判断されたか。
とは言え実際問題マリーノ以外の幹部は"強すぎて殺せなかった"に過ぎず、
そこに情や敬意なんてもんはなく
――確かに連中がマトモなのはユウトも感じ取ってはいたが――
少なくとも情けをかけられるに値するような真似はしちゃいない。
何より今ここで引き下がるわけにはいかない理由もある。
よって即ち……
『ホホーウ、そりゃ確かに魅力的な話だなあ』
『そぉ~だろぉ~? 我々組織としても、
これ以上無用な争いは避けたくてねェ~。
上からも被害を最低限に抑えるよう厳命されちゃって――
『だぁが、断るっ』
答えなんて、最初から決まっていたんだ。
『……冗談ってワケじゃなさそうだねェ~。
ひょっとして君って、
"自分で自分を強いと思ってる相手に
Noと断るのが好きなタイプ"かい?』
『そう言えたら面白かっただろうが、
生憎とボケてる余裕とかねェんだワ。
てめえン組織のバカが拉致ったウチの先輩を助け出して地球に戻す。
最低限"それ"を成し遂げるまで、俺ぁ退く気はねえよ』
『……こちらとしてはもう戦いたくないんだがねェ~
どうしてもダメかなぁ~~~?』
『ああダメだな。
どうしても俺を帰還らせてえなら、
てめえらが拉致った地球人の身柄ァ渡せ。
そうしたら余計な真似せずすぐ帰ってやるし、
何ならもう来ねえよこんな地獄』
『……できないといったら?』
『ブチ鏖殺してでも奪還い保護る……!』
[極刑確定♥]
[You made 'them' wrath...!]
(和訳:あなたは"彼ら"を憤怒らせた……!)
夜女神倅を構え宣言するユウト。
続いてクラナドライバーとテリテスターターが便乗する。
表情は殆ど変わらなかったが、
それでも気迫はイヤってほど伝わってくるワケで……
最早ジュデッカは腹を括るしかなかった。
『……やれやれ、参ったねえどうも。
「被害を抑える」「上に従う」「不仲な同僚をも守る」……
「全部」やらなくちゃならないってのが「責任ある立場」のツラいところだねェ~……
覚悟はいいね? 僕はもう、できてるよぉ……!』
さあ、いざ決戦の幕開けだ!




