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デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
間章:熱闘!? ライホウVSユウト!

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序:ヒーロー大激論

 それは撃鉄戦隊マズルフラッシャーの面々が、

 怪人ジャバオクタルス・ホワイトナイトを撃破して何日か経った頃の出来事だった。


「ユウト! 君は一体何を考えているんだっ!?

 あれが我が国が世界に誇る『セキガハラ』に身を置くヒーローの戦い方か!? 」


 場面は防衛組織『セキガハラ』のオフィス。

 机をバン、とブッ叩きながら怒鳴り散らかすのは、

 全身からヒーロー風のオーラを醸し出す銀髪の偉丈夫……

 発言から概ね察しはつくだろう、

 この男こそは東亜でも五指に入る偉大なヒーローと名高き

 "二代目レールガンマイスター"こと本名バンバ・ライホウに他ならねえ。


「そう仰られましても、置かれた状況が状況でしたんでねぇ。

 細々した事柄なんざ気に留めるいとまもなかったんですよ。

 一歩間違えたら大勢の民衆が変なヤツのクソになってたかもしれねぇ緊急時です、

 態々ヒーローの作法だなんだと意識してる余裕がどこにありますか」


 軽く受け流しながら如何にもユルいノリで応えるのは、

 みんなご存知我らが本作主人公……

 新進気鋭のヒーロー"遺恨リーパームジョウ"こと本名ホンゴウ・ユウト。

 苦手な先輩に怒鳴られてるってのに怯える素振り一つ見せず、

 果ては毅然とモノを言う辺りやっぱこいつタダ者じゃねえ……。


「まあまあバンバさん、ここは一旦穏便にですね……」

「ホンゴウはホンゴウなりに上手くやっとんですから、

 先輩らしくそこは素直に認めたらんと」

「確かに彼にも問題はありますけど、

 とりあえず今回は犠牲者ゼロだったんですし~」


「ユウトさん、あんたもそんな態度よくないんだぜ……」

「キャプテンはあくまで君の為を思ってくれてるんだから、

 そこはあなたも大人の対応を心掛けないと……」


 言い争う二人を宥めるのは、例によってマズルフラッシャーの五人。

 ブルー(ユライ)イエロー(カイト)グリーン(ユカ)がライホウを、

 レッド(タイセイ)ピンク(ユメ)がユウトをそれぞれ落ち着かせようと躍起になっていた。


「"上手くやった"だと!?

 "犠牲者はいなかった"だと!?

 どこがだっ!?

 もしや君らはあの"雑で問題しかない蛮行"を!

 セキガハラに属するヒーローの業務として問題がないと!

 そう言い張るつもりか!?

 同志があそこまでの問題行動を起こしたのに、

 それをどうして穏便に済ませられるんだ!?」


「俺の為を思ってる~?

 とてもそうは思えませんがねぇ~?

 精々が八つ当たりか、

 やる気ばかり持て余してっから

 とりあえず俺に難癖つけてエツに浸ろうってんじゃないですか~?

 ……そ・れ・と~、

 "相手の顔色伺いながらテキトーに媚びて受け流す"のは、

 "大人の対応"って言わねえと思いますがねぇ?」


 ……まあ、果たして意味があるかっつーと甚だ疑問ではあるが。


 さてともかく、

 流れについては会話内容から概ね察せるだろう。

 ライホウがキレてんのは、先のショッピングモールでの出来事……

 ユウトがチャカイーズ製菓の幹部社員どもを悉くブチ殺し、

 数多の従業員や買い物客たちを救ってみせた件についてだった。


 なんでも、

 概ね世間からは『無駄なく完璧に仕事を熟した』と評されるこの一件、

 ライホウにとっちゃキレ散らかさずに居られねえほど許し難いらしい。

 果たして具体的にどこがどう許せねえかっつーと、本人曰く……


「いいかユウト! 察していないようだから教えるが、

 君のやったことは極論、ヒーロー界の未来を脅かす行為なんだぞ!」

「……失礼ながら、その主張は理解致しかねますなァ。

 俺ァただ民衆様の生命と平穏を脅かす脅威を排除したまでですが……

 よもや守るべき民衆様を見捨てヴィランの好き勝手にさせるのが、

 ヒーロー界への貢献だ、などと仰るワキャあ御座ごぜェますめぇ?」

「当然だ! 勿論民衆は助けなければいかん!

 誰も民衆を見捨てろなんて言ってない!

 僕はなユウト、

 君があのヴィランたちを、

 君個人の主観に基づく私的見解・個人的感想めいた不当な理由によって、

 残虐非道かつ非道徳的な方法で容赦なく惨殺したのが、

 大いに問題のある行動だと言っているんだ!

 如何に凶悪なヴィランであろうと尊重されるべき人権はあるし、

 未知を違えたとてやり直す機会を与えてやるのが社会のルールだろう!」


(((((……え?)))))


 ライホウの口から飛び出たまさかの主張!

 マズルフラッシャーの五人が面食らったのも無理はねぇ!

 これが映像作品なら"ポーン"と電子音が響き、

 背景には宇宙をバックに目を見開く猫の写真が浮かんでたことだろう。

 てか五人の顔はまさに"あんな感じ"だったしな。


 確かにライホウはヒーローとしての覚悟や信念に強い拘りを持つ男だ。

 そしてだからこそ、民衆や同業者(ヒーロー)のみならず

 ヴィランの命や権利も極力尊重すべきだと度々主張している。

 そこは実際、セキガハラの構成員ならみんな理解していた。


 加えて、どこぞのオッサン(タチバナ・ソウキチ)よろしくヴィランが罪を償いヒーローに転身、

 世界平和の維持に貢献したなんて事例も数多ある。


 だがさりとて、何事にも限度はある。

 事実"そういう事例"が多いとは言え、

 あらゆるヴィランが例外なく全員更生・改心できるワケはなく、

 その事実を裏付けるように

『ヴィランの九割以上は社会復帰不能な極刑妥当の極悪人だ』

 とする統計データまである始末。


 果ては更生・改心したヴィランでもその経歴がバレると色々ヤバいんで

 "ヴィラン上がり"のヒーローは組織による経歴隠蔽がほぼ必須……

 なもんで

――あくまで無力化に留める不殺主義のヒーローも少なくねえが――

 社会全体はヒーローによるヴィランの殺害を、

 あたかも草刈りや害虫駆除の如く容認・推奨してんのが実状だった。


 とするとまあ、ライホウの主張は極論

『クマ殺すな』と役所にイタ電かます暇人(ゴミ)と大差ねえワケで……


「……成る程、成る程。

 バンバ先輩、あなたの主張はよう理解させて頂きました。

 つまるところ、先輩はあの怪人を生け捕りにし、

 改心・更生の後ヒーローへ転身する可能性に期待すべきだったと、

 そのように仰せなワケで御座ごぜェますね?」

「そうだ! そもそも彼女たちを準然たる悪と言い切れる証拠は無かった!

 上層部の意向で無理矢理悪事に加担させられていたりと、

 悲しき過去を持っている可能性だってあったハズだ!

 それなのにそこを考慮せず、

 ただ"有害そうに見えるから"という私的な理由だけで彼女たちを殺害するのは、

 例えば口コミや制作関係者の経歴などだけを参考に、

 ろくに調べもせず映画を酷評するようなものだ!

 ユウト!

 君は『ユア・ストーリー』の評価だけを参考に、

 同じく山崎貴監督がメガホンを取った『ゴジラ-1.0』を見もせず酷評し、

 あまつさえ怪獣映画・特撮ファン全体への人格攻撃まで行う、

 そんな程度の低い『ドラゴンクエスト』ファンと同じことをしているんだぞ!」

「……そんなのが居たとして、

 果たしてそいつらァそもそもドラクエ信者かどうかも怪しいモンですが……

 ではバンバ先輩、あなたはあの連中に改心の余地があったと仰るので?

 仮に俺が奴らを生け捕りにし、どこかの更生施設へ送れば、

 改心・更生しヒーロー業界を支えうる有用な戦力になったに違いないと?」

「そうだ! 言動を鑑みるに彼女らは組織の幹部格!

 ともすれば実力も相応に高く、運用次第では一線級の戦力に化けたかもしれん!

 加えて彼女らの力の謎を解き明かせば、

 様々な分野の技術を飛躍的に発展させられていた可能性があるし、

 何より敵組織の内部事情について聞き出せていたとさえ考えられるじゃないか!

 思い出してみろ!

 相手の総本山は人間を捕食する地球外由来のヴィラン組織だぞ!?

 それがこの世界にとってどれ程の脅威であるか、

 転じてその類いの敵組織に関する情報が如何に重要なのか、

 理解できないほど愚かな君じゃないだろう!?」

「……そうですねェ。ええ。

 確かに仰る通り、奴らは実力者で、

 味方にできりゃ心強かったでしょう。

 チャカイーズ製菓は事実脅威ですし、

 奴らから得られるモンは多かったやもしれません」

「そうだろう! つまり君はっっ――

「で、す、が、ねェェェ〜?

 ですがねぇ、先輩……

 あなたは先程から『かも知れん』やら『可能性がある』やらと、

 不確定な言い方ばかりしてらっしゃる。

 そーゆーのを世間じゃ『希望的観測』とか

『楽観視』って呼ぶんじゃありませんかねぇ〜」

「なん、だとぉぉっ……!?」

「否定為さいますか?

 でしたら確たる根拠を示して頂けますね?

 よもや文武両道と名高い名門バンバ家の嫡男様が、

 明確な根拠無きただの感情論で反対意見を押し切るなどと……

 そんな馬鹿げた真似を為さるハズは御座いますめェ?」

「根拠? 根拠だとっ?

 いいだろう……根拠なら、あるっ!

 僕が彼女らの改心と更生を信じる根拠はなっ、ユウト!

 偉大なる"禍根ハンター"こと君の亡き恩師タチバナ・ソウキチ氏と、

 他ならぬ()()()っ……!

 そう、様々な意味で()()()()()()()()たる君自身こそ、

 何よりの根拠に他ならないんだっ!」

「「「「「あっ……!」」」」」

「……ホホーゥ?」


 ライホウが言い切ったその瞬間、明らかにその場の空気が変わる!

 ……確かに遺恨リーパームジョウ(ユウト)禍根ハンター(ソウキチ)の正統後継、

 発展型とは言え実質同じシステムを受け継ぐ改造型ヒーローではあるが……


「なあ、そうだろう?

 ホンゴウ・ユウトこと遺恨リーパームジョウ……

 否、この場合はこう呼ぶべきかな?

 "ヘカトンケイルG-044"こと

 コードネーム"埋葬者ブリアラー"くんッ」

「……」


 然しライホウの言葉に"それ以上の意味"がある事実を、

 その場の全員が知っていたんだ。


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― 新着の感想 ―
開幕から激昂しているライホウと、先輩にも余裕の態度を崩さないどころか逆に煽るユウト。マズルフラッシャーの5人が2手に分かれて宥めようとしていますが、見事なほど焼け石に水ですね。双方から口撃される5人が…
 うはぁ……。今回の話は堪えますねぇ。綺麗事の理想論を捨てきれない私には思いっきり刺さりました。(笑)  でもきっとこういうところがこの作品のテーマなんでしょうね。  罪に対する罰。寛容さの限界。そん…
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