破:ヒーロー大暴露
場面は防衛組織『セキガハラ』のオフィス!
「僕が彼女らの改心と更生を信じる根拠はなっ、ユウト!
偉大なる"禍根ハンター"こと君の亡き恩師タチバナ・ソウキチ氏と、
他ならぬ君自身っ……!」
ヒーローチーム『撃鉄戦隊マズルフラッシャー』総指揮
"2代目レールガンマイスター"の変身者バンバ・ライホウと、
その同僚に当たるヒーロー"遺恨リーパームジョウ"の変身者ホンゴウ・ユウト。
ヴィランの扱いを巡って巻き起こった口論は、
両者互いに一歩も退かず拗れに拗れ……
「そう、様々な意味でソウキチ氏の同類たる君自身こそ、
何よりの根拠に他ならないんだっ!」
「「「「「あっ……!」」」」」
「……ホホーゥ?」
ヴィランの善性を信じるライホウの投下した"爆弾"でもって
新たな局面を迎えつつあった!
「なあ、そうだろう?
ホンゴウ・ユウトこと"遺恨リーパームジョウ"……
否、この場合はこう呼ぶべきかな?
"ヘカトンケイルG-044"こと
コードネーム"埋葬者"」
「……」
ダメ押しとばかりにブチ込まれた追撃に、
ユウトは思わず押し黙る……
「こりゃまた、随分懐かしい名前が出て来たモンですなァ。
よもやバンバ先輩ほどの方に覚えて頂けていようとは、
あそこの連中も地獄の底で涙を流して喜んどりましょうて」
……かと思いきや、あっさり受け流して見せた。
予想外の反応に、ヒーローたちは安堵しつつも困惑を隠せない。
「……気にしてないのか?
正直、感情的になる余り言い過ぎたかもしれんと思っていたんだが……」
「何を気にしろってんです。
そりゃテレビカメラやらの前ってんなら蹴りの一つでも入れてましたが、
ここはセキガハラの基地ん中……
たとえ"バレた"とてそう困りゃしねェでしょう。
仰る通り俺が"ヘカトンケイル計画"の生き残り……
つまりは元々"ヴィラン組織生まれの怪人"で、
要するに実質おやっさんの同類だったなんてのはねェ。
どう足掻いたとてただの事実でしかねェんですから」
そう。ライホウの投じた"爆弾"ってのは要するに、
ユウトの正体が"ヴィラン組織産の怪人だ"っつー、
地味に衝撃的な(?)真実だったんだ。
……といってまあ、読者のみんなは
『どうせこの作者のことだし予想はついてた』とか言いそうだが……
ともあれ説明せにゃなるめえ。
あれは十八年前……
タチバナ・ソウキチが禍根ハンターとしてイイ感じに活躍し、
先輩格の初代マズルフラッシャーに次ぐセキガハラの花形ヒーローとして名を馳せつつあった頃のこと!
当時、ロシア連邦の港湾都市サンクト・ペテルブルクを拠点に暗躍するヴィラン組織があった!
その名も『タルタロス王国』!
女王テルースと王配カイルスの夫妻が創立した古株の組織で、
ド派手でスケールのでかい悪事を一定周期で繰り返す特徴があった!
奴らの悪事は数多あるが、
特に有名なのは『ヘカトンケイル計画』だろう!
これは各地から攫った男女三千人に産ませた無数の赤ん坊から百五十人を厳選!
キッチリ五十人ずつ『打突者』『頑強者』『多肢者』の三チームに分け、
一人一人に異なる改造を施し怪人『ヘカトンケイル』に育て上げ、
最強の怪人部隊『ヘカトンケイレス』を作り上げようって馬鹿げた計画だ!
そしてその"ヘカトンケイル計画"により"多肢者チームの四十四号"として生み出された一人こそ、
後にホンゴウ・ユウトと名付けられる幼き怪人候補生『ヘカトンケイルG-044』だったワケだ。
でまあ、G-044は他の百四十九人の同胞ら共々タルタロス王国の施設内で育てられた。
二親の段階から改造を施された幼児百五十人は異常なまでにハイスペで、
発育速度こそ常人と大差ないものの生後一ヶ月でつかまり立ちに至り、
二ヶ月半から三ヶ月もすると走り回るようになり、
どんなに遅くとも半年で言葉を話し、
一年もすると未就学児レベルの読み書きができるまでになっていた。
そんなハイスペぶりなもんだから、
一歳半を過ぎた頃からは教育を受けながら怪人になる為の訓練を積み、
概ね四歳か五歳の頃には、将来発現に至る能力に因むコードネームを授かる決まりになっていた。
G-044が『埋葬者』って名付けられたのは、
死体処理やゲリラ戦向きの怪人になるよう設計されていたからだ。
とまあ、
恐らくこのまま順調に行けば百五十人の『ヘカトンケイル』は、
如何なるヒーローやヴィランも手を焼く最強の怪人へ成長していただろう。
だが、そうは問屋が卸すワケもなく……
タルタロス王国の存在を危険視した連邦政府は、
東亜・欧州を中心とした十ヶ国と連携。
精鋭揃いの多国籍ヒーローチームを結成し、
タルタロス王国を壊滅させるべく動き出したんだ。
「……でまあ、結局王国は呆気なく壊滅……
女王や王配を始めとする主要構成員は軒並み戦死、
運良く死なずに済んだ構成員も逮捕され、
どうにか生き残った『ヘカトンケイレス』の候補生は
年齢と経歴考慮して保護が決定、と……」
「そうだ。
そして生存し保護されたうちの一人……
生前のソウキチ氏に引き取られた日羅混血の少年こそがユウト、
まさに他ならぬ君だったというわけだ」
……読者のみんな、ついて来れてるかな?
まあイマイチ頭が追いつかねえにしても、
とりあえずユウトが実質元怪人だったってだけ覚えときゃいい。
「……で、そんな俺の何が"根拠"だってんです?」
「わからんとは言わせんぞ、ユウト!
君ら師弟は共にヴィラン上がりのヒーローだろう!
加えて言えば、生前のソウキチ氏はセキガハラを代表する珠玉の傑物……!
そして弟子である君もまた、彼の後継と呼ぶに相応しい逸材なのは言うまでもない!
生来のヴィランが改心・更生しヒーローとして二代に渡り活躍し続けている!
それも今まさに! ここセキガハラで!
この事実こそ、
かの怪人たちにも改心の可能性が残されていることの、
何よりの根拠だろう!」
「……」
ライホウの熱弁にユウトは思わず黙り込むが、
どうにも"圧倒された"ってよりは"呆れた"風なのは火を見るよりも明らかで……




