エピソード22:ヒーロー超絶転身-死神見参
場面は引き続き茶利尾半島の海峡兎族専用海岸霊園
『ムーンライトメモリアルパーク茶利尾』跡地……
「フクロムシ―ドよ!
才能を無駄遣いした愚物どもに、我が手足となり働く栄誉を!
ハア~ッ!
リゾォォォセファァァァァランッ・バァァァァナクゥゥゥゥゥル!」
食い逃げ犯の魔術師"究極完全魔法少女フクロムシスター"こと本名カイデン・ヒトトキは、
必殺の屍術"フクロムシ―ド"でもって、
安置(てか放置?)されたまま魔力に守られ無駄に腐らずにいた海峡兎族を支配下に置いた!
『ァァゥゥゥゥ……♥』
『ゥォォォォォ……♥』
『ッハァァァァ……♥』
『ンンンンンン……♥』
それだけでも脅威だったが、尚恐ろしいことに"フクロムシ―ド"は
華奢で女性的な風貌でこそあれ間違いなく"男"だった海峡兎族の奴らを、
事もあろうにグラドル体型の女人ゾンビへと改造しやがったんだ!
『繁殖ゥゥゥ……♥』
『生殖ゥゥゥ……♥』
『交合ォォォ……♥』
『性交ォォォ……♥』
しかも加えてタチが悪かったのは、その女人ゾンビどもの性質だった!
というのも奴らの脳内はどうやら性暴力一色のようで、
例えるなら安っぽい考えのバカが考えたエロ同人に群れで出てきちゃ、
地味で無個性、性欲以外取り柄のねえモブ面の他殺志願弱者男性どもを雑に犯し殺し捨てていく、
量産型の薄気味悪~ィ女人型のバケモンって感じ?
少なくともこんな連中をモンスター娘と呼んじまうのは、
流石に世の真っ当で善良なモンスター娘諸氏に失礼だろう。
『エッチ乳ッチ乳ッ乳チィ……♥』
『ヴァギンニャ娘娘ンコォ萬娘ッ……♥』
『ズリッ白ッ絞ッ白ズリッ白ズリ絞ッ……♥』
『呪ッ腐ゥ呪腐腐ッ呪ッ腐呪腐呪留留呪腐ゥ……♥』
しかもそんな連中が、妙に汚え音立てながら、
裂けたり芽吹いたりひり出されたりで増え続けてるとあっちゃ
いよいよ地獄絵図としか言いようがねえ!
常人なら正気を欠いたとて不思議じゃなく、
百戦錬磨の猛者だろうと相手取るのを躊躇っちまうだろう。
「……行くぜ、転身ッ」
[タナトスモード♥]
[Night Gived Birth Death. He's Nyx son]
(和訳:夜が死を産んだ。彼はニュクスの子)
だがここに、躊躇わず眼前の地獄へ立ち向かう狂人が一人。
その名はホンゴウ・ユウト! またの名を遺恨リーパームジョウ!
カイデン・ヒトトキの人心皆無な所業に怒りを爆発させたこの男は、
"クラナドライバー"に次ぐアイテム"テリテスターター"を手に、
新たなる形態へと劇的な変身を遂げる!
「なんじゃあの形態は……
あれが曲がりなりにもあれがヒーローの変身形態なんか……?
まるで……小型の怪獣ではないかっ……!」
親族ぐるみで"遺恨リーパームジョウ"のコアファンを自負するヤギヌマ……
実際"ムジョウ"に限らずヒーロー全般に詳しく、
東亜でも五指に入るヒーロー通と名高い彼女をも困惑させた形態……
その名も"タナトスモード"。
ギリシャ神話に伝わる"死そのものを神格化した神"の名を冠するその形態は、
ともすりゃオーソドックスな死神を特撮怪人ぽくアレンジしたような、
つまるところ恩師"禍根ハンター"にどことなく似たような感じかと思いきや……
『……久々だな、この形態も』
なんとまあビックリ仰天、
実際出て来たのは禍根ハンターとは似ても似つかねえ
"黒スーツを着た骸骨恐竜"って感じのバケモンだったんだ。
フォルムは幾らかヒト型に近く、さながら獣人の恐竜版ってトコか。
腰にはクラナドライバー、左手首には腕輪モードのテリテスターターが巻いてある以上
如何に異形のバケモンとは言えその正体がホンゴウ・ユウトなのは間違いねえ。
『あの時から数えて、変身はこれで五回目か』
全身の骨そのものは錆びた五円玉みてーなくすんだ真鍮色で、
西洋伝承の骸骨妖怪よろしく両眼窩にゃ眼球代わりに発行体が宿ってる。
一口に恐竜と言っても色々いるが、
具体的な種類としちゃディノニクスとかのドロマエオサウルス科っぽくて、
全体的に比較的細身でスタイリッシュかつ狡猾そうな印象だ。
『果たして何の因果かわからねえが、
ともあれ変身できたんなら幸先がいい』
とは言えヤギヌマが"小型の怪獣"と称した通り図体そのものは中々デカい。
前傾姿勢気味なだけに目線の高さは地上約一.七メートル前後だが、
恐らく背筋や膝を伸ばせば身長は二メートル半に及ぶだろうし、
頭から尾の先までの全長に至っては約数メートル程もあるだろうか。
……この場合の"数"ってのは"五か六"って意味だ。つまり概ね五、六メートルってこと。
『丁度刈り甲斐のある標的もいることだし、
データ取りも兼ねて暴れてやろうじゃねえか』
序でに腕はテリジノサウルスかってぐれー長くて指は細長く爪は申し訳程度、
頭もドロマエオサウルス科にしちゃ聊かゴツめで、
華奢なティラノサウルス科の小型種って感じ。
「……ほ、ホンゴウ……貴殿……」
「そのお姿は、一体何なのでございますかっ……!?」
『驚くのも無理はねえよ。
何せ組織が設計したワケでもなきゃ存在を予測すらできなかった、
全く想定外で謎だらけの形態だからな』
さらっととんでもねーことを吐かしつつ、
ユウトは霊園全域を埋め尽くさんばかりに増殖し続ける女体化ゾンビどもに向き直る。
『……ヤギヌマぁ、オクトメダリオンくんを頼んだぞ』
「うむ、任されよ。……元より貴殿に言われるまでもないがなっ」
『オクトメダリオンくん、無理はするなよ。
もし万一マジで危ねえと思ったら俺見捨ててでも逃げろ』
「そ、そんなっ!?」
『……絶対したくねえと思ったろう?
だがつまり、君にはそんだけの値打ちがあるってこった。
この場に留まるつもりならそこを忘れんじゃねぇぞ』
「はい! 了解畏まりましてでございます!」
ゼータの返答に気を良くしたユウトは、
改まったように拡声器モードのナガシノマグナムを手に取る。
『\「食い逃げ犯カイデン・ヒトトキに告ぐ」/
\「今からでも反省して投降するなら――
「うるさーーーーーーいっ!
ここまでやって引き下がれるワケないでしょーがっ!
そもそもする必要もない反省や投降をなんでしなきゃいけないのよっ!?
反省・投降すべきは私様じゃなくてあんたたちでしょーが!
どうしても私様を止めたいってんなら、
戦って倒してみなさいってのよ!
ま、私様は名実ともにまさしく究極で完全だからぁ~?
あんたたち如きが勝てるわけないでしょーけど、
ンねぶぎばぎゃあああああっ!?」
腹の立つポーズで挑発しようとしたフクロムシスターだったが、
すかさずヤツの顔面目掛けて真っ赤な塗料が炸裂する!
……如何に拡声器モードだろうが結局銃なんだから、
そりゃ弾が出るのだって当たり前なんだよなぁ。
『\「その言葉が聞けて、こちらとしても安心した」/
\「これでお互い心置きなく、命のやり取りができるからなぁ」/』
「んぶ、っぐ……ぁ、が……
ムッ、キィ~~~~ッ!
相変わらずふざけた真似を~っ!
もぉ~許してなんかあげないんだからっ!
行きなさいあんたたち! あのバカどもをコテンパンにやっつけるのよっ!」
『『『『『『『『節ッッ節句ッッ節句子節句子節句子ゥ♪』』』』』』』』
フクロムシスターに命じられるまま女体化ゾンビどもは突撃する!
だが対するムジョウとて怯みもせず、
かえって奴らを迎え撃つ気満々な様子!
『徹頭徹尾下ネタしか話せねえとは……
生来のモンか魔術の影響か知らんが、ともあれ救えねえな。
ウォーミングアップがてら、まずはステゴロで行ってみるかァ』
迫りくる女体化ゾンビを前に、ユウトは力強く踏み込む!
骨恐竜になって増えた関節をフル活用した加速は、
細身ながら戦車や重機の無限軌道みてーな勢いで……
『うらァ!』
『『ジュブウッ!?』』
正拳突き一発で女体化ゾンビ二体を同時に破壊!
『ゼァラアッ!』
『『『ズリボオッ!?』』』
『『ヴァッギャアッ!?』』
『ヴィラバ、ヂッッボ!?』
雑に繰り出された回し蹴りはさながら槍のひと薙ぎ!
元々さほど頑丈でもねぇ女体化ゾンビ数体は、
一気に腰かヘソ辺りで両断され再起不能に陥る!
『『『『『白ッパ――
『シャアッ!』
――アビャッ!?』』
――ブビャアアッ!?』』』
背後から襲い来る連中は、
まさにトゲ付きの鞭と化した尻尾でもって細切れに!
とまあ、こんな具合に武器や能力を使わねえでもユウトの優勢は揺らがなかった!
とは言え難点がないかっつーとそうでもないようで……
『なんだ、思いの外脆弱だな。
木綿豆腐だってもう少し歯ごたえがあるぞ。
……然し腐ってねえとはいえ、この独特な魔力臭さが地味に面倒だな。
装備もスーツ風で布に近い質感だからか、
返り血や飛び散った内臓で汚れてくみてぇでどうも気分が悪い……』
[Mujo, your unarmed combat skills are remarkable,
but if you don't mind, why not try using weapons as well?
Your clothes won't get dirty,
and I believe the readers would appreciate it too]
(和訳:ムジョウ、あなたの徒手格闘での戦いぶりは素晴らしいですが、
折角でしたら武器もお使いになられては如何ですか?
お召し物も汚れませんし、
読者の方々もそれをご希望かと思われますので)
『おっ、そうだな。
ならやってみるか……要請-"番犬の爪牙よ、我が手元に"』
[Weapon Upgrade]
[更新要請受理♥ 供給、オルトロスクロー♥]
タナトスモードの影響だろう、
ユウトの要請を受けたテリテスターターの眼窩は赤く光り、
クラナドライバーの音声も変化する。
続けて真鍮色の両腕に炎が纏わりついたかと思えば、
ヤツの両腕にはメカっぽいイヌの頭を象った赤いガントレットが形成されていた。
『そういえば、武器が変わるんだったな』
両手にぐっ、と力を込めてみれば、
刺突よりは切断に特化した刃がぬっと飛び出す!
タナトスモードが恐竜型形態なのも相俟って、
宛らマトモな化石が出てなかった頃に復元されたテリジノサウルスみてぇなビジュアルだ。
『中々独特な形だが……さて、どうやって扱ったもんかな』
テリテスターターが勧めてくれた以上間違いはないハズ……
そう信じながらユウトは女体化ゾンビの群れに向かっていく。
(この調子だと他の武器も仕様が変わってそうだな……)




