エピソード8:ヒーロー回想録η/鑑賞会肆乃巻-前編
※注意:当該エピソードは長い上に内容が内容なので多分相当退屈です。
ユライ「さて、次は……この辺りですかね」
場面は引き続きバンジョウジ邸。
鑑賞会継続のため、ユライは次の映像資料を再生しにかかるが……
【――ユウト「いいだろう。ならここのルールに則って、
決闘で勝負してやる……」――】
【――ヴィラン「へェ~? いいのぉ~?
あのボウヤがどーなっちゃったのか、
その場でハッキリ見てたのにィ~?」――】
【――少年「あひっ♥ おねーしゃまっ♥ おねーしゃま、しゅきっ♥
ぼくタン、おねーしゃまのわんわんになりゅぅぅ♥」――】
【――ユウト「ああ、構わねえよ。
よく言うだろ? 『蜂食う蜘蛛、蜘蛛蜂に食われり』ってなァ……」――】
【――ヴィラン「……その言葉、知ってるわァ~。
確か『なれど蜘蛛蜂、時に蜘蛛に食われり』って続くやつでしょぉ?」――】
【――ユウト「如何にもその通りだ。
……お前と俺、どっちが蜘蛛でどっちが蜘蛛蜂か、
ここらでイッチョ確かめてみようじゃねえか」――】
再生開始タイミングが大幅にズレていたせいで、
"転身"の"転"って字の一角目すらねーような段階の映像が始まっちまう。
ユライ「おや、失礼しました。
私としたことが再生タイミングを間違えてしまったようで。
ホンゴウくんの変身しての戦闘はまだかなり先ですし、
ここは一旦該当シーンまで映像を飛ばしましょうか」
カイト「や、かまへんで。ミスは誰にでもあるこっちゃ。
折角やからこの戦闘記録、そのまま見ようやないかい。
皆どうや、それでかまへんか?」
タイセイ「ああ、問題ないぜ」
ユメ「寧ろ前後の経緯とか分かった方が頭に入ってきやすいだろうし」
ユカ「箸休めも悪くないですよ~」
ユライ「畏まりました。ではそのまま続けましょうか」
カイト「……然しなんや、どうにもあんま見ぃひん風景やなあ」
ユカ「ホンゴウさん、『ここのルール』とか言ってましたし、
これまさか異星とか異世界での出来事だったりします?」
ユライ「ご名答です、タカオカさん。
こちらの映像は異世界『ギャザレクシア』で撮影されました」
タイセイ「ギャザレクシアっていうと、
確かなんでもカードゲームで決める異世界だっけ?」
ユライ「その通りです。
ギャザレクシアの文明はカードゲームによる試合
"決闘"を中心に形成されており、
この映像が撮影された時期は特にヴィラン組織『渇夢』の影響から、
"決闘"による命の奪い合いや犯罪行為が常習化し問題視されていました」
ギャザレクシア政府は『渇夢』討伐に心血を注ぎ、
政府の命を受けた正義のカードゲーマーたちは勇敢に戦った。
だが『渇夢』の力は凄まじく、
政府は藁にも縋る思いで地球を含む異世界に救援要請を出す。
……ユウトが異世界ギャザレクシアに降り立ったのも、
つまりはそんな感じの経緯があってのことだった。
ユメ「名前だけは聞いた事あるわ。
『渇夢討伐作戦』こと通称『カードゲーム戦争』……
ただ通称の割に、参加した殆どのヒーローはいつも通り戦ってたって聞いたけど……
まさかホンゴウがバカ正直にカードゲームのルール覚えるとはねぇ」
カイト「ホンマやで。概ねルール違反に脊椎が生えたあのホンゴウがようやるわ」
ユカ「ホントですよね~。あの反則行為が服着て歩いてるようなホンゴウさんがね~」
タイセイ「……否定できないんだぜ。
けど確かに驚きだよな~、
所謂"特殊能力でルール押し付けてくる系"のヴィランも
ギャグみたいに力技で何とかしちゃうユウトさんが、
わざわざ異世界でゲームのルールを学ぶなんて」
ユライ「記録によると、現地でお世話になった同業者……
所謂"政府側のカードゲーマー"であるテンビ・カケル様に感化された結果だそうです。
どうやらカードゲーム関連のみならずギャザレクシアでの諸々に関して、
極めて丁寧かつ誠実に面倒を見て下さり、
ホンゴウくん側は疑似的に師と慕うほど敬愛されていたとか」
タイセイ「なるほどな~。
そう考えるとやっぱりあの人もしっかりヒーローなんだなって感じするぜ~。
……ところで、ユライさん。ちょっと質問させて欲しいんだぜ」
ユライ「なんでしょう」
タイセイ「その政府側のカードゲーマーのテンビさんって、もしかして……」
ユライ「ええ、お察しの通りあちらで醜態を曝しておられる哀れな少年ですね。
どうやらあちらの如何にも邪悪そうなご婦人こと、
『渇夢』幹部構成員"ネティロル・フェロモナス"との決闘に敗北し、
色香に魅せられ骨抜きにされ傀儡と化してしまったようでして」
タイセイ「……やっぱりかぁ」
カードゲーム、ひいてはホビーもんのメディアミックス作品じゃ珍しくもねぇ話だが、
ギャザレクシアの"決闘"では使ったカードの内容が実体化し、
時にプレイヤーの心身へもリアルに影響を及ぼす特徴がある。
要するに火炎攻撃のカードを使えばプレイヤーの身体も焼け焦げ、
モンスターに殴られりゃ最悪骨折ぐらいはしちまうのさ。
無論、ダメージ軽減や回復のカードも同じように効果はあるし、
影響の及ぶ及ばねえは機材側の設定次第なトコもあるから常に例外なくってワケでもねえが……
ユライ「『渇夢』幹部"七壊神"はそれぞれ『七つの社会的罪』を象徴し、
決闘の過程で対戦相手の何かしらを"破壊"し、死亡または再起不能に陥れる習性があります」
タイセイ「習性ってそんな、動物じゃないんだから……」
ユライ「『渇夢』の犯行記録を見ればアサガキくんもきっと彼らを人間とは思えなくなりますよ……
……フェロモナスが象徴するのは"良心なき快楽"。
"サキュバス"のカードタイプを持つ女人型モンスターを軸としたデッキを用い、
対戦相手を性的に誘惑・蹂躙しその"尊厳"を破壊する戦法を得意としています」
ユカ「それはまた……なんていうか……」
ユメ「ホンゴウにしてみたらこれ以上ないくらいの地雷だわね……」
カイト「オウオウ、大丈夫なんか? ワシぁ心配なってくるでェ、
そのフェロなんとかっちゅう女幹部の奴が」
タイセイ「大将、そこは普通逆だと思うんだぜ?
そりゃユウトさんがムジョウシステムで戦うならまだしも、
わざわざ異世界でカードゲームのルール覚えてまで不利な状況で戦ってるんだから……」
カイト「アホ言うなィター坊、あのホンゴウがやぞ?
勝算無し、命懸け、圧倒的不利の三拍子揃った勝負へフツーに乗る思てんのか?」
ユカ「ありえないでしょ~。
ほら、キャプテンにも散々『分の悪い賭けはダメ』って言ってたんですし~」
ユメ「そうそう、あのホンゴウよ? どうせ"確実に勝てる"ように下準備してんでしょ。
でなきゃあんな如何にもキナ臭いヤツなんか、顔見た瞬間に撃ち殺してるって」
ユライ「……実際、ホンゴウくんは相当入念な下準備をしていたようでして。
或いは、テンビ様の指導が素晴らしかったのかもしれませんがね」
さ、て!
それじゃ実際"決闘"がどうなったのか見て行こう!
【――ユウト「……レディ・ファーストだ。先攻はくれてやる」――】
【――ヴィラン「あらぁ〜? いいのぉ〜?
……よっぽどこの子が羨ましくなっちゃったみたいね〜?
いいわァ、そーゆーコトならおねーさんが遊んでア・ゲ・ル♥
このアタシこと"七壊神"最強の女……
『男殺しの女王』
『甘美悦楽女帝』こと
"尊厳破壊のネティロル"お姉様プロデュースの極上淫蕩快楽地獄……
とくと味わわってみるといいわぁ~♥」――】
【――少年「んひっ♥ んひっ♥ キミもこっちきなよお♥
きもちいーからさっ♥
いっしょにおねーしゃまとお、しあわせになろ〜♥」――】
【――ユウト「…………」――】
カイト「おーおーおぅ、あのいよいよ女やってもうたなぁ……」
ユカ「あの表情、完全にキレてますね〜」
タイセイ「ユウトさん、キレると謎に怖いからな〜……」
ユメ「な〜んか……怒鳴り声が怖いってのもあるんだけど、
それ以上に遠藤憲一とかマイケル・シャノンみたいな怖さがあるのよね〜。
若しくはガチめに虫の話してる時の香川照之?
勿論顔の構造は結構別物だけど……
睨まれるだけでメンタルの柱がどんどん錆びてボロボロになっていくような……。
基本的にキレてる理由そのものは至極真っ当だからまだいいものの」
ユライ「『何があろうと、誰が相手だろうと、
恐れも怯みもせず信念を貫徹する』
と言えば聞こえはいいのでしょうが……
それこそまさしく映画『氷の処刑人』にて
シャノン氏が演じられた暗殺者リチャード・ククリンスキーか、
さもなくばドラマ版『闇金ウシジマくん』の丑嶋馨社長のようですからね……」
カイト「ま、どの道あの女ァもう無事では済まされへんな……」
ともすりゃ読者のみんなは『そんな言うほどかよ』って思うかも知れねーが……
【――ヴィラン「そ・れ・じゃ・あっ♥
アタシの先攻ね……♥
まずは手札からァ〜エリアスキル《淫魔宮殿 サキュパレス》を発動」――】
【――ユウト「チェーン!
手札から《実験用養殖コバエ》の効果発動オッ!」――】
【――ヴィラン「ひっっ!?
ちょっとぉ〜、いきなり大声出さないでよぉ〜!
ビックリしちゃうじゃな」――】
【――ユウト「自身を墓地に捨て!
このターン相手プレイヤーがユニットの召喚・特殊召喚を行う度!
その数だけ自分はデッキからカードを引くっ!」――】
【――ヴィラン「〜〜〜っっ!?
ちょっとぉ〜! だから大声出さないでって言ってるでしょ〜?
コーフンして待ち切れないのはわかったかr」――】
【――ユウト「オラボサッとすんなアマァ!
さっさとてめえのカード効果処理済ませろッボケェ!
読者待たせんなッブチ殺すぞグルァ!」――】
【――ヴィラン「っっっっ……!
わ、わかったわよっ……!
《サキュパレス》発動時の効果処理として、
デッキから『淫魔』ユニットカードを手札に加え」――】
【――ユウト「チェーン!
手札から《糊舐め雀》の効果発動ッ!
自身を墓地に捨て、直前に発動された
『プレイヤーがデッキのカードに触れる動作を伴う効果』一つを無効化ァ!
よってそのエリアスキルのサーチ効果ァ無効だボケェ!」――】
【――ヴィラン「~~~ううう~っ! せ、折角の初動札がぁ~!
なんで……どうしてこうなるのぉ……?」】
【――ユウト「何チンタラしてやがるアマァ!
とっとと処理続けろゴラァ!」――】
実際カイトの予想を裏付けるように、
当初こそ所謂"男を手玉に取る魔性の女"めいた余裕を見せてたフェロモナスは、
ユウトからの理不尽極まりない暴言にペースを乱されすっかり萎縮しちまっていた。
挙句……
タイセイ「これじゃどっちがヴィランかわかったもんじゃないんだぜ……」
ユライ「……一応申し上げておきますが、
手前側にいるジャージ姿の男性がヒーローですからね?」
ユメ「実質的にはどっちも"悪役"と言って差し支えないけどね~」
同僚たちからもこんな風に言われちまう始末。
カイト「ま、要するにやで?
友達コケにした奴にキレてんねやから、
あれも義憤の内……友情にアツい男っちゅうこっちゃがな」
ユカ「そうですよ~。なんてんでしょーね、
ヤンデレの友情版? みたいなアレですって~」
タイセイ「……病んでる時点で健全じゃない気がするのは俺だけなんだぜ……?」
さて、ともあれそんなこんなでフェロモナスは展開を続けていく。
今更だがこいつらのやってるカードゲームのルールは遊戯王OCGに近く、
先攻第一ターンはバトルを行えねえ。
よって先攻取ったプレイヤーが主にやるのは、
相手の動きを見越して盤面を整え守りを固めたりとかなんだが……
【――ヴィラン「ひっぐ……ば、バックゾーンに、
カードを二枚セット……」――】
【――ユウト「ベソかいてんじゃねえよイイ歳こいた大の女がよお~!
今俺ら何やってんだよ!? 命懸けの殺し合いしてんだろ!
一端の幹部ヴィランがガキみてぇにメソメソすんなボケ!
プロ意識を持てプロ意識を!
てめえが仕掛けて来た勝負だろうが!」――】
【――ヴィラン「は、はひぃぃぃ~……」――】
【――ユウト「返事ァいらねェ!
セットしてそっからどうすんだ!
なんかまだあんのか!
なんもなくてターン終わンのか!
ハッキリ言えコラどうなんだよ!
お前の所為でもう四千字越えてんだぞ!」――】
【――ヴィラン「おっ、おおおお、終わりです終わりです終わりますっ!
ターン終了ですもう何もありません!」】
概ねこんな調子で……
最早クソ以下のゴミクズ上司が哀れな新入りを
指導と称してボコるのと大差ねえ地獄絵図が繰り広げられていた。
……くれぐれも言っておくが"普通にゲームで対戦してる時の"ユウトはこんなんじゃなく、
何なら対戦相手のプレミを寛容にフォローしたり結構紳士的ですらあった。
あくまで世話になった友達を廃人同然にされた件にキレていて、
かつフェロモナスの態度や口のきき方が総じて気に食わねえが故に"こうなってた"だけでな。
【――ユウト「……前座風情が長々とめんどくせぇ。
"巻き"でやるしかなくなっちまったじゃねえか。
俺のターン、ドロー……」――】
後攻プレイヤーの特権としてデッキからカードを引くユウト。
とは言えその手札は既に《実験用養殖コバエ》に代表される手札増強札の効果で潤沢……
勿論それはフェロモナスの盤面が"幾らかは"整ってて、
戦力もまぁ~"それなりに"潤沢なことを意味していた。
具体的に言うとこのカードゲームの各プレイヤーは
それぞれ自分の場に十二枚までカードを置けるんだが、
フェロモナスは実に八枚もカードを置いてたんだ。
しかも中でも四体並ぶメイン戦力の"ユニット"
――遊戯王のモンスターやMtGのクリーチャーに相当する
"戦闘用の手駒"のこと――は、
どれもヤツのデッキで中核を担う"サキュバス"系ばかり。
直接的な戦闘能力こそ低いものの、
こと色仕掛け戦法に関しちゃほぼ最強格の連中だった。
ともすりゃ結構優勢は優勢だったもんで、
フェロモナスは(理不尽に怒鳴られまくった恨みもあり)
自慢のサキュバス軍団でユウトを再起不能にしてやる腹積もりでいた。
実際サキュバス系ユニットの色仕掛け戦法は相手プレイヤーユニット召喚や攻撃、
カード効果発動なんかに反応する受動的な妨害系も多く、
正攻法で対処すんのは正直危ねぇ。
何ならテンビ少年の敗因も
サキュバス系ユニット相手に正攻法で挑んだってトコにあったしな。
【――ユウト「スターティングパート、処理効果無し。
メインパート開始。
お前の場の《爆乳吸精華フェラフレシア》と
《吸引搾精茸イラマタンゴ》をベイトで墓地送りにし、
《裏切り豚武者エモン・ザ・ブリッツ》をお前の場に特殊召喚」――】
【――ヴィラン「なあッッ!? あ、アタシのユニットがっっ……!」――】
【――ユウト「サキュバス系ユニットは戦闘や効果に一定の耐性がある……
加えて相手の動きに反応して発動する面倒な効果も多いが……
墓地で発動する効果を持つヤツはいねえ。
そして《エモン・ザ・ブリッツ》の"相手ユニットをベイトする動作"は、
"特殊召喚のためのコスト支払い"扱いなんであらゆる耐性を無視できる。
特に《フェラフレシア》と《イラマタンゴ》はお前の盤面を支える中枢……
対処に手間がかかる分、場から離しちまえば後は楽ンならァ」――】
【――ヴィラン「だ、だとしてもアタシの場には、まだユニットが二体いるわっ!
《搾精猫娘ボインキティ》と《淫魔王女プリンセサキュバス》がっ!
確かにこの子たちの妨害は《イラマタンゴ》や《フェラフレシア》程じゃないっ!
けどそれでも、正攻法で突破するのは不可能なんだからっ!
それにアンタが出したこの《裏切り豚武者》、
攻撃力も防御力も結構高いじゃな~い!?
なのにアタシの手持ちってことはぁ~!
つまりアタシも絶対不利とは言い切れないわよねぇ~!?
逆にアタシの方が有利まであるくな~い!?」――】
ユウトの容赦ねぇ展開に対し、
さっきまでビビり散らかしてたのがウソみてぇに早口で捲し立てるフェロモナス……
だが実の所、ヤツの心は未だユウトへの恐怖心にガッツリ囚われていた。
自分が展開するにつれ次々増え続ける、相手の手札……
いつ飛んでくるか分からねえ、理不尽かつやたらおっかねえ怒号……
それまで男を惑わし手玉に取るばかりだったフェロモナスにとっちゃ、
今迄に経験したことのねぇ恐怖に他ならねえ。
とは言えだからこそ、そんなモンに負けてなるかと必死に抗っていたんだ。
【――ユウト「お前がそう思うんならそうなんだろうよ、
お前ン中だけに限ってはなァ」――】
【――ヴィラン「ひっ」――】
ま、睨まれただけで怯む辺り無意味だったのは言う迄もねーけどな。
【――ユウト「ともかくこれで展開が進められるが……
スキル発動《乳児ハイハイ大惨劇》ッ。
その第二効果でバックゾーンにあるスキル・ギミックカードを全破壊だ」――】
【――ヴィラン「さ、させないわよっ!
連鎖してセットカード《サキュバスの特権》を発ど」】
【――ユウト「 馬 ア 鹿 め が ァ ッ ! 」――】
【――ヴィラン「ヒイッ!?」――】
【――ユウト「《乳児ハイハイ大惨劇》の発動時!
場に『平原一家』ユニットが居っと、
その発動・効果は無効化されず如何なるカード効果の連鎖発動も封じるッ!
んでてめえの場にはルール上『平原一家』扱いになる《エモン・ザ・ブリッツ》がいる!
よっててめえのセットカードは発動すらできねえ!
カードテキストぐれえしっかり確認しとけッボケがあっ!」――】
【――ヴィラン「~~~~~っっっ!?
しまった~っ! 《サキュバスの特権》と
《誘惑するバリア-テンプテーション・フォース》、
それに《サキュパレス》がっっ!
け、けどそれでもっ!
持続スキル《チャーム・アロマ》は破壊耐性で場に残るわっ!」――】
【――ユウト「凌いだつもりかッ! それでッッ!
俺は手札の《救世紀の狙撃手ヴィーノーダ》の効果発動!
手札から《救世紀の救命婦シェーズカール》を公開し、
自身を自分の場に特殊召喚!
続けて手札の《シェーズカール》の効果発動!!
場に『エモンドラ』ユニットか、
元々の攻撃力か防御力が2500のユニットがいる時、
自身を自分の場に特殊召喚!
更に続けて手札の《救世紀の技巧魔フォーネガルワー》の効果発動!
場に攻撃力か防御力が2500のユニットがいる時、
自身を自分の場に特殊召喚!
更に更に続けて手札の《救世紀の蹂躙獣ゴーダー》の効果も発動!
場に『エモンドラ』ユニットがいる時、自身を自分の場に特殊召喚!」――】
【――ヴィラン「一気に場にユニットが四体も……!
け、けど、それがどうしたっていうの!?
大物ぶって出て来た割には全員攻撃力2500じゃないっ!
《裏切り豚武者》は攻撃力も防御力も4000あるしっ、
《ボインキティ》と《プリンセサキュバス》だって戦闘にはめっぽう強いのよ!
つまりアンタのユニットじゃ、アタシの盤面は崩せな」――】
【――ユウト「《ゴーダー》の効果!
自身をベイトし場のユニット一体を選んで手札に戻す!
俺が選ぶのはてめえの場の《エモン・ザ・ブリッツ》!」――】
【――ヴィラン「いいいい~~~っ!?」】
【――ユウト「んで俺はてめえの場の《ボインキティ》と《プリンセサキュバス》をベイト!
手札に戻った《エモン・ザ・ブリッツ》を再度てめえの場に特殊召喚!」――】
【――ヴィラン「そんなっ!? アタシのサキュバスがっ!?」――】
【――ユウト「続けて《フォーネガルワー》の効果!
自身をベイトしバックゾーンのカード一枚を対象に取りゲームから除外する!
そのスキルカード、破壊耐性はあっても除外には為す術ねえよなあーっ!?」――】
【――ヴィラン「そう来ると思ったわよ!
連鎖して《チャーム・アロマ》の効果を発動!
このカードを場から墓地に送ることで」――】
【――ユウト「その発動に連鎖して《シェーズカール》の効果発動!
自身をベイトし相手のカード発動を無効とする!」――】
【――ヴィラン「あ゛っ!」――】
【――ユウト「更にこの効果に連鎖して《ヴィーノーダ》の効果を発動!
場の自身以外の『エモンドラ』ユニットが効果を発動する時、
その発動コストを手札の『エモンドラ』ユニットカードのベイトで代用できる!
よって俺は手札から二枚目の《ヴィーノーダ》をベイトし、
《シェーズカール》の効果でてめえのスキルカードの発動を無効!
連鎖の逆順処理で《フォーネガルワー》の効果が適用されスキルカード除外!」――】
【――ヴィラン「ちょっと~~!? なんてことしてくれんのよぉ~!?
除外されたら大本命の墓地効果が使えないじゃないっ!」――】
【――ユウト「馬ア鹿がッ! 元よりそれが狙いに決まってんだろ!
だがまだメインパートは終わらねえ!
手札よりエリアスキル《引き出し時空門》と、
持続スキル《夢とロマンのダイナソー・エイジ》を発動!
そして場の《シェーズカール》、
墓地の《フォーネガルワー》、《ゴーダー》、《ヴィーノーダ》を除外!
手札から《救世告げし裁弾神ヴィーノーデウス》を特殊召喚!
《ヴィーノーデウス》は特殊召喚コストとして除外した
『エモンドラ』ユニットカードの属性と同数の『裁弾カウンター』を獲得し、
獲得した『裁弾カウンター』一つにつき自身の攻撃力を500上昇させる!
俺が除外した四体の属性はそれぞれ異なるため『裁弾カウンター』を四つ獲得!
攻撃力は2000上昇し4500!」――】
【――ヴィラン「う、ウソでしょっ!? 《裏切り豚武者》のステータスを上回ったっ!?」――】
【――ユウト「序でに説明しといてやるが《ヴィーノーデウス》には
『裁弾カウンター』を一つ消費して相手のあらゆるカード使用を止められる効果がある!
つまりお前が俺に抵抗しようってんなら最低でも五枚のカードがいる!」――】
【――ヴィラン「ご、五枚っっ!? そんなの、もう為す術無しも同義じゃないっ!」――】
【――ユウト「なら黙って見とけ……!
更に俺は場の《ヴィーノーダ》を除外し
手札から《救世象徴せし次元獣マキナ・エモンドラ》を特殊召喚!
そして今更だがこいつらはレベル10!
よって《引き出し時空門》の効果で相手のあらゆるカードに耐性を持つ!」――】
【――ヴィラン「……わァ……あ……」――】
【――ユウト「"涙は女の武器"ってか? 使うのが数十年遅えよバァ~~カ!
……さてバトルパートに入るが、
ここで《ヴィーノーデウス》の効果発動!
バトルパート中相手の場にいる全ユニットの攻撃力と防御力は、
《ヴィーノーデウス》が持つ『裁弾カウンター』一つにつき1000低下する!」――】
【――ヴィラン「ほげっっ!? 《裏切り豚武者》のステータスが、ゼロにっっ……!?」――】
【――ユウト「更に《マキナ・エモンドラ》の効果!
バトルパート中、自身の攻撃力を2500上昇させる!
これで"まずは"攻撃力5000!」――】
【――ヴィラン「"まずは"!? "まずは"って何!?」――】
【――ユウト「《マキナ・エモンドラ》の更なる効果発動!
バトル中場に《ヴィーノーデウス》が存在し、
またその効果で相手ユニットの攻撃力が低下していた場合、
その数値分自身の攻撃力を上昇させる!
よって《エモン・ザ・ブリッツ》の
低下した攻撃力4000を加算し攻撃力9000!
続けてクイックスキル
《プライムフォース・オーバーリミット》を発動!
自分の場にいる全ての古生物族ユニットの攻撃力は、
発動ターン終了時まで倍になる!」――】
【――ヴィラン「はっ!? ちょっ、待っっ!? 待ちなさいよっっっ!?
《プライムフォース・オーバーリミット》は
古生物族のサポートカードでしょうが!
けどあんたの場にいるその二体はどっちも混沌古霊族!
種族が違うんだからスキルカードの効果は適用されないどころか、
そもそも発動すらできないんじゃ」――】
【――ユウト「 戯 け め が ア ッ ! 」――】
【――ヴィラン「ひいいっ!? な、なによう!?
アタシ別に間違ったことなんて何も」――】
【――ユウト「俺の場ァよく見ろボケナス!
メインパートに《引き出し時空門》に続けて、
《夢とロマンのダイナソー・エイジ》を発動してんだろうがっ!
この持続スキルが適用される限り、
場に存在する全ユニットの種族は全て古生物族になる!
よって俺の場の二体の攻撃力は揃って二倍!
《マキナ・エモンドラ》は攻撃力18000!
《ヴィーノーデウス》は攻撃力9000!
もっと言うとこの《プライムフォース・オーバーリミット》、
一ターンに一度の発動制限がなく連鎖発動で重ねがけできる!
よって手札から更に二枚発動! これで二体の攻撃力は更に倍の倍!
《マキナ・エモンドラ》は攻撃力72000!
《ヴィーノーデウス》は攻撃力36000!
更に連鎖してクイックスキル《栗饅頭》発動!
第二の効果でユニット一体の攻撃力をターン終了時まで2000上昇させる!
これで《ヴィーノーデウス》の攻撃力は38000!」――】
【――ヴィラン「 」――】
フェロモナスは最早絶句するしかなかった。
というのもこのカードゲーム、
プレイヤーが持つライフの初期値は一万ポイントで、
ライフ減少に伴うプレイヤーへのリアルダメージもその数値を基準にしてる。
……って考えるとさ、なんとなく察しはつくと思うんだが……
【――ユウト「さあ、バトルだ!
《ヴィーノーデウス》で《エモン・ザ・ブリッツ》に攻撃!
更に続けて《マキナ・エモンドラ》でてめえに直接攻撃!
一機に喰らっとけ、合計戦闘ダメージ十一万ッ!」――】
【――ヴィラン「おっぎゃあああああああ!?」――】
まあ、再起不能級のダメージが飛ぶワケだ
……幸か不幸かフェロモナスの場合、
安全装置のお陰で死にゃしなかったんだけどな。
タイセイ「…………」
カイト「おう、ター坊よ。これで理解できたんちゃうか?」
タイセイ「……ああ、前言撤回だぜ。
あのヴィラン、ちゃんと生きてるんだぜ……?」
ユライ「生きて裁判に出廷した記録がありますので一応、
死んではおりませんよ」
ユカ「っていうかその、バンジョウジさん?
ホンゴウさん一切ムジョウに変身してないんですけど?」
ユメ「ね~。てっきりあの女幹部がラフプレーしてきて、
それを迎撃する為に紫のヤツで行くかと思ってたんだけど」
ユライ「……ですから申し上げたのですよ、
『ムジョウの戦闘はまだ先だ』と……
といって実際、"決闘"さえ終わってしまえばあとは早いんですがね」
タイセイ「えっ? てことは、他の『渇夢』幹部が襲撃してくるのか?」
ユライ「その点に関しましては……まさに『百聞は一見に如かず』。
実際に記録映像の続きを見て頂くのが早いでしょう」




