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プロローグ4:予想外の必然

 場面は引き続き、壮絶な戦を終えたオフィス街。


『……』


 打刀についた血糊を払って鞘に収めた禍根ハンターは、

 そのまま変身を解除し人間の姿――戸籍名『タチバナ・ソウキチ』――に戻る。


「……極力被害が出んように努めたが……如何せん出遅れ過ぎたな。

 やはりユウトの言うように何か移動手段を導入すべきか……」


 テーポリドーンに荒らされ散らかしたオフィス街を見て、ソウキチは自嘲気味に呟く。


 正直戦闘の余波で街をぶっ壊しちまうヒーローなんて昔から珍しくもねーし、

 何なら社会全体がその辺前提なとこもあるんだが……

 さりとて元怪人って経歴の持ち主なだけにか、

 市井への被害損害に心を痛めちまうのがこのソウキチってオッサンだった。


「……とりあえず、本部に報告せんといかんな」


 携帯端末を取り出すソウキチ。

 如何にも孤高のフリーランスって雰囲気醸し出してるこのオッサンだが、

 実はこれでもとある防衛組織に所属していた。


 その名も『国立特殊戦力統括機関セキガハラ』

 ……名称から大体察しはつくだろうが、

 かの『撃鉄戦隊マズルフラッシャー』が在籍する組織に他ならねえ。

 ま、元々マズルフラッシャーのレールガンマイスターに誘われた以上必然かもしれねーが……。


「……はい。畏まりました。……いえ、とんでも御座いません。

 ……敵は核ミサイル怪人を自称しておりましたので、はい……

 ええ、宜しくお願い申し上げます」


 そんなわけでソウキチは『セキガハラ』へ報告序でに事後処理を要請。

 あとは組織に任せときゃ三日ほどで大体元通りになる、ハズだったんだが……



『……情けないヤツだのお、テーポリドーン……

 折角キムーチン総書記長様が下さった機会をフイにしてしまうとは……』

(何者っ!?)


 示し合わせたみてーなタイミングで虚空から声が響く。

 ソウキチが慌てて振り向くと、地面にできた灰の山(テーポリドーンの死骸)の傍へ異様な女が立っていた。

 そいつは頭に角を生やして謎の力で空中浮遊する見た目小六ぐれーの小娘で、

 真っ赤なチマチョゴリを頭悪く破廉恥に改造したみてーな装束を身に纏ってた。

 どう考えてもカタギじゃねーし、

 実際そつの正体はカタギどころか人間ですらなかった。


 もう察しはついたろ? この小娘は『デ連』の幹部怪人だったのさ。


『……然し光栄に思うがよい。

 宗書記長様はまだお主を見捨ててはおられぬ。

 ……正真正銘最後の機会をくれてやろうぞ!』

(なにっ、弾丸が効かんっ!?

 さては霊体か立体映像ホログラムかっ!?)


 ヤバいもんを感じ取ったソウキチは幹部怪人を撃ち殺そうとしたが、無駄だった。

 拳銃から放たれた光弾は悉くヤツの身体をすり抜けちまってて、

 しかも当の怪人自身はどうやら攻撃されてる事実にすら気付いちゃいなかったんだ。


 そして抵抗空しく、ソウキチの懸念は最悪の形で現実になっちまう!


『誇り高き労働者、連邦に血を捧げし同志らよ!

 今こそ大義を成すべく団結せよ!

 スラーヴァンダ・デッエンディ・ソユーズァ!

 クォンギョース・トゥーニディーア!』

(しまった! まさかっっ!)


 芝居がかった仕草の小娘怪人が謎のフレーズを唱えたその瞬間、

 虚空から赤い人魂みてーなのが無数に現れちゃ灰の山に流れ込む。


『ケッ! ケエッ! ケエエエェェ~ッ!』


 そっから先は早かった。

 人魂を取り込んだ灰の山は無数の赤い歯車に姿を変え、

 死んだハズのテーポリドーンの身体を再構成……

 ものの三秒足らずで身長50メートル超にまで巨大化しちまったんだ。


『クエッケエエエ~ッ!

 デッドエンド連邦に、栄光あれェ~!』


(やはり巨大化か……大型戦力を持たぬ私ではどうにもできん……)


 ソウキチは頭を抱えた。

 確かに今の時代、ロボを乗り回したり極端に図体をデカくしたりの所謂"巨大戦"は珍しくもねーが、

 さりとてそれには専用の装備や特殊能力こと"大型戦力"が必要不可欠。


 ……一応無くても何とかなりはするが必然勝率はグンと下がっちまうし、

 被害拡大やヒーロー殉職のリスクだってアホほど高え。

 何なら『大型戦力を用いねえ巨大戦』は国際条約で原則禁止されてるほどだ。


(私一人処罰されるだけならまだしも、

 高い確率で『セキガハラ』そのものが巻き添えを喰らってしまう!)


『次こそは敗けぬッケェ~!

 ここで手柄を立てて、汚名挽回だッケェ~!』

(汚名なんぞ挽回してどうする馬鹿もんがっ、せめて返上しろっ!)


 こういう時大型戦力を持たねえヒーローにできるのは、

 精々自衛と要救助者の避難誘導、あとは大型戦力持ちへの救援要請くらい。

 てワケでソウキチは早速救援を要請しようとした……と、その時!


『もう失敗してなるものかッケェ~!

 次は反撃の隙も与えぬほどの猛攻で吹き飛ばしてやるッケェ~!

 吹き飛べェ~! 汚名挽回アトミック――グゲエエエエ!?』


 示し合わせたようなタイミングで、

 調子付くテーポリドーンの顔面にどこからか攻撃が降り注ぐ!

 それは明らかに大型戦力の飛び道具……それも銃砲由来のモンだった。


(来たか……!)


 ソウキチは胸を撫で下ろし、そして思わず歓喜した!

 要請するまでもなく救援が来てくれるのはとにかく有り難かったし、

 何より現場に馳せ参じてくれたのが、

 心から尊敬してやまねえ"先輩たち"だったからだ!



『挽回するのは名誉であり、汚名は返上するものだ!

 よく覚えておくといい!』


 拡声器越しに響く煽りを伴って現れたのは、

 如何にもSFって感じのスタイリッシュなデザインをした銀色の空飛ぶ巨大軍艦!

 その名も『カイザージュピター』!

 撃鉄戦隊マズルフラッシャーの戦士レールガンマイスターが乗り回す専用マシンで、

 同時に『セキガハラ』が保有する大型戦力ん中でも最強と名高いスペックの持ち主だ!


「ボールドウィン先輩! よもや貴女が来て下さろうとは!」

『待たせたなソウキチ! そしてよくやってくれた!

 ヤツの始末は我々マズルフラッシャーが引き受けよう!

 お前さんは先に上がってゆっくり休むといい!』

「お心遣い痛み入ります、ボールドウィン先輩……!」


 カイザージュピターを駆るレールガンマイスターこと

 本名マリー・ボールドウィンに促されるまま撤退するソウキチ。


『さあ怪人、覚悟するがいい!

 我らマズルフラッシャーが来た以上、最早悪さは出来ぬと思え!』

『ケェェエエエエ~ッ! ナメるなッケェ~!

 誰が相手だろーとォ~俺様は敗けないッケェ~!』


 かくしてここに、二回戦が幕を開ける!

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― 新着の感想 ―
 やっぱりあるんだ、巨大化しての復活。  でもこうなると確かに被害が甚大になりますよね。  しかも相手は核兵器の使い手。  どう対処するの?
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