表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第二章:師走英雄白書編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/53

エピソード13:ヒーロー回想録μ/鑑賞会終乃巻-前編

ユライ「――といった具合に、

 "遺恨リーパームジョウ"について皆様と学んできたわけですが……

 如何でしたでしょうか?」


 場面は引き続きバンジョウジ邸。

 『遺恨リーパームジョウについて学ぶ会(仮題)』主催者のユライは、

 "参加者"一同――現"撃鉄戦隊"に籍を置く同僚四人――に語り掛ける。

 さて、気になる"参加者"どもの返答はというと……


タイセイ「いや~、結構面白かったんだぜ。

 よりユウトさんへの理解が深まったし」

ユカ「各形態の戦いぶりも見てて楽しかったですね~。

 ……参考になるかと言われると微妙ですけど」

カイト「まあ、そら参考になるならんっちゅうより、

 学びは間違いなくあったんちゃうか。

 『ホンゴウ・ユウトは敵に回しても怒らせてもアカン』っちゅう学びが」

ユメ「ただアレよね、内容がものすごく濃くて……

 言っちゃアレだけど疲れるっていうか、

 脳が胃もたれみたいな状態になるっていうか……

 相変わらず空撮ドローンのカメラワークが神がかってるのもあって、

 見ごたえは間違いなくあったんだけどね~……」


 ……とりあえず、不評じゃねぇのは確かなようで。


タイセイ「ところでユライさん、一つ質問してもいいんだぜ?」

ユライ「どうしましたかアサガキくん」

タイセイ「戦闘記録を見てて気になったんだけど、

 ムジョウシステムって確か禍根ハンターと似たような

 "魂を奪う"系の能力ってあったじゃん」

ユライ「ええ、持っていますね。

 "魂魄狩り(アニマヴェナトル)"の発展形こと、

 "霊魂刈取スピリットハーベスター"ですが……」

タイセイ「そうそう、そのスピリットハーベスターなんだけど……

 確か生き物以外の魂も奪えるんだろ?

 しかもアニマヴェナトルと違って、

 使う度に命が減ってくわけでもないし……」

カイト「せや。何やったらアレ、

 "収穫するヤツ(ハーベスター)"っちゅうだけに

 奪った魂自分のモンにできんねやろ?」

ユライ「その通りです。

 厳密には対象から抜き取った魂魄を、

 生命エネルギーに変換し吸収しているわけですが……」

ユカ「言っちゃえばゲームで倒した敵が回復アイテム落とすような感じですよね~」

ユメ「どっちかって言うと『敵のHPや残機を吸い取ってる』感じじゃない?

 ……それで、そのスピリットハーベスターがどうかしたの?」

タイセイ「いやぁ、どうかしたっていうか、

 それだけ強い能力を、しかも大した制約もなく使えるんだったら、

 なんで今までの戦いで使わなかったんだろうなぁ、って」


 タイセイの疑問は尤もで、

 事情を知らないユカ、カイト、ユメの三人も

 『そう言えばそうだ』って具合に頭を捻る。


ユカ「そう言われると確かに……なんだろう、

 能力使わずに直接戦った方が運動になるから、とか?」

カイト「んやぁ~、そらちゃうやろ。

 改造型は基本的に筋トレとかせんでも身体ナマらんようなっとるし、

 ホンゴウもこれといって運動好きっちゅうわけでもないやんか。

 どっちかゆーたら、ヴィラン刈り楽しむために縛っとんちゃうか?

 それこそゲーマーもやり込みの一つで

 『決まった技しか使わん』とかなんか色々やるやんか」

ユメ「それは……結構あるかもしれないけど……

 でも大将、それだと皇居襲撃したバカの時とか、

 それこそさっきの雪女龍(カンザキ)とかだとおかしくない?

 皇居襲撃犯相手にしてた時はゲームしたさで帰りたがってたし、

 カンザキなんてそれこそ楽しむ余裕もないくらいの強敵だったし……」

タイセイ「仮にホンゴウさんが

 『彼女はオヤマダの被害者だから殺しちゃいけない』って察してたにせよ、

 氷ブレスの魂を奪って無効化とかフツーにできたハズなんだぜ。

 なあユライさん、

 ユウトさんは何を思ってそんな厳しい縛りを課してたんだ?」

ユライ「よい疑問ですね。結論を申し上げるならば、

 彼が霊魂刈取を乱用しないのは、

 魂魄狩りとは別の"とある欠陥"を抱えているためです」

タイセイ「欠陥?」

ユライ「ええ。簡単に言ってしまうなら、

 "飲み過ぎ食べ過ぎで体調を崩す"ような……

 まあ、百聞は一見に如かずとも言います。

 実際該当する戦闘記録映像を見て頂いた方が早いでしょう」


 言いつつユライが再生して見せたのは……


【――ユウト『ウッラアアアアアア!

       死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねエエエエエッ!

       てめえら全員死に腐れエエエエエ!

       こんなクソ以下のゴミどもが支配するっ、

       クソのような思想・制度が染み付いたっっ、

       そんなクソ溜め億倍汚くした世界などっっっ、

       存在自体からして許されねえだろうがああああっ!』――】


 死ぬほど怒り狂ったムジョウ(ユウト)が霊魂刈取を乱用しちゃ、

 辺り一面何でもかんでも手当たり次第に破壊し(消滅させ)続ける、

 まさに地獄絵図と呼ぶに相応しい映像だった。


ユライ「これはとある異世界で撮影された映像です。

 仔細は省きますがこの異世界は極めて閉鎖的かつ独特な制度が染み付く、

 言わば"因習村"ならぬ"因習世界"とも言うべき様相を呈していました。

 加えてその文明レベルは極めて高く、

 惑星間渡航や次元移動、時間跳躍の領域にも到達……」

カイト「つまりその気になったら他の星や世界の侵略もできんことはないワケやな」

ユライ「はい。如何にもその通りです。

 加えて観測時点で惑星全域が困窮しており崩壊寸前……

 即ち、彼らはいつ異星や異世界への侵略を開始しても不思議ではなかったのです。

 これらの点から当該世界を予てより危険視していたサークルヴァレー多元宇宙連合は、

 当初親善使節団を遣わし連合への加盟と『多元宇宙平和条約』への批准を要求しました」

ユメ「要するに『助けてやるからよそに悪さするなよ』ってコトね?」

ユライ「ええ。要約するならばそうなりますね。

 ……然し件の異世界の指導者らはこれを何故か侮辱と曲解、

 使節団を拷問の末に惨殺し、

 その過程を記録した映像と死体を連合本部へ贈り付け、

 全方位に向け大々的な宣戦布告を行ったのです」

タイセイ「……なんで!?」

ユライ「さて、それは私にはなんとも。

 結果、連合は綿密な議論の末に件の異世界を要"駆除"対象と定め、

 複数のヒーローを現場に派遣する決定を下しました」

ユカ「サークルヴァレー多元宇宙連合が、要駆除対象認定……

 って、相当ヤバくないですか!?

 あれってほぼウイルスとか怪獣とか、

 そういう非知覚種族に適用されるのが前提ですよね!?」

ユライ「件の異世界人はそれだけの真似に及んだのですよ。

 ……異世界に送り込まれたのはホンゴウくんを含む三十人のヒーローたちでした」


 ヒーローらしからぬ汚れ仕事を請け負った三十人のヒーローたちは、

 それぞれの得意分野を存分に活かして異世界人を駆除しまくった。

 ……幾ら有害だからってやり過ぎな気もするが、

 宇宙や次元も容易く飛び越えるぐれー文明の進歩した連中が、

 資源や土地欲しさで捨て身前提のカチコミかけてくるとなったら、

 そりゃ~犠牲になって貰うしかねぇだろ。


ユライ「実質的に異世界そのものを壊滅させるのと同義ですし、

 異世界側の軍事力も困窮している割には強烈そのもの……

 ホンゴウくんも手段を選んでいられなかったのでしょう。

 映像を見て頂ければわかる通り、凄まじい暴れぶりでした」

タイセイ「付け加えるなら多分、

 そいつらが許せなかったのもあると思うんだぜ。

 ホンゴウさんは荒っぽくて性格悪いけど、

 だからって正義感がないわけじゃない……

 寧ろ悪い奴を許さないって想い自体は人一倍だし……」

ユカ「荒っぽくて性格悪いのは認めるんですね」

カイト「まあ事実やから」

ユメ「何なら"荒っぽくて性格悪い"じゃ済まないでしょ……」


【――ユウト『キイイイエッヘエエアッハハハアアアア!

       クタバリャアアガレエエエエエッ!』――】


 ユメの台詞を裏付けるが如く、

 ユウトはひたすら虐殺と破壊を繰り返していた。

 変身形態はガルムモードだったが、

 元々ヒーローっぽくねぇ見た目に加え、

 全身に明らか人畜有害そうな色の炎を纏ってたんで、

 いよいよヴィランにしか見えて来ねえ。


【――ユウト『ヴウウウエエエエアアアア!

       ヴルラア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!』――】


 悲鳴とも咆哮ともつかねぇ奇声を発し暴れ回るユウト。

 その勢いは最早誰にも止められそうもねぇ。

 例えるならケルト神話の英雄クーフーリンが近えだろうか、

 ともすりゃよっぽどの事でもねーと止まりそうにねーんだが……


【――ユウト『――エェェエエエエアアアアッ!

       アァァアアアアアッ! ガ、アアアア……!』――】


タイセイ「なんだっ!? ユウトさんの様子がおかしいんだぜ!?」

ユライ「……あれが"体調不良"ですよ。厳密にはその兆候と呼ぶべきでしょうが」


 実際それは"兆候"だった。

 それこそ食い過ぎて体調崩したが如く歩みを止め、

 うずくまるユウト……


【――ユウト『ウッ、グウンヌウウアアア……

       ウウウアアアア……!』――】


カイト「な、なんやアレっ……!?」


 カイトが驚くのも無理はなかった。

 纏っていた炎はすっかり消え失せ、弱り切った様子のユウト。

 だがその代わりなのか何なのか、

 奴の纏う装甲の隙間からどす黒く粘ついたヘドロかゲルみてーなのが溢れ出す!

 その量は尋常じゃなく、

 加えて変形菌(スライム)みてーに脈打ち動き回ってやがる!


ユカ「お、お腹痛くなって、汗かいてる……?」

ユメ「そんな平和的なもんじゃないでしょ絶対っ」


 どう見たって人畜有害そうにしか見えねえそれは、

 地に伏すユウトの正面に集まって"何かの形"になっていく。


タイセイ「……ヒト?」


 そう、瞬く間に形成されたそれは間違いなく"ヒト"の形をしていた。

 肩幅や腰回りからすると、異様に華奢で病的なまでに細身の女ってトコか。

 ウェーブがかったセミロングヘアに、ピッグテール風味のツーサイドアップ……

 黒いゲルで形成されてちゃいるが、

 そこ踏まえても顔立ちは整っていて愛らしく、紛れもなく美少女の域にある。

 ただ先に述べた通りその体型は異様なまでに華奢……

 健康状態が心配になりそうなほどやせ細っていて……

 配慮せず低俗な言い方すっと"悲しい程に胸が無かった"ワケだ。


 そしてマズルフラッシャーの面々は、

 ゲルで形成された女の顔に見覚えがあった!


タイセイ「あれって、まさか……」

ユカ「そんな、どうしてあの子が……」

カイト「……ゆーたら確かにそんなドライバー音声やったけども」

ユメ「だとしても何てタチの悪い……」


 だがどうにも、ロクな思い出がないらしい。

 つまり必然"何かしらヤバい奴"なのは間違いねえワケだが、

 さてそんな女の正体はっつーと……


タイセイ「なあ、ユライさん。あれってやっぱり……」

ユライ「ええ、お察しの通り、"クロカミ女史"に他なりません。

 勿論、本人ではありませんがね……」

ユメ「そりゃそうでしょうよ。

 あの子は……"メイナ"は、とっくの昔にくたばってんだもの」

カイト「おう、せやせや。

 それも"一度は愛し合うたハズの()()()()()()()()()"んやからなァ」

ユメ「なんだろう、残留思念っていうんですか?

 ()()()()()()()()()、よく彼の前に顔出せますよね~……」


 元セキガハラ技術部研究職員で、

 今は亡きユウトの元恋人こと"クロカミ・メイナ"その人だったんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 呪い⁈  またしても謎が出てきた……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ