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デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第三章:雷霆勇者叛逆編

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エピソード3:死神異次元大突入

 正気を欠きそうなほど、毒々しい色をした空の中……


「―――どわああああああああ!?」


 虚空を突き破って現れる、黒い人影……

 無機質な防護服に身を包んだその男は、

 自分の置かれている状況を理解した途端、

 喉を潰さんばかりに絶叫する!


 だが、そいつがそうなるのも無理はなかった!

 何せそいつが見舞われたのは~~~~!


「ちきしょおおおおおおおっ!

 いきなり大ピンチじゃねえかあああああ!」


 紛れもない"自由落下"だったからだ!

 余りにも無慈悲な重力の洗礼!

 余りにもわかりやすく死に直結する、

 生命体にとっての根源的恐怖を、全身でもって体感していた!

 そりゃ叫ばずにいられるかって話だろう!


「けぇぇぇ~いっ!

 『プレデターズ』のロイスじゃねえぞコラァ!

 どっちかっつーと俺ァ『アイス・エイジ2』の"白亜紀"だッ、ド畜生めえ!」


 続け様に飛び出す意味不明な比喩!

 ……ともすりゃもうみんなお察しだろう、

 今落っこちてるこの防護服姿の男、

 その正体とは……


「来ぉぉぉぉい! ドライバァァァァ!」

[列席御礼♥]

「リィィィィパァァァァァァ! 転ンンン身ンッ!」

[ヤタガラスモード♥]


 この四行でもう理解しただろう、

 防衛組織『セキガハラ』所属のヒーロー、

 "遺恨リーパームジョウ"こと本作主人公ホンゴウ・ユウトに他ならねえ!


『ッシャアアアアアッ!

 パラシュート開くよりこっちが確実ってモンよ!』


 早速ヤタガラスモードに変身してみせたユウトは、

 背中の翼を畳み猛禽類じみて地上への急降下を試みる!

 目的地へ急行するならいっそ地上になんか降りず、

 持ち前のスピードに任せてそのまま飛んでく方が早い気もするが……

 敢えて地上に降りようとすんのには当然、明確な理由があった!


(データによれば奴らは地上十メートル以下にいる獲物は狙わねえハズ……

 もう一息だ、あと十数メートルでっ……!)

〔〔〔ギュイギュイギュイギュイ!〕〕〕

〔〔〔ギュギェゲゲゲゲゲーッ!〕〕〕

〔〔〔ギャッギャギゲギャゲゲーッ!〕〕〕

『クソッ! 来やがった!

 墜落するリスクを取ってでも加速すべきだったかっ!』


 刹那、急降下するユウトを化け物の群れが襲う!

 耳障りな鳴き声を発しながら飛ぶ喧しいそいつらは、

 ホウボウとブチハイエナとランフォリンクスを混ぜ合わせ、

 ヘビトンボっぽいフォルムにしたような異形っぷりに加え、

 全長・翼開長ともに三メートル以上と図体は規格外!

 そんな奴が何匹も……いや何頭も?

 とにかく群れで襲い掛かって来たとあっちゃ一溜りもねえ!

 これぞユウトが地上を目指していた最大の理由だった!


〔〔〔ギゲゲゲゲゲゲゲ!〕〕〕

『ちいっ! めんどくせえっ!

 こんチキショウめ、感電死してろっ!』

〔〔〔ギョアアアアアアアアアッ!?〕〕〕


 広範囲への電撃でもって化け物の群れを駆除したユウトは、

 そのまま地上を目指す……


(あいつらは低空域なら襲って来ねえが、

 逆に低空域専門の連中が来たら終わりだっ!)


 が、次の瞬間!


(てか地上だって安全圏とは――

〔ヴィルルルラァァァッ!〕

『ぬおっ!?』


 降り立とうとした地面が盛り上がり、

 地表を突き破ってオニイソメともムカデともつかねぇ化け物が顔を出す!

 円筒形の胴体は直径五メートル近く、

 概ね殆どの巨大生物ならひと呑みできそうなほど!

 そいつが貨物列車かってぐれーの勢いで大口を開けて迫りくる!


『抜かったぜっ! 超転身ン!』

[ガルムモード♥]


 そんな化け物を迎え撃つべく、

 ユウトはガルムモードに超転身するが……


〔ヴァボウッ!〕


 迎撃のタイミングが僅かに食い違い、

 化け物に丸呑みにされちまう!


〔ヴォッフ、ヴヴォォゥ……〕


 こうなるとさしものムジョウとてイッカンの終わりか……

 と、思いきや!


[――ネラル――イク♥――]

〔ヴ?〕

『ヅアラアアッ!』

〔 ヴ  ゲエエ  ッ ! ? 〕


 ユウトは体内で必殺技を発動!

 全身を起点に自爆の要領で炎を放ち、

 化け物を内側から木っ端微塵に吹き飛ばしやがったんだ!


『口に入るからって何でも食おうとしてんじゃねェ!』


 そのまま世紀末(ディストピア)じみた荒野に降り立ったユウトは、

 装甲についた肉片や体液さえ発火能力で焼き払う! 


『クソ、現在位置の把握……

 いやそれより移動手段(アシ)の確保だっ!』


 さて、今更ながら説明させて頂こう!

 今ユウトが降り立ってんのは"レイブラディア"!

 人知を逸したバケモンが跳梁跋扈する、

 この世ならざる地獄みてえな異次元空間だ!


『手軽な車の残骸でも落ちてねえかな。

 ラジコン戦車とか重機のミニカーとかでもいいが……』


 辺りを探し回るユウト。

 前々回の内容から察せるかもだが、

 ヤツは異能"霊魂移植(スピリットグラフト)"で移動手段を生み出す気でいた。

 と言ったって"ライドケルベル"や"オーディンズウィングス"じゃ大概役者不足、

 火力はともかく頑丈さが心許ないんで"頑丈な機体"が必要になってくるワケだが……


〔〔〔ジュルリリギリギギギィ!〕〕〕

〔〔〔ジュラララララァ!〕〕〕

〔〔〔ジャガアアアアアアッ!〕〕〕

『ケェーッ! 地上でも安息はねえってか!』


 すかさず化け物の群れが現れる!

 見た目はイノシシとコオロギ、ダチョウ、クモ、ヤシガニのキメラって感じで、

 全体的なフォルムはネコ科肉食獣ともオオトカゲとも言い切れねえ感じ。

 相変わらず図体はデカく、

 姿勢低めなのに体高一.四メートル、

 全長は六メートルにもなりやがる。

 最早群れで行動する意味がわからねえサイズだが、

 レイブラディアではよくあることだ!


『けぇいっ、失せろっ!』

〔〔〔ジャアアアアッ!?〕〕〕

『からの、超転身!』

[ギルタブリルモード♥]


 威嚇する化け物の群れを発火能力で威嚇しつつの超転身!

 変身したのはギルタブリルモード!

 ともすりゃ専用武器"ギルタブリライフル"無しじゃ、

 聊かこの戦力差はキツいんじゃねーかとも思いそうだが……


『ドライバー!』

[葬儀開催♥ 散骨-デストロイプラン♥]


 ユウトはドライバーを操作し、全身の装甲から銃口を展開!


『数で勝てると思うなアッ!』

〔〔〔〔ジュゲエエエアアアア!?〕〕〕〕

〔〔〔〔ジェジェジェエエエエエッ!?〕〕〕〕


 全身からの容赦のない全方位連射

 ――足裏から土を取り込んでるんで実質弾数は無限――

 でもって、容赦なく化け物どもをハチの巣……

 どころか、食肉加工場で廃棄されるような不定形なクズ肉にしちまったんだ!


『こりゃやっぱり"アレ"じゃなきゃダメだな。

 ……おっ、丁度いいのがあるじゃねえか』


 ユウトが"霊魂移植"の素体に選んだのは、

 故障しそのまま放置されたらしい重機の残骸だった。

 強靭な無限軌道クロウラーと二本のアームを備えたそいつは、

 さながら2011年にナベカヰと日立建機が共同開発した、

 震災工作車『双腕作業機アスタコ』シリーズの発展形って感じのビジュアルだった。


『"変成(トランスミュート)"

 "毒から身を護るユーズ・ヴェノム・トゥ為に猛毒を用いよ・プロテクト・フロム・ポイズン"』


 刹那、ユウトの体内に紫色のエネルギーが迸り、

 結晶状のオーラが形成される。

 オーラはやはり腕を通って掌から重機の残骸に流れ込み、

 メタリックパープルの巨大な機体に姿を変える。


構築(コンストラクション)、セルケトクロウラー』


 "セルケト"……

 古代エジプト神話に伝わる女神の名を冠するその機体は、

 同神格がサソリをシンボルとしてる

――概ねサソリそのものか、

  サソリを頭に乗っけた女人の姿で描かれる――からだろう。

 まさにバカでかい重機風メカサソリって感じの姿で、

 前部には両腕(ハサミ)型の大型グラップルに顎型の粉砕機、

 両サイドには八本の節足代わりに強靭な無限軌道(クロウラー)

 後ろには尻尾型の強靭な削岩機付きロボアームがそれぞれ備わり、

 見るからに頑丈な装甲や、

 他の二機をも上回る重厚感溢れる圧倒的巨体も相俟って、

 迫力と威圧感が半端ねえことになってる。

 あるのか知らんが、機械恐怖症とかあったらその患者は気絶か発狂してるだろう。


『さあ、突っ切るぜ……!』


 操縦席に乗り込んだユウトはマシンを起動させ、

 一気にアクセルを踏み込む。


『オッラァァァァァ! 轢き潰されろぉぉぉ!』


〔〔〔ブバアアアアア!?〕〕〕

〔〔〔バギャエエエエ!?〕〕〕

〔〔〔ボッゴオオオッ!?〕〕〕


 見た目通りに高出力のセルケトクロウラー。

 その時速は鈍重そうな外観に反して平均百二十キロにもなり、

 他の追随を許さねえ質量と体積もあって最早災害級。

 化け物どもは為す術なく轢殺され、

 肉片も通り越していっそ荒野のシミになっていく。


『さて、奴らの総本山(ヤサ)は……島ぁ~!?

 しかも距離がっ……直線一万五千キロ~~~!?

 クソッタレ! 地球の直径だって一万二千キロそこそこだぞっ!?

 幾ら地球よりデカいったって限度があるだろうよ!

 てか着地点の座標! ズレるにしても限度があんだろ!

 ったく畜生め、しょうがねえ!

 このまま直線距離で突っ切るかっ!』


 目標が分かってるだけマシだと意気込んだユウトは、

 アクセルをフカし加速する。

 セルケトクロウラーの最高時速は二百八十キロ。

 目的地の島まではかなりの時間がかかるが、

 ともあれ他に策もないならこのまま進む他ねえってワケで。


『……死なんで下さいよ、バンバ先輩っ。

 不出来な後輩めが、今助けに行きますんでねェ~!』


 意味深に決意を固めながら、ユウトは荒野を駆け抜けていく。

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