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デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第二章:師走英雄白書編

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エピソード10:ヒーロー回想録ι/鑑賞会伍乃巻-前編

ユライ「さて、いよいよ鑑賞会も大詰め……

 最後の形態に参りましょう」

カイト「あの緑色した斧振り回すヤツやな」


 さて、そんなこんなでユライは映像を再生する!


【――ユウト「タハラ先輩~もうやめましょうよ~。

       こんなことしたってあなたの支持率は上がりませんって~」――】

【――ヴィラン「じゃかあしゃあゴラァ! 俺はやったるんじゃあ!

        このままじゃとこの街はいけんのじゃあ!

        折角市議会議員にまでなったんじゃあ!

        俺がこの街を、ひいてはこの国を変えたらなあかんのじゃあ~!」――】


 スクリーンに映し出されたのは、

 西日本某所の都市部で勃発した事件の記録映像だった。


タイセイ「あの顔……まさかタハラ!?」

ユカ「タハラって確か……元"迷惑系迷惑な人"の隆磨ヘッズ?」

ユメ「ユカちゃん……気持ちは分かるけど、それを言うなら"迷惑系YouTuber"ね?」

タイセイ「そうだぜユカさん。

 確かに俺もタハラは許せないし、

 あいつをYouTuberなんて呼びたかないけどさっ」

ユメ「いやホント気持ちは分かるんだけどね、

 下手に変な言い回しすると読者さんが混乱しちゃうから」

タイセイ「その台詞がもう読者の皆さんを混乱させてるんだぜ……」

カイト「然しタハラか……そいや近頃エろォ見んなって久しいが、

 よもやヴィランになっとったとはのぉ」


 補足がてら説明させて貰うと、

 記録映像の中でユウトが対面してた男の名はタハラ。

 既に言及があった通りこの映像が記録された当時は

 さる街の市議会議員をやってたんだが、

 元々は自称・YouTuberの"隆磨ヘッズ"として、

 数字欲しさに炎上商法のつもりか勢い任せに方々で犯罪行為(バカ)をやり続け、

 逮捕・起訴され有罪判決まで食らったっつーカスみてぇな経歴の持ち主だ。


 しかもその上執行猶予付きでの判決なのをいいことに、

 何を血迷ったか舌の根も乾かねー内に調子こいて市議会選に出馬、

 挙句どういうわけか当選し市議会議員の地位を手に入れちまってた。

 性格を一言で表すなら"脳筋のチンピラ"って感じか。

 市議会議員になってからもそれは変わらず、

 運動部の所謂"陽キャ"系の学生みてーなノリで突っ走りやがるんで、

 過去の経歴も相俟って基本的に支持率は低いのが現状だった。


ユライ「気付かないのも無理からぬことでしょう。

 何せこの年はここ四半世紀の間でも特に激動の一年でしたからね。

 世界どころか宇宙・次元規模での大騒動が相次ぎ、

 メディアも国内で起こった事件の報道如きに、

 貴重なリソースを割く余裕はありませんでしたから。

 たかが地方都市の市議会議員がヴィラン化した程度、

 報道する価値もないと見做されたとて何らおかしくはありません。

 そもそも彼って"それほど重要でもありません"から……」


 事実、市議会議員タハラは騒動を起こした張本人でこそあれ、

 全体通して見るとそこまで目立つポジションにいるワケでもなかった。

 というのも……


【――ヴィラン「オドレらヒーローなんぞに何ができるぅ!?

        なんもできとらんからこの街もこねんなっとんじゃろーがっ!

        俺が……俺がこの国を変えたるんじゃあ!

        この俺こそがぁ、真のヒーローにっ」――】

【――ユウト「なっっ!?」――】


 刹那、声高に宣うタハラの全身が瞬く間に凍り付く!

 あたかもギャグ漫画じみた衝撃の展開!

 加えて時期は真夏ってんだから、ユウトが面食らったのも無理はねえ!


 しかも衝撃はそれで終わらず……


【――ユウト「オイッ!? どこのどいつだ!?

       緊急時でもねぇのに許可なくヴィランを攻撃すんのは、

       重大な条約違反行為だと、まさか知らねェ奴g」――】

【――『ウウウッラアアアアッ!』――】


 タハラ憎しで先走った"バカなヒーロー"のやらかしを疑ったユウトが叫ぶと同時、

 雄叫びと共に凄まじい質量が飛来!

 いっそ芸術的なほど見事な氷漬けになってたタハラの巨体は、

 哀れ氷諸共木っ端微塵に砕け散る!


【――ユウト「――は?」――】


 氷の破片に交じって飛び散る骨肉片……

 それは要するに"嘗て市議会議員タハラだった何か"に他ならず、

 さしものユウトも気の抜けたような声を上げずに居られねえ。


タイセイ「し、死んだあああああっ!?」

ユカ「あ、呆気なさ過ぎるっ……!」

カイト「不覚にも吹きかけてもうたわ」

ユメ「寧ろ吹いてないの大将? 私ガッツリ吹いたけど」

ユライ「……だから言ったんですよ、それほど重要ではないとね」


 さてともかく、状況は一変した……より悪い方向に!

 単にタハラが事故死したってんなら最悪『まあいいや』の一言で済ませられたろうが、

 奴の死因が他殺ともなるとそうもいかねぇ!


【――『ふん、軽くハタいた程度で粉々ンなりやがって……

    これだから平成世代の若造はいけねェんだ、軟弱ったらねェ。

    基礎がなっちゃいねえぜ、基礎がっっ』――】


 実際程なく、示し合わせたように下手人が現れた!


【――ユウト「おうエテ公、ふざけた真似してくれたじゃねえか。

       他者様ひとさまの仕事邪魔して雑に無駄な殺生すんのが

       昭和世代のやり方かぁ?」――】

【――『なんだぁてめえ、納税者風情の分際がぁ。

    それが高齢者(国の宝)様への口のきき方かあ?』――】


 姿を現したのは、老害ムーブ全開の汚ェ毛むくじゃら……

 つーかまあ、猿だわな。


 所謂"ギガントピテクス"っつーのか、

 身長三メートル弱、推定体重三~四百キロ前後の、

 鉄サビみてぇな色の毛に塗れた汚ぇ猿。

 或いは、栄養失調気味の不細工なオランウータン……の、恐らくは怪人。


【――猿『親の顔が見てみてえぜぇ~、

     どうせそいつらもてめえよろしく、出来の悪ィクズだろうけどなあ!』――】


 黄金にテカるビキニパンツに、下世話な絵柄のアロハシャツ。

 時代錯誤じみて成金趣味全開なクソダサアクセサリーをジャラジャラと身に着けたその姿は、

 さながらバブル期のハワイで妙な草キメながら女を食い散らかしてそうな、

 性病持ちのクソ勘違い成金腐れ外道渡航者ってトコか。


【――ユウト『生憎だが俺に親らしい親はいねェ。

       いやまあ、いねーこともねェが俺は顔も知らねェ。

       ただそれでも断言できるとすりゃ……

       母親に限ってだが、

       てめえのよりゃ幾らかマシってこったなあ』――】

【――猿『 な ん だ と お ? 』――】

【――ユウト「だってそうじゃねえかよ。

       腹ァ痛めて産んだてめえのガキが、

       見るも無残に終わってるゴミクズに成り果ててるなんてよぉ~

       同情してもしきれねーほどに、惨めったらねえぜぇ?」――】


 実に低俗極まりなく、かつくだらねー煽り文句。

 本来なら気に留めるまでもねぇような戯言だが……


【――猿『てめえ、言わせておけばっっ……!』】


 この猿はどうやら、その程度も受け流せねえらしく……


【――猿『高齢者(国の宝)様ァ敬えっ、このクソガキャアアアッ!』――】


 怒りに任せ、手に持ってた大鞭

――なんかの骨を繋げて作ったような見た目で、

  要はついさっき氷漬けのタハラを粉砕したのもコレだった――

 を振り上げ、ユウトを叩き潰そうとするが……


【――ユウト「……この程度が"効いて"ンのか。

       昭和世代てのも存外、大したことねえな?」――】

【――猿『んのッ、若造があ~~~っ!』――】


 フリのデカさ故に余裕で(かわ)されちまう。

 当然怒り狂う猿……ヤツは再び大鞭を振り上げる、かと思いきや!


【――猿『っけェエエ~ッ! めんどくせえっ!

     おいゴラ"でくの坊"! てめーどうにかしろっ!』――】

【――ユウト「なにぃ?」――】


 明らかに他者(誰か)への命令口調……

 つまりこの猿に"協力者がいる"何よりの証拠だった。

 そして……


【――『――仰せのままに。御主人様――』――】

【――ユウト『おっと、やべえっ』――】


 事実、それを裏付けるが如く響く無機質で抑揚のない女の声!

 何かしら"ヤバいもん"を気取(けど)ったユウトは迅速に離脱……

 と同時、それまでユウトの居た場所の気温が急激に下がり、

 火傷しそうなほど熱を帯びてたアスファルトが瞬時に凍り付きアイスバーンまで形成!

 しかもそれで終わらず、氷塊は更に肥大化していく!


【――ユウト「どうなってやがる……!?」――】


 当然困惑するユウト……

 幸いと言うべきか、疑問への答えはすぐ明らかになった。


【――猿『なぁにやってんだっ、でくの坊!

     てめえ、あんな若造一人仕留められねえのかこの役立たずがあ!』――】

【――『申し訳御座いません、御主人様』――】


 響く女の声と共にひび割れ砕け散る巨氷塊……

 その中から姿を現したのは、ユウトは勿論猿よりも大柄な、

 中型肉食恐竜ほどの巨体を誇る、

 冷気を纏った青白い四つ足の龍だったんだ。


【――龍『この役立たず()に、何なりとご命令を』――】


 全身の鱗は青白く、

 体の各所から生える水晶の棘みてぇな背鰭(クレスト)は、

 快晴の空か南海の青色を詰め込んだような鮮やかな青色……

 腰回りからして性別は雌だろうか。

 全体的に細身ながらも筋肉質で、 

 四足動物特有の抜群なプロポーションを誇った。

 無論、顔立ちだって端正そのもの。

 不自然なほど目が死んではいたが、

 そこ込みでも他に類を見ねえ美形なのは間違いなく……


 総じてあの汚ぇ猿如きに付き従ってるのがおかしいレベルの"瑞獣"だったんだ。

 だがユウトは一瞬の内にその真相カラクリを見抜いていた。


【――ユウト「洗脳とは随分ムゴい真似しやがる。

       いぶよへスカッシュの夫婦・カップル系ショート動画ばりに悪趣味じゃねぇか」――】

【――猿『あぁん? 伊豆半島でスカトロアタックの痛風滑空ショ糖童顔だぁ?

     何をわけのわからねぇことを吐かしてやがる。

     全くこれだから平成世代のガキはよぉ〜』――】

【――ユウト「わけのわからねーことを吐かしてんのはてめえだ猿。

       どういう聞き間違いしたらそんな変換になるんだ。

       てめえの頭蓋にはカビた煮豆でも詰まってんのか」――】

【――猿『なんだぁ若造〜!?

     さては成功者の俺様への僻みかコラ!』――】


ユカ「なんだろう、ものすごく話がかみ合ってないような」

ユメ「実際話噛み合ってないでしょ」

カイト「確かにいぶよへのショート動画ァ結構な確率でメッチャ悪趣味やけど、

 それでも洗脳と同列扱いは……まあ洗脳と同列扱いされてもしゃあないか」

タイセイ「え~っと……ユライさん、あの猿怪人は一体何者なんだぜ?」

ユライ「調査で明らかになった情報に拠れば、

 奴の名はオヤマダ・ヒコテル。

 かつて犯罪組織『日本咲き誇り連合』の筆頭を務めていた人物です」


 愚連隊『日本咲き誇り連合』元筆頭オヤマダ・ヒコテル。

 バブル最盛期に荒み爛れた青春を過ごしたこの破落戸は、

 若年期には顔の良さと喋りの上手さでもって女を誑かしては貢がせ、

 バブル崩壊後、歳食ってからは尚給付金や不正受給した生活保護で豪遊し……

 まあ要するに、生来ほぼニートのまま長生きばかりしてきた害悪だわな。


ユライ「就労経験はおろか労働意欲すらなかったオヤマダは当然浪費が祟り零落するも、

 生来持ち合わせていた喋りと世渡りの才を活用し、

 当時幅を利かせていた愚連隊『裸婦列死阿(ラフレシア)』の幹部に就任。

 順当に成り上がり全体を手中に収めて以後組織名を『日本咲き誇り連合』と改め、

 『日本人の性根を鍛え直す』『たるんだ令和を矯正する』と主張しては、

 方々で構成員を扇動し特殊詐欺や窃盗などの犯罪を行わせ、

 その利益を独占し私腹を肥やしつつ組織のカリスマとして君臨していました。

 因みに果たしてその主張内容の意味するところは未だ不明のままです」

ユメ「要するに闇バイトの元締めってヤツ~?」

ユライ「そのようなものでしょうね。

 オヤマダ自身は組織のトップとしてそれほど優れていたわけでもありませんが、

 部下たちが揃いも揃って優秀だったようで……」


 法規の穴を突き警察どころかヒーローさえお手上げの

 文字通り無敵の存在と化してた『日本咲き誇り連合』だったが、

 戦力増強の為に朝鮮系のヴィラン組織『起源』と結託したのを皮切りにボロを出し、

 ヒーローに目を付けられた結果『起源』諸共壊滅しちまう。

 その後命辛々生き延びたオヤマダは、然し部下も財産も何もかも失い、

 残されたのは非力な老体と邪悪な心のみ、だったんだが……


ユライ「何の偶然か、オヤマダの肉体は変異し妖怪化……

 分析によると種族は"狒々"もしくは狒々型の鵺だそうですが……

 ともあれ老体から解放されたばかりか、

 高い身体能力や強大な神通力を獲得した彼は、

 そのまま関西の裏社会を陰から支配する悪党へと成り上がったとされています」


【――猿『けぇ~っ!

     そんなに死にてえってんなら、望み通りぶっ殺してやるぜっ!

     オラ、働け役立たず!』――】

【――龍『仰せの侭に、御主人様』――】

【――ユウト「そうだその意気だ、殺しに来いクソジジイ。

       こっちもてめえを殺しに行くからよぉ~

       来いドライバー!」――】

【――システム音声[列席御礼♥]――】

【――ユウト「リーパー転身ッ!」――】

【――システム音声[フォルネウスモード……♥]――】


ユライ「フォルネウスモード……

 著者不明の魔導書グリモワール

 『ゴエティア』に名を連ねる悪魔フォルネウスに因んで名付けられました」

ユメ「『海の魔物の姿で現れる』って記述から転じてサメの姿で描かれる、

 弁論術や言語学、ネーミングのスペシャリストだっけ?」

カイト「サメかぁ、なるほど……

 確かにホホジロザメは別名『白い死神』やもんなぁ~」

ユカ「その割にあの形態は全身緑色ですけどね~」

タイセイ「そもそも緑色で水中形態って中々珍しいんだぜ」


【――ユウト『要請-"断ち切る刃は海魔の顎が如く"』――】

【――システム音声[要請受理♥ 供給、フォルネウスハルバード♥]――】

【――猿『なぁぁ~めてんじゃねぇぇ~っ!

     そんなもんでっ、この俺様が殺せるかぁ~!』――】



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― 新着の感想 ―
 酷い猿。  なんか最初の議員がまともに思えてきた……。  好いように利用されている龍の女性が気の毒だけど、やっぱりこれもバカはそれだけで罪とか、薄幸なのは生まれる前から背負った罪のせいとかの適当な一…
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