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プロローグ3:引導を渡す

 舞台は前回から引き続き荒れ果てたオフィス街!

 ヴィラン組織『デ連』の自称エリート『核ミサイル怪人テーポリドーン』と

 改心と改造を経て正義の道を往く元怪人のヒーロー『禍根ハンター』

 互いに譲れねえもんを抱えた奴らの激闘が、今ここに開幕する!


『ケエエエエエエエッ! 先手必勝だッケェ~!

 食らエェェェ~いっ! アトミックデストロイヤー!』


 開幕早々、テーポリドーンはバカみてぇにミサイルを乱射して来やがった!

 まさにシンプル・イズ・ベスト!

 喰らえば一溜まりもなく木っ端微塵!

 こりゃ流石の禍根ハンターとて焦らずにはいられねぇ!


『……芸がないな』


 ……かと思いきや、なんてこった!

 禍根ハンターは冷静そのものだった!

 さっさと逃げねーとヤベェってのに何だか件のメカ拳銃を弄るばかり!

 その間にもミサイルは迫ってくるが……


『確かここを、この目盛りに合わせて……』

[SNIPE MODE SETUP!!]

『よし、できた』


 何やら調整を終えたらしい禍根ハンターが狙いを定め引き金を引けば、

 トゲっぽい光弾が鋭く飛んでいく!


『ケェ〜ケケケェ〜ッ!

 そんな豆鉄砲如きに俺様のミサイルが止められるわけないッ

 ――――ゲエエエエエエ!?』


 次の瞬間テーポリドーンは目を疑った!

 なんと禍根ハンターの光弾に撃ち抜かれたミサイルが、

 フッ……と跡形もなく消滅しちまったんだ!

 いや、消滅したってよりは超絶ミクロサイズの灰みてーな粉になって崩れ去ったって言うべきか!

 どのみちフツーにゃありえねー出来事なだけに、驚かずにはいられめぇ!


『……と、こんなものか』


 禍根ハンターの射撃はとんでもねー腕前で、

 発射された無数のミサイルをあっと言う間に撃ち抜いて消し去っちまった!

 となりゃもう、テーポリドーンは絶句……次の攻撃に移る気も失せちまう!


『な、あ、ああ……オ、マエっっ……!

 何をした、ッケェ……?』


 辛うじて口を動かし言葉を紡ぐテーポリドーン。

 その疑問はマジでごもっとも!

 正直読者も同じ気持ちだろう!

 だが、対する禍根ハンターの返答はやけに冷ややかで……


『……なんだ、私の姿を見て名前から経歴まで言えたくせに、

 禍根ハンター(わたし)がどんなヒーローをやってるか知らないのか?

 大した"エリート怪人"がいたものだ……』


 実んとこ、さっきの"ミサイル消し"はハイパーデスナイトが禍根ハンターへの改造で獲得した"魂魄狩り(アニマヴェナトル)"って能力によるもんだ。

 簡単に纏めると『ものの魂を狩って対象を消滅させる』つー中々とんでもねー代物で、

 万物が持つ"魂"……つまりは"存在してるって概念"をぶっ壊して

 根本的に存在そのものを全否定して機能不全にしたりこの世から消し去るような能力なんだそうだ。

 まあ要するに、ソシャゲ詐欺でイキる前の型月が考えた『直視の魔眼』っての?

 あれっぽいヤツだと思っときゃいい。

 ま、付き纏うデメリットはあっち以上なんだが……


『ケッ! ケッッ! ケェェェ〜ッ!

 何をゴチャゴチャ吐かしとるっケェ〜!?

 俺様は「デ連」が誇る最強の名門一族に生まれたエリート怪人!

 目の前に立ち塞がった敵は、

 ヒーローでも怪人でもこのスーパーパワーで木端微塵にしてきたッケェ!

 即ち俺様は"何も知らない無能"じゃなく

 "何も知る必要がないほど最強"なんだッケェ!』


 明らかに無理のある言い訳、見苦しい強がりを見せるテーポリドーン。

 とは言えご自慢のミサイルを消し去られたショックは相当なようで、

 両肩の発射筒が微かに震えてる辺り明らかに動揺してやがる。


『……随分な言い様だな。

 なら私が何をしてもお前はそのスーパーパワーとやらで木端微塵にできるわけか』

『そ、その通りッ! その通りだッケェ!

 オマエ如き雑魚など、俺様のミサイルで――

『よくぞ言った』――ゲエッ!?』


 強気に振る舞うテーポリドーン目掛けて、禍根ハンターは素早く引き金を引く!


『……撃った弾頭は拾えんぞ』


 発射された二発の光弾は回避も許さず

 ヤツの両肩にあるミサイル発射筒に命中した!


『しまっっ!?』


 怪人は慌てて両肩を確認する。

 何せミサイル発射筒はヤツにとっちゃ、

 単なるメインウェポンである以上に戦場での生命線でかつ、アイデンティティそのもの!

 もし消し去られたともなりゃ一気に不利になっちまうし、

 何よりメチャクチャカッコ悪いんだから最悪ったらねぇ!

 慌てて両肩に手を伸ばすテーポリドーン!

 ヤツはまさしく最悪の事態をも想定した……が!


『クッッ……フヒヒッ……クッケケケケケケェ~ッ!』


 突如、狂ったように笑い出す怪人!

 だがそれはどうも"気がフレて笑うしかなくなった"ワケじゃねーようで……


『ざぁぁんねんだったッケなァ~禍根ハンタァァァ~!

 オマエ、俺様のこの"アトミック核ミサイルキャノン誘導弾砲"を

 その豆鉄砲で消し去ろうとしたんだろーがっ!

 実際この通り、キズ一つついちゃいねぇッケェ~!』


 そう。なんと件のトゲ光弾、

 確かにテーポリドーンのミサイル発射筒を貫きこそすれ、

 消し去るには至ってなかったんだ。

 これは実際"魂魄狩り"の能力に結構面倒な制約がある所為で、

 ともすりゃさしもの禍根ハンターとて動揺の一つもしてなきゃおかしい……かと思いきや!


『……なるほど、お前は"消えないクチ"か。

 大したものだな。……ただのバカと思わせて、どうして中々骨のあるヤツらしい』


 なんとまあ、実際中年ヒーローは冷静そのもの!

 動揺するどころか逆に怪人を煽りにかかる!


『ッケェェェエエ~ッ! 余裕かましてられんのも今の内だッケェ~!

 次こそ絶対、オマエを吹き飛ばしてやるッケェ~!

 食らエェェェ~いっ! アトミックデストロイヤー・改~~ッッ!』


 となったら当然テーポリドーンもキレずにいられねぇワケで、

 両肩の発射筒からミサイルを発射しようとする!


『……あ?』


 ……が、なんと! ミサイルは発射されず!

 ヤツの必殺技"アトミックデストロイヤー・改"とやらは哀れ不発に終わっちまう!


『ゲェ~ッ!? ど、どーゆーことだッケェ~!?

 なんでっ!? なんで出ないッケェ~!?』

『……』

『こんな、こんな馬鹿げたことがあるわけないッケェ!

 そうだッケェ! これは何かの間違いだッケェ!』


 騒ぎ立てるテーポリドーンだったが……

 "間違ってた"のはヤツ自身の認識だった。

 確かに禍根ハンターの弾丸が発射筒を消し去れなかったのは事実だが、

 それでもその魂自体は狩られてて、両肩の兵器は完全に機能を停止していたんだ。


『ふざけるなッケェ! こんな、こんな……!

 こんな理不尽なことが、あってたまるかッケェ!』

『理解したか? それがつい先程お前に襲われた人々の気持ちだ。

 或いは彼らの痛みや無念に比べればお前の苦しみなど、

 精々「本屋で欲しかった新刊が売り切れていた」程度にも満たんだろうがな……』


 イマイチ伝わり辛え比喩なんぞ口走りながら、

 禍根ハンターはベルトのバックルに手を翳す。

 すると黄金のドクロは両の眼窩を光らせながら口をぐわっと開き、

 変身する時みたく闇色のオーラを吐き出した。

 手元に収束したオーラは細長く収束……一本の打刀うちがたなを形成する。

 色合いは禍根ハンターの装甲と同じ黒と金で、

 ビジュアルは無骨に禍々しく"如何にも"って感じ。


『……さて、無駄に時間をかけ過ぎてしまったが……

 そろそろ終わらせねばならんな……』

『ケェェェ〜ッ! 勝手に勝った気になってんじゃないッケェ〜!

 ミサイルが撃てなくても、俺様は最強のエリート怪人だッケェ〜!』


 ヤケになったテーポリドーンは禍根ハンター目掛けて突進する。

 確かにヤツは重装甲のロボ怪人。

 ミサイル抜きの接近戦もできんことはなく、何ならぶっとい腕で殴られりゃそれなりのヒーローでも骨折は免れねえが……

 結局、こじつけじみた強がりには変わりねえ話で……


『……向かって来るか。好都合だ』


 対する禍根ハンターは好機到来とばかりに構える。

 そして……


『ケェェェエエエエ――


――『ァッ!』


 無駄なく身を躱し、抜刀!


『ゲエッ!?』


 鋭い斬撃……所謂"居合"ってヤツだわな。

 トンボでも目視できなさそうなその一撃は、

 確かに機械仕掛けの巨体を両断……

 証拠と言うべきか、抜き放たれた深紅の刃にゃ機械油とも血液ともつかねえ怪人の体液がこびり付いてやがる。

 そして……


『……ハンター、ドロー……』

『う、ぁが……グギョエえぇッ!?』


 禍根ハンターが技名を口にすると同時、

 キレイに二等分されたテーポリドーンは緑色の炎に包まれながら崩れ落ち、

 死体はそのまま燃え尽きて……


『……精々地獄で待っていろ。

 いずれ私もそこに逝く……』


 つまるところ、ヤツは惨敗。

 オフィス街での激闘は、一先ず禍根ハンターの勝利に終わったんだ。

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― 新着の感想 ―
 これはまたえらく型破りに強い主人公。  こういう不条理な強さに対抗できるのは超不条理なキャラくらいのもの。ラスボスはいったいどんなやつなのだろう……。
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