表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第二章:師走英雄白書編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/53

エピソード6:ヒーロー回想録ε/鑑賞会弐乃巻

ユライ「さて、ではここから一般的によく知られている、

 "遺恨リーパームジョウ"の基本四形態についておさらいしていきましょう」


【――ヴィラン「ウオオオオアアアアアア!

        平成はあああああっ! 平成は終わらねえええええっ!

        俺がっ! 俺たちがっ! 平成だあああああああ!」――】

【――ユウト「何ボケたことぬかしてんだ。もう改元から結構経っただろ」――】

【――ヴィラン「うるせーっ! 知らねーっ! 平成は終わらねーっ!

        俺が平成なんだっ! 俺こそが平成なんだっ!

        令和なんて俺が認めねーっ!

        うおおおおおお! 変ッッ、身ッッッ!」――】

【――システム音声[ヘッヘヘ☆平成! 平成☆平成☆平成!

          平成! 平成! ヘッヘヘヘッヘヘッセイセセセセイ平成!

          ヘッセセセヘッセヘッセセセセッセイ!

          セセイセイヘイセイヘイセイッ!]――】

【――ユウト「けっ、宮内庁様からの報告通りだ。

       無駄に騒がしいったらねえ、生きた騒音公害だなァ。

       ……すぐに黙らせてやる。転身ッ」――】

【――ヴィラン『ウオオオオオオオ! 平ッ、ぇぇぇぇぇいっ!

        平成皇帝ゴッドヘイセイダー、降臨だぜっ!』――】

【――ユウト『見た目は多少マシだってのに、

       名前と名乗りで台無しにしてくスタイルどうにかしろ』――】


ユライ「さて、今ホンゴウくんが変身した形態こそ"ガルムモード"……

 言わずと知れた現"遺恨リーパームジョウ"の基本形態です。

 形態切替(フォームチェンジ)を多用するヒーローがメインで用いる形態らしく、

 バランスよく汎用性の高いスペックを活かした軽快で鋭い接近戦が持ち味ですね」

タイセイ「加えて熱と炎を操る能力で遠距離にも対応できるんだよな〜」

ユライ「如何にもその通りです。

 ラーヴァモードの不安定さを憂いた技術部により実用化へ至った"四元素形態"が一つ……」

ユメ「なんだっけ、確か元々は

 師匠のタチバナさん向けのになる予定だったとかだっけ?」

ユライ「よくご存知ですね、アイザワさん。

 仰る通りガルムモードを始めとする四元素形態は元来、

 ホンゴウくんの恩師タチバナ・ソウキチ氏こと

 "禍根ハンター"の強化形態として設計されていました。

 然しご存知の通り彼は八年前に殉職……

 結果、開発中の四元素システムは日の目を見ぬまま死蔵されていましたが……」

ユカ「当初のムジョウシステムが想定外に不安定過ぎたから、

 急遽タチバナさん用に作ってた強化システムを、

 後継者のホンゴウさん向けに調整して転用した、と?」

ユライ「ええ。まさに仰る通りです。

 元来遺恨リーパームジョウは禍根ハンターの後継として設計されたヒーロー……

 大まかな根柢の基礎部分はそれなりに似通っていますから、

 強化形態の転用も比較的難しくないのだそうで。

 当時開発に携わった方に曰く

『精々クラナドライバーの改造に少々手古摺った程度で、

 後は案外簡単だった』とのことでした」

カイト「なんや、師弟の絆っちゅうんか?

 そんなようなもんを感じる話やなぁ。

 あのホンゴウらしくもなく……

 っちゅうのも変やが、エエ話やないけ。

 ……ま、当人からしたら複雑なんやろけども」


【――ヴィラン『ウオオオオアアアアアア!』――】

【――システム音声[ヘッセセヘッセッヘイセイヘッセセヘェイ!

          ヘッセセヘッセッヘイセイヘッセセセッセヘヘッセセヘイヘイ!]――】

【――ヴィラン『行くぜっ、平成最強スーパーフルバースt』――】

【――ユウト『アッ!』――】

【――ヴィラン「づわぢゃああっ!?」――】


ユカ「うわあ出た~……やっぱりあの遠隔発火強すぎません……?」

タイセイ「ほんとだぜ。

 YouTubeショートでもしつこいぐらい流れて来るんだぜ……」

ユライ「実際、ただでさえ高い戦闘能力を底上げしていますからね。

 さて、そんなガルムモードを印象付けるアイテムと言えば……」


【――ユウト『番犬の爪牙よ、我が手元に……』――】


タイセイ「"焼却爪甲(しょうきゃくそうこう)ガルムガントレット"……」

ユライ「いかにも。

 かつてはガルムモードでの"何かを握る動作"を経て

 手元の無生物を媒体に形成していましたが、

 クラナドライバーのバージョンアップ以後は媒体なしでの形成が可能になりました」


【――ユウト『張りぼての装甲が砕ける音ォ!』――】

【――ヴィラン『グウワアッ!?』――】


ユカ「あれ? 殴った?」

ユメ「そりゃガントレットなんだから殴るでしょ」

ユカ「いや~、それはそうなんですけど~」

タイセイ「わかるぜユカさん。

 そりゃあの武器って言ったら、爪が三本出てるイメージだもんな~。

 バルログとかウォーズマンみたいな感じでさ~」

カイト「いやたとえ古ぅ~?

 ター坊、お前そこはなんかもっとこう世代的にないんか?

 例えばウルヴァリンとか。

 ヒュー・ジャックマン版は辛うじてそこまで古くもないしやな~」

タイセイ「何言ってんだぜ大将、

 ジェームズのは両手から出せるじゃないか。

 第一あれって厳密には骨だし」

カイト「それはそうやけど~」


【――ユウト『ヴォッレァアアアッ!』】

【――ヴィラン『ぐがはああっ!』――】


ユカ「すごっ!?」

カイト「オウ待てや、ホンゴウどないなっとんねん!?

 拳一つでヴィランを変身解除と気絶に追い込みよったで!?」

ユライ「調べによるとあのヴィラン、

 それほど強くもなかったようですが……それでも驚異的ですね」

ユメ「……然し意図が読めないわね。

 あのホンゴウがそこまで強くもないヴィランで"遊ばない"なんて……」


 ユメの言う通りユウトは"戦闘(業務)を楽しむ"って名目で、

 交戦相手のヴィランを罠に嵌めたり必要以上に痛め付けたりして"遊ぶ"のが常だった。


タイセイ「……オレにはユウトさんの気持ち、わかるんだぜ。

 きっとユウトさんは、あのヴィランが本当に心から許せないんだぜ……。

 それこそ"遊ぶ気も失せる"くらいに……」

ユメ「そんなことってある~?」

ユカ「寧ろキレたならもっと"遊ぶ"と思いますけど~」

カイト「せやせや。あいつァとにかくどない状況も楽しもうとするやんか」

タイセイ「……どうかな。本当に怒り狂ってたら、

 さしものユウトさんも"敵で遊ぼう"なんてきっと考えないんだぜ。

 だってそうだろ、あのヴィランは"それだけのこと"をやったんだから……」

ユライ(果たしてどうでしょうね……)


 意味深な台詞とともに画面を睨むタイセイ。

 確かにヤツの言う通り、

 件のヴィランはとんでもねー悪事に手を染めてやがった。

 並みのヒーローは元より、

 ユウトとて我を忘れるほど怒り狂うのも無理はねえほどの悪事だ。


【――ユウト『……』――】


 だが……


【――ユウト『……いけね。ァ出すの忘れてた。

       ま、いっか。

       変身解除級のダメージは与えられたワケだし、

       こんな奴にわざわざ時間割くのも勿体ねえ』――】


ユライ(……やはりですか)

四人「「「「」」」」


 刹那、

 ユライを除くマズルフラッシャーの面々はギャグ漫画みてーに"ずっこけ"た。


タイセイ「……」

カイト「おう、ター坊。ワレさっき何ちゅうたかいのぉ?」

ユカ「『本当に怒り狂ってたら』~~、なんですっけ?」

タイセイ「いや、でもほら、

『こんな奴に時間割くのも勿体ない』って言ってたし、

 あいつのやったことを思えば――」


【――ユウト『それよりゼンゼロだ。

       とっとと帰ってゼンゼロ起動しねぇと。

       ヒューゴの復刻がよ〜やっと来たからな〜。

       ったく、イマイチ動きが読めねぇんだよなァ近頃のホヨバさんはよ〜。

       つか男は金にならねぇって公式に思わせてる

       ミサンドリーのクズどもが邪魔なんだよな〜』】


ユメ「……『あいつのやったことを思えば』、なに?

 どう見てもただゲームしたいだけにしか見えないんだけど?」

タイセイ「」


【――ヴィラン「――っっ! ひっ! ああっ!?

        なんで、こんなっ……!

        あのヒーローの必殺技にも耐えたのに、

        こんな奴に殴られたくらいでっっ……!」――】

【――ユウト『……起きたか。なら丁度いい。

       オウ害悪、選ばせてやらァ。

       どうするよ?

       足洗って令和を生きるか、この場で俺に殺されるか……』――】

【――ヴィラン「ひっっ!? あっ! あああっ!

        わ、わかった! わかったっっ!

        足を洗うっ! 足を洗うようっっ!

       『平成は終わらない』なんてもう言わないっ!

        これからは大人しく"令和"を生きるっ!

        だから、だから許してくれぇぇっ!」――】


 開戦前までの強気な態度は何処へやら、

 変身を解除させられた途端"ゴッドヘイセイダー"は震えながら命乞いを始める。

 その有り様は吹けば飛ぶような小市民のそれだったが、それもそのハズ……

 元々こいつはまさに"吹けば飛ぶような小市民"そのものだったんだ。


【――ヴィラン「悪かった! 悪かったっっ!

        でも聞いてくれっ! 俺もあいつらに騙されてたんだ!

        あいつらが俺に言って来たんだよう!

       『全部令和って時代が悪いんだ』って!

       『平成が終わらなきゃこうはならなかった』って!

       『天皇が生前退位したのは身体が弱ったからで、

        つまり天皇を延命させればまた平成が始まる』って!

        なあ頼むよっ、何されたっていい! 知ってることは全部話す!

        だからっ! だか、ら゛あ゛っ!? ぐ、げええっ!?」――】


 刹那、ゴッドヘイセイダーの口から血反吐が噴き出す。


【――ユウト『……』――】


 その理由は単純明快……

 ユウトがガルムガントレットの刃、

 三本ある内の一本でゴッドヘイセイダーを刺し貫いたからだ。


【――ヴィラン「あ゛……? があ゛……!

        ぁ゛、な゛ん゛、で゛え゛……?」――】


 突然の急展開に、ゴッドヘイセイダーは理解が追い付かない。

 "自分は罪を認め足を洗うと宣言したのに、なぜこうなる?"

 ……ヤツの心情を文字に起こすなら、こんな所だろう。


【――ユウト『……なんで、だあ? そりゃお前……

       決めてたからだよ、最初っから。


       " 絶 対 ェ 殺 す " ってなあ』――】


【――ヴィラン「え゛……え゛……?」――】

【――ユウト『何も不思議なこたァねーだろ。

       脅迫、殺人未遂、不法侵入……

       加えて数々の破壊行為……

       最早お前は日本って国そのものの敵ンなってんだワ』――】

【――ヴィラン「ぅ゛……あ゛……?」――】

【――ユウト『政府も既に国際指名手配済みでな、

      「誰でもいいから見つけ次第すぐに殺せ」っつってきたよ。

       まるでもう人間とも思っちゃいねえかのような口ぶりさ』――】

【――ヴィラン「……ぁ゛……ま、って……

        しって、ること……全ぶっ、ぐぶあっっ!?」――】

【――ユウト『司法取引のつもりなら諦めろ。

       言ったろ、政府はもうお前を人間扱いしてねぇんだって。

       司法取引は原則人権のある知性体(人間)の為にあるもんだ。

       ……つーかそもそも、てめえの握ってる情報ごときで、

       今更司法取引が成り立つと思ってんのか?

       お前が絹張尊キヌバリノミコト閣下にボコられたあの日にはもう、

       お前の本名から出身から何から何まで全部調べ尽くされてたのに?

       バックについてるゴミどもの情報も、

       諸方が粗方調べ尽くして世間に公表されてるのに?

       そんな状況でよぉ、

       今更お前に値打ちなんてあると思ってんのか?ええ?』――】

【――ヴィラン「う゛、あ゛あ゛……け、ど……俺っ、がああああっ!?」――】

【――ユウト『けどもなにもねえだろ。

       焼却処分だ、このまま燃えとけ……』】

【――ヴィラン「あ゛、や゛、や゛め゛っ! でっっ!

        ぐ! うぐあ! あああっが!


        っ げ え え あ あ あ ああ あ あああ あ ! ? 」――】


 トドメとばかりに刃から流れ込む熱エネルギーは、

 かつてゴッドヘイセイダーを名乗った哀れな男の身体を、

 内側から跡形もなく、悉く焼き尽くし灰にした。



ユライ「因みにガルムモードのガルムとは、

 北欧神話に登場する魔犬ガルムに因むそうです」

ユメ「確か死後世界ヘルヘイムを統治する女神ヘルの住居

 エーリューズニルの番犬とかやってて、

 ヘルヘイムへの不法侵入とヘルヘイムからの脱走の両方を見張ってるとかだっけ?」

ユカ「いやユメさんなんでそんなに詳しいんですか……」

カイト「えっ、そうなん?

 ワシぁてっきり古代ローマの魚醤ガルムか思うとったが……

 そうか神話の犬のバケモンか……

 どうりで犬っぽい見た目なワケやで」

タイセイ「……俺もひとのこと言えないけど、

 多分その勘違いしてたのはセキガハラでも大将だけだと思うんだぜ……」


 さて、そんなこんなでお次の形態は……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ひ、酷い。「選ばせてやらァ」とか言っておきながら「決めてたからだよ、最初っから」って……。  しかもその返しが「司法取引は原則人権のある知性体(人間)の為にあるもんだ」って、人でなしは文字通り人でな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ