プロローグ5:覚悟と決着
場面は引き続きオフィス街!
巨大化したテーポリドーンと撃鉄戦隊マズルフラッシャーが激突する!
『ケェェェ~ッ! 何が来ようと同じだッケェ~!
喰らえェッ! 究極最強アトミック――』
『させん!』
『ゲエエエエッ!?』
巨大化に伴って復活した発射筒からミサイルを放とうとするテーポリドーン!
だがヤツの目論見はカイザージュピターの機銃に阻止される!
『悪く思うなよ怪人……
日本国民としてこれ以上核兵器を国内で使わすわけにもいかんのでな……。
行くぞ諸君! バレットアニマル、ファイア!』
『『『『『ファイアッ!』』』』』
威勢のいい号令と共にカイザージュピターの甲板が開き、
中から五機のカラフルな動物メカが飛び出す!
何れも空を飛んでるそいつらの内訳は、
・両肩へ馬鹿でかい自動拳銃が埋め込まれた赤いヒグマ『ブローバックグリズリー』
・二挺のガトリングガンを背負った青いワタリガラス『ラピッドレイヴン』
・口ん中から極太の無反動砲を繰り出せる黄色いニシキヘビ『グレネードパイソン』
・身体のあちこちにショットガンを仕込んだ緑色のピューマ『スラグショットクーガー』
・尻の針が銃剣付きのスナイパーライフルになってるピンクのスズメバチ『ライフルホーネット』
とまあ、正統派に見せかけてクセの強い連中ばかり!
だがとは言えこいつら『バレットアニマル』こそ、
レールガンマイスター以外の各メンバーに割り当てられた巨大戦力に他ならねえ!
で、戦隊と無のつくヒーローチームの巨大戦力と言えば外せねえ話として……
『諸君、あの怪人との長期戦はご法度だ!
大火力を以て可及的速やかに撃滅せねばならん!
弾倉合体でカタをつけるんだ!』
五体で合体してロボになれちまうんだ!
『『『『『弾倉合体!』』』』』
メンバー五人、息の合った合体コール!
各パイロットたちの呼び掛けに合わせて、バレットアニマルたちは素早く変形・合体していく!
そして……
『『『『『完成! バレルエンペラー!』』』』』
合体したその姿は、まさに全身銃器と化した鋼鉄の巨人!
厳つい上半身は主にグリズリーで構成され、
背面に合体したレイヴンのお陰で背中に翼があるから空も飛べる!
左腕にはホーネットが尻を向けた状態で合体してて、
グリズリーにレイヴンのガトリングを加えた右腕と比べても遜色ねぇ威圧感!
下半身は7割程がパイソンで上半身とタメ張れる程の屈強さ!
レイヴンの尾羽根と足が腰防具んなってて西洋鎧ぽさもある!
しかも右膝から下にはクーガーが合体してて、
パイソン共々爪先に来て尚敵を睨み付け威圧するようなデザインときた!
ヒロイックさと獰猛性を兼ね備えた『バレルエンペラー』の全体像は、
使い手次第で正義にも邪悪にもなりうる銃器の二面性を示すが如く!
『ケェェェ〜ッ! いきなり合体とはナメられたもんだッケェ〜!
そーやって俺様を見くびってるとどーなるか、思い知らせてやるッケェ〜!
来い、ビーニック!』
[[[[ヴェノォォラッゲエエエエイ!]]]]
[[[[ブオオッックスカァァァァッ!]]]]
息巻いたテーポリドーンは発射筒から赤い人魂を幾つも射出!
地面に着弾した人魂は爆撃機に手足が生えたような厳ついロボこと巨大戦闘員『ビーニック』に姿を変える!
『なっ!? 巨大戦闘員!?』
『しかもあんな大勢!』
『なんともはや、始末の悪い……』
『てかネーミングといいビジュといい本能的に腹立つんだが!?』
『みんな落ち着きなさいよ。
あんなの所詮虚仮威し……バレルエンペラーの敵じゃないわ』
予想外の展開からパニックに陥りかけたマズルフラッシャー!
だがそこは流石百戦錬磨のヒーロー(?)、
参謀としてチームを纏めるスナイパーピンクこと
本名マツヤマ・アイムの一声で即座に落ち着きを取り戻す!
『……カケル、後は任せるわ』
『おうよ! あんな奴らブッ飛ばしてやらぁ!
みんな、一気に決めるぜ!』
『『『『了解!』』』』
チームリーダーを務めるハンドガンレッドこと本名カイジョウ・カケル。
ヒーローチーム筆頭の手本みてーな彼が音頭を取れば、アイム含めた他四人は快く応答!
五人が操縦席のソケットに変身アイテムのメカ拳銃をはめ込むと、
バレルエンペラーは両腕を突き出し全身のあらゆる武装を展開する!
……そして!
『『『『『エンペラーフォースショット・ファイナルフルバースト!』』』』』
威勢のいい掛け声を合図に、巨大ロボに備わる火砲が一斉に火を噴いた!
両肩の自動拳銃や右腕のガトリングからは光弾が放たれ、
左腕のライフルは光線を撃ち、
左足の無反動砲や右足の散弾銃は実弾を浴びせにかかる!
『うっゲエエエ!? なんたる技だッケェ!?
これは、いかんッケェ~!』
[[[[ヂィィィヴィスッゲエエエエ!?]]]]
[[[[ヴゥゥゥドッヂョオオオオオ!?]]]]
全く容赦のねえド派手な必殺技に、
巨大戦闘員ビーニックどもは次々致命傷を喰らって爆散していく!
ともすりゃ震え上がってたテーポリドーンとてひとたまりもなく即死!
『ケェェェ~ッ!
よくも俺様の手下たちやってくれたッケなぁ~!
オマエら、絶対に許してやらんッケェ~!』
かと思いきや、なんと奴は生きていた!
見れば半透明のエネルギーバリアで身を守ってやがる!
……まあバリアん中に巨体を納めなきゃイカン関係上無理なポーズを取らざるを得ず、
そのせいで動けなくなっちまってるようだが。
こう、狭い車ん中に無理矢理押し込まれて下車ん時悪戦苦闘してる感じ?
『なっっ!? あいつ~!』
『我が身惜しさに部下を見捨てるとはっ!』
『あ~もう! 益々腹立つんだが!?』
『……まさかそうなるとはね。
どうするカケル?
ファイナルフルバースト使っちゃったからもう非常用動力しか残ってないけど……
まさかあんたともあろう男がここで退くなんて言わないでしょう?』
『当たり前だ! ソウキチのオッサンの努力を無碍にするなんてありえねぇぜ!』
カケルの決意はタングステンのように硬かった!
そして彼の意見はロボに乗る全員の総意でもあった!
……が! それでも現実的に逃れられねえ問題は存在する!
『とは言うけどさリーダー、どうすんのアレ!?』
『最高火力のファイナルフルバーストも防ぐバリアなんて、
どうやって破れってんだよ!?』
『……或いは、再度同じ技を撃ち込めば破れるやもしれませぬが……
カイザージュピターからのエネルギー供給には時間がかかる上確実性もなく、
現実的に考えて悪手と言わざるを得ますまい……』
残る三人――ショットガングリーンのアスカ・セナ、
マシンガンブルーのシンメイ・イシロウ、
リコイレスイエローのオオクマ・ダイモン――の指摘は何も間違っちゃいなかった。
んで当然、その現実は参謀のアイムとて声に出さねえだけで理解してたワケだが……
『……大丈夫だ! 問題ない!』
カイジョウ・カケルって男には考えがあった。
トッテオキの"秘策"を実行に移すべく、男はある人物に連絡を入れる!
『マリーさん! あの技を使うぜ! 協力してくれ!』
『……英断だな。
安心しろ。お前さんならそう言うだろうと踏んで、もう準備は済ませてある。
「セキガハラ」本部からの許可も得た。全責任は私が負う……存分にやるぞ!』
カケルとマリーのやり取りに、他の四人は耳を疑い息を飲む!
『ちょっ!? リーダーにキャプテン!? 何言ってんの!?』
『あの技はヤバいですよ! まだ一度だってテスト成功してないってのに!』
『……失礼ながら、気は確かに御座いますか?
もし暴発すれば、あの怪人を野放しにする以上の被害がっ……!』
『……勘弁してよ。
もしミスったら始末書どころじゃないし、
そもそも死体が残るかどうかだって……』
この反応を見りゃ分かるだろうが、
件の"秘策"ってのは、ファイナルフルバーストをも凌ぐ破壊力を誇る反面、
メチャクチャ不安定で使い所を選びまくるトンデモ必殺技だった!
イシロウの指摘通りテスト段階ですら成功してなかったし、
暴発すりゃそれこそダイモンの指摘通りテーポリドーンを放置する以上の被害が出かねねえ!
存在をちらつかせただけでセナが騒ぐのも無理はなく、
アイムの言うように暴発の巻き添えで死ぬリスクだってバカほど高え!
フツーに考えりゃそんな技を使うなんて悪手も悪手、最悪手だろう!
『……ああ、みんなならそう言うと思ったぜ』
だが、その程度で折れるカケルじゃねえ。
何せこの男の決意はタングステン。
地球で最も頑丈な金属ほどにも硬えからだ。
『みんなの言う事は正しい。俺だってできればあの技は使いたくない。
でもあいつを野放しにはできない。ここで始末をつけなきゃダメなんだ……!』
その決意と覚悟が紛れもなく本気だってのを察せねーほど、
マズルフラッシャーの面々はニブくなかった……!
そして……!
『……もしついていけねーってんなら遠慮なく逃げてくれ。
残るのは……犠牲になるのは、俺だけでいい』
カケルの口から飛び出したのは、まさかの一言!
余りに衝撃的過ぎるリーダーの発現に、四人は凍り付くが……
『……バカじゃないの、あんた。
そう言われて逃げるような生半可な覚悟でヒーローやってる私じゃないってのよ』
程なく沈黙を破ったのは、参謀のアイム!
そっから更に、残る三人も便乗していく!
『ねぇリーダー、幾ら年末の大掃除サボりたいからって死ぬのはナシでしょ~』
『てか、自己犠牲とかダサいですって。正直、今時流行らないですよそんなの』
『腰抜けの烙印を押される生き地獄を味わうなど、真っ平御免に御座いますぞ』
とまあ、ここまで言われちまうとカケルも折れるしかなく……
『……しょーがねーな! マリーさん、そういうわけだから頼むぜ!』
『了解した。
……折角だ、私もお前さんらに同伴させて貰おうか。
臆病者扱いされながらダラダラと生き続けるよりは、
戦場で派手に散る方がずっといいだろうからな。
――カイザージュピター、メガ・アンチマテリアルモード!』
マリーの宣言を合図にカイザージュピターの船体は変形、
対物ライフル風の巨大レールガンへ姿を変えた!
そしてバレルエンペラーは銃に変形したカイザージュピターを狙撃銃の如く担ぎ上げ、
その引き金に指をかける!
『『『『『『ボルテック・ハイパーチャージ!』』』』』』
『ゲ!? ゲエエエエッ! なんだッケェ~!?
明らかにヤバイッケェ~!
クソッ、早く、逃げねーとっ――グギイエエエエエエ!?
き、金属疲労がァァァッ!? てか、回路ォォォォッ!?』
間抜けにもバリアん中で身動きが取れなくなってるテーポリドーンを尻目に、
カイザージュピターのエネルギーチャージは瞬時に完了する!
『さあ、準備は整ったぞ諸君!
あとはあの怪人目掛けて一発ド派手にぶちかましてやれ!』
『『『『『了解!』』』』』
『グッ! ケッ! ゲエエエッ!?
バリアが硬すぎて破れねーッケェ~!?』
必死でバリアを破ろうと暴れ回るテーポリドーン。
どうにか逃げ出そうと必死のようだが、
然しヤツの死は目前まで迫っていた!
……そして!
『『『『『マズルフラッシュ・デストロイショット!』』』』』
バレルエンペラーが引き金を引けば、
カイザージュピターに充填されたエネルギーが迸り銃身に集約!
青白い電光を纏った弾丸は暴発もせず鋭く射出され、一直線に標的へ向かう!
『ゲッ!? ゲッ! ゲエエエエエッ!
い、いや待てッ!
このバリアがっ! このバリアがあれ――ブボアアアアアアッ!?』
弾丸は身動きの取れねぇ怪人をバリア諸共貫通!
『ぐ、あが……この、俺様がっっ……
これしきの、豆鉄砲如きにイイイイイイイッ!
ゲエエエエエエエエッ!』
致命傷を負ったテーポリドーンは、
何とも情けなく中身もねえ台詞を残して絶命!
無駄に嵩張りそうな亡骸は、頑強なバリアん中で跡形もなく爆発四散した!
つまり……戦いはバレルエンペラーの圧勝に終わったってェワケだ!