表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第二章:師走英雄白書編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/53

エピソード16:ヒーロー同窓会-盛況

 さて、バンジョウジ邸での忘年会が混沌を極める一方……


「――で、だ!

 そこでバンバ先輩が理路整然と言い放ったのよ!

『いい気になって格好付けているが、

 要するに貴様ら自立できていないだけだろう。

 それは支配ではなく依存というのだ。

 ろくに稼げぬ穀潰し、

 何をも下に見る権利も持たぬ愚物こそ貴様らだ』ってな!」


 場面はとある居酒屋のテーブル席。

 意気揚々と声高に"敬愛する先輩(バンバ・ライホウ)"の武勇伝を語るのは、

 防衛組織セキガハラに籍を置くヒーロー

 "遺恨リーパームジョウ"こと本作主人公ホンゴウ・ユウトに他ならねえ。


「フゥ~! まさにド正論だぜ!」

「流石天下のバンバ・ライホウ!

 年端も行かぬ小娘にも容赦無しか!」

「しかもその相手のアイドル怪人どもって〜、

 確か元々バンバさんのガチ恋勢だってんでしょ〜?」

「あぁ〜それあたしも聞いたわ〜!

 なんかそいつら〜

 部屋の中とか揃いも揃って〜

 レールガンマイスターグッズまみれだったって〜

 ニュースでやってたもん〜!」


 そしてそんなユウトの話を聞き大いに盛り上がってんのは、

 恐らくヤツと同年代と思しき男女十名余り。

 ともすりゃ読者のみんなは概ね察しただろうが、

 こいつらこそユウトの同門生……

 かつてロシアのヴィラン組織『タルタロス王国』が

 手駒とすべく生み出し育てんとした

 怪人部隊『ヘカトンケイレス』の生き残り、

 その一部にあたる連中だった。


「ギャハハハハハ! そりゃ全くお笑いだ!

 女は優れてるだの男を支配すべきだのと吐かしといて、

 徹頭徹尾てめえら自身が男に縋らなきゃ生きられねえとはなぁ!」

「しかも挙句、ガチ恋までしてたご本人に存在全否定されてんでしょ〜?

 ほ〜んと、可笑しくってお腹痛いわぁ〜!」


 元来二親の段階から改造された根っからの怪人だからか、

 はたまた年末特有のテンションが酒でブーストでもされたか、

 "元ヘカトンケイル"どもはどいつもこいつも

 "宴席特有の下劣なノリ"に囚われていた。

 唯一正気を保ってたのはユウトただ一人……

 普段自家用車での移動が多い関係上、

 出先で酒を飲まねえ癖がついてた影響だった。


「よぉホンゴウ! そっからどうなったんでぃ!?

 その貢がせアイドル怪人とやら、

 さぞ滑稽で悲惨な末路を辿ってんだろ~!?」

「おうともよ~!

 そっからはもう見るに堪えねェ有り様でよ。

 メンヘラ拗らせたバカ地雷よろしく、

 自分は悪くねえだ間違ってんのはお前らだ、

 挙句目の前のバンバ先輩を偽物(なりすまし)呼ばわりする始末~」

「け! くだらねぇな!

 ヒーローのパチモンなんぞ、

 最早対策されまくって百何年と過ぎてんだ!

 今更そんなもん現れようがねえつーのよ!」

「全くだよぉ~! 今日日ヒーローの偽物なんて、

 なろうと考えるのが自殺行為!

 そんなの幼稚園や保育園の子だって知ってるじゃないか!」

「ンンン~! つまり要約するならばッ!

 件のアイドル怪人の頭脳は未就学児にも劣るワケですなッ!」

「その通りだギークス!

 ヤツは結局、他人に頼ってばかりの典型的な見掛け倒しよ!

 全く、あんなのでもヴィランを名乗れるとあっちゃ、

 他の連中に思わず同情しちまいそうになるってモンだ!」



 とは言えユウトも正気乍らにノリノリで、

 嘗て同じ釜の飯を食った同門生らと一緒に楽しんでたワケだが……


「さ、て!

 それでまあ、

 そんな頭幼児以下のアイドル怪人が、

 そっからどーなったかっつーとだな――」


「ぐわああああああっ!?

 くっ、食い逃げだァァァーッ!」


 突如店内に響く店員の悲鳴が、場の空気を一変させた!

 ともすりゃ店の面々と親しいユウトらは身を案じずに居られねぇ!

 駆け付けてみるとそこにはなんと、深傷を負った屈強なレジ係の姿が!


「が、ガネっさん!?」

「ガネっさん、オイ大丈夫かっ!?」

「おお、なんたる深傷……!

 されど安心なされよ!

 このベアドレッドが死なせはせぬ!」


 このレジ係"ガネっさん"こと"ハガネ・マンリキ"は、

 嘗て強豪ヒーロー"クラッシュバイス"として名を馳せたサイボーグだ。

 七割が機械化された巨体は現役引退して尚頑強で、

 並みの攻撃じゃ傷もつかねぇハズ……なんだが、

 未だロケット弾も通さねえ分厚い大胸筋は深々と切り裂かれ、

 血液とオイルが混じった液体が漏れ出てやがる。

 常人よりしぶとい傾向にあるサイボーグとは言え、

 こいつは中々の重傷と言えるだろう。


「ま、マンリキぃぃぃぃ~!?

 この野郎てめぇ大丈夫かっ!?

 おいしっかりしろ! 返事ィしろマンリキぃ!」


 騒ぎを聞きつけやってきた居酒屋の店主はひどい慌てようだった。


「チキショウ! チキショォォォォッ!

 食い逃げだけならまだしも、

 よりにもよってウチの部下モン暴行(やり)やがって!

 クソッタレッ、どこのどいつだぁ!?

 許さねえ! 絶対ェ許さねえぞおっ!

 とッ捕まえて切り刻んで、味噌汁の出汁にしてやらぁっ!」


 店主の怒りはそりゃーもう凄まじく、

 今にも出刃包丁片手に飛び出していきそうな勢いだった。

 何せこのジジイは部下を家族みてぇに愛してたからな。

 特にマンリキは店ん中でも古株で苦楽を共にしてきた仲……

 そりゃこれほど怒り狂うのも無理はねぇってもんだ。

 これにはユウトはじめ周囲の誰もが言葉を失うが……


「お、親父ィ……早まっちゃいけねぇぜ……」


 誰より早く店主を止めに入ったのは、

 他ならぬマンリキ自身だった。


「ま、マンリキっ! 喋るんじゃねえ!

 今救急車を呼んでやるからなっ!

 そんでおめえの仇は、このオレがぜってぇ取ってやる!

 だからおめえは安静にしてろっ!」

「親父っ、落ち着けって……俺ぁ大丈夫だ、この傷も見た目ほど深かねえ……

 ベアドレッドくんも手当してくれたしな……」

「そ、そうなのかっ!?

 かたじけねえ、赤毛のあんちゃんっっ!」

「……この場では応急処置が精々に御座います。

 くれぐれも油断なさいませぬよう……」


 マンリキを手当したのは赤毛の白人男ベアドレッド。

 嘗ての名は"ヘカトンケイルG-014"……

 "外科医サージョン"ってコードネームの通り、

 元々『ヘカトンケイレス』の軍医として設計されていて、

 王国壊滅後もその能力を順調に伸ばし続け医師免許を所得。

 今では世界屈指の名医として名を馳せていた。


「それより親父、無理しちゃなんねえっ……七十過ぎのジジイがよお……

 ただでさえあんた、普段から俺らの何乗倍と無茶してんだからっ……!

 それに、このクソ忙しいカキ入れ時に、

 店主が店離れるなんざあっちゃならねえだろうがっ……!」

「……そうですよ親父さん。まずは落ち着きましょう」

「ガネっさんをやったヤツは俺らだって許せませんけど、

 おやっさんが行ったって返り討ちに遭うだけじゃないですかっ」

「親父さんは親父さんにできる仕事をしてください……」

「てか、厨房止まっちゃってお客さん待たせちゃってますよっ……!」

「……お、おめえらっ……! すまねえ……!」


 マンリキら店員たちの説得もあり、

 店主はどうにか落ち着きを取り戻す。

 とは言えそれでも件の食い逃げ犯は生かしちゃおけねぇ。

 となると必然……


「ガネっさん。重傷のとこ無理させてすまねーが、

 その食い逃げ犯ってのはどんなヤツだったんだ?

 あんたをそんな目に遭わせたってんなら、

 少なくとも普通の人間なワケはねぇよな?」


 ユウトら"元ヘカトンケイレス"の出番ってワケだ。


「ああ……"奴ら"は、三人組だっ。

 三人組の、若え女っ……歳の頃は、多分二十歳も行ってねえっ。

 派手なナリしてたなァ……それこそ"コスモセイラーズ"や、

 "キサラギ・ラボ"傘下の女ヒーローみてえな……」

「なるほど、所謂"魔法少女"とか"バトルヒロイン"系の見た目か」

「あのようなコンセプトのコスチュームはヴィラン側での採用率も高いですからなッ。

 ハガネ氏はじめ店の皆様が危険人物と見抜けなかったのも無理からぬことですぞッ」

「……面目ねえや。この業界も長えってのに、

 ヒーローとヴィランの区別もつかねえとは……」

「そう気ィ落とすなやガネっさんっ。

 今の時代フツーに市井で暮らすヴィランも珍しィない。

 何なら裏で悪さしとるヒーローさえ普通におる。

 極論、食い逃げ犯どもがヴィランかどうかも怪しいモンやで」

「然しハガネ殿の鋼鉄ボディをこうも切り裂いた辺り、

 ただの人間ではあるまいな……」

「オウ、そりゃ間違いねえ……

 奴ら、変な杖から光る円盤みてえなのを飛ばして来やがってよ……

 そいつが俺の身体を切り裂いてきたんだ……」

「バトルヒロイン系の見た目で、杖から切断系のエネルギー攻撃……

 十中八九魔術師系だな。ナドリック!」

「ご心配なク! 既に調べはついていますヨ!」


 ユウトが呼び掛けに応えるのは、

 やけに愛嬌のある顔立ちをした肥満体の小男ナドリック。

 その正体はヘカトンケイルC-037ことコードネーム"検出者ディスカヴァー"……

 僅かな手掛かりから標的の正体と居場所を突き止める、現場検証と索敵の達人だ。


「ハガネさんの傷口より漂う魔力を解析し追跡した所、

 それらしき三人組の居場所が分かりましタ!

 北区のスイーツバイキング点『恵Kings(ケイキングス)』ですヨ!」

「食後のデザートってか? ふざけやがって……」

「ゆーてあそこは前払いや。

 食い逃げかますよーな連中やったら

 十中八九門前払いやと思うけど――


 冷静に分析する関西弁の男……

 その台詞を遮るように響く、鈍い爆発音!


「……おい、この音ってまさか……」

「ええ、間違いないわ。恵Kingsの方角よ」

「クソっ! さてはあいつら何かやりやがったな!?

 この時期じゃ警察や消防なんぞ多忙過ぎてアテにできねえ……急ぐぞ!

 ナドリック!

 引き続き奴らの追跡を続けてくれ!」

「畏まりましたヨ!」

「ギークスはナドリックの補助!

 ベアドレッドは救助が来るまでガネっさんの看護を頼む!

 なんかあったら俺に連絡を寄越してくれ! いいな!?」

「お任せ下さいませですぞッ!」

「無論、尽力させて頂く所存に御座います……!」

「残りのみんなは……

 できれば俺について来て欲しいが、

 気が乗らねえなら帰ってくれて構わねえ!

 そこは別に強制するつもりはねぇから好きにしてくれ!」


 ユウトは最悪自分一人で三人の食い逃げ犯を仕留めるつもりでいた。

 自分はヒーローたる以上休日でも悪党をシバくのは半ば当たり前にせよ、

 嘗ての同門生たちの誰もがヒーローになったかっつーとそうでもない。

 なら自分の勝手な都合に必要最低限以上の面々を巻き込むワケには行くめえ、

 ってな具合に考えていたんだが……


「そうか、好きにしろってか」

「ならホンゴウ、あんたに同行させて貰おうじゃないかい」

「食い逃げ犯の成敗、それ即ち珠玉の余興!」

「ここで退いたら元ヘカトンケイレスの名折れですよ~」

「ホンゴウ~! てめえ抜け駆けしようってんじゃねーだろうなぁ~!?」


 とまあ、こんな具合にみんなノリノリで……


「へっ……いいねえ、期待通りの反応だぜ!」


 そんな同門生たちの反応に、

 ユウトも満更でもねえと笑みを浮かべる。

 そして……


「さあ行こうぜ……"正義遂行"の時間だ!」


 会計を済ませたユウト一行は、意気揚々と事件現場へ向かう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 う~ん、食い逃げをやるにしてもこれは滅茶苦茶。まるで時代劇の旗本並み。  なんというか、悪党のする悪事のレベルが筆者のご都合的投げやりさを思わせる低劣さに笑うしかないです。これもある意味ヒーローもの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ