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デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第一章:継承者誕生編

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幕間:惨敗の真相

 場面は防衛組織『セキガハラ』拠点内。

 ジャバオクタルスにブッ飛ばされ変身を強制解除されたユウトはそのまま拠点に逃げ込み、

 組織に一連の戦いについて報告を済ませていた。


(あの場はまあ、何とかなる……と、信じるしかねえわな。

 代表取締役社長には嫌な役を押し付けちまったが……

 生きて会えたらなんか埋め合わせでもしてやらねーと)


 拠点内に建つコンビニのイートインスペース。

 変身を強制解除に追い込まれる程の深手を負わされた筈のユウトは、

 なんでか涼しい顔でサラダをカッ込んでいた。


「よォ~、ホンゴウ~」

「ン……あっ、ミヤンヌ先生。お疲れ様です」

「おうお疲れ~……って、その名前で呼ぶなよな~。

 もう芸名使うような仕事してねェんだから~」

「すんませんどうも、俺ら世代だとどーにも先生はあのイメージなもんで」


 そこへレジ袋片手に現れたのは、

 どうにも小汚くてみすぼらしい雰囲気を拭い切れねぇ白衣姿の中年男。

 その名はミヤマガワ・ボタンジロウ。

 セキガハラの医事課に在籍する古株のヒーローカウンセラーで、

 若い頃は『ミヤンヌ・ジロウ』って芸名でタレント活動に精を出し、

 名門国大仕込みの卓越した精神医学と巧みな喋り、

 そして大物ヒーローや強豪ヴィランも恐れぬ歯に衣着せぬ物言いで人気を博した実績の持ち主だ。


「勘弁してくれよ~。オレにとっちゃただの黒歴史なんだからよ~」


 気だるげにユウトの臨席へ腰掛けたボタンジロウ。

 レジ袋の中身は安物の輸入発泡酒と珍味複数……

 まだ日の出てる時間帯だってのに、

 しかも公共の場で酒盛りとはなんともはや……


「……先生。俺も医者に健康説ける立場じゃありませんが……

 いいんですか、昼間っから酒なんて……」

「構うかよ~。どうせ今日は休診(オフ)だ~。

 仮に急患だろうがカウンセラーなんぞ幾らでもいる~。

 態々オレが出向くほどじゃねえ~」


 チーズ鱈をツマミにグイ、と安酒をアオりながら、

 ボタンジロウは『ところで』と話を切り出す。


「ホンゴウおめ~、ヴィランに殴られて変身解除食らってんだろ~?

 幾ら不死性爆盛りの改造型だろうと安静にしとかなくていいのかよオイ~」

「心配いりませんって。

 カンダ先生も太鼓判推して下さいましたんで」


 なんて言いつつユウトは診断書をヒラつかせる。

 デカデカと書かれた"異常無し"の赤文字と医者のサイン、そして押印……

 要するに、ヤツの健康は標準医療がバッチリ証明してるってワケだ。


「何なら『横着の為に医者を利用するな』ってどやされましたよ」

「まあそりゃカンダもヒマじゃねえからな~。

 ……然しそれにしたってありゃエグいよなぁ〜」

「何がです」

「偵察ドローンの記録映像を解析して分かったんだがよ~、

 あのヴィラン、ここ最近現れた怪人型ん中でも特にヤバい部類だってよ~」

「ヤバいって、組織内での立場がですか?」

「アホか~。戦闘能力だよ~。シンプルにバカ強えつってんだ~。

 ありゃ力任せに殴るしかねえ脳筋でもなきゃ~、

 異能やアイテムに頼りきりのモヤシでもねぇ~。

 "どっちもこなせるヤツ"のほぼ到達点~……

 大幅な弱体化の形跡こそ見られるが~、

 それでもSランク組織の上級幹部クラスは確実(カテ)ぇって話だ~。

 ラグナロク六兄妹の長男ファヴニルでもサシで勝てるかわからねえらしい~」

「あの兄妹で最強なのは末弟のソーマでしょ」

「その末っ子でも苦戦必至だってんだぜ~。

 何せ末っ子は爆発力が高くて手数も多い分安定性に欠けてっからな~。

 おめ~も知らねえわきゃねえだろ~?」

「……だとしてもあの末弟を苦戦させるレベルですか。

 やっぱ先輩方に丸投げして正解だったみたいですね」

「ホンゴウ~おめ~言い方~。

 その通りだけど~言い方ぁ~おめ~。

 仮にもヒーローが拠点で飯食いながら言う台詞じゃね~ぞおめ~。

 まあともかく~、そ~なると余計おめ~が無事なのがわかんね~よなホンゴウ~」

「と仰いますのは?」

「トボケんじゃね~バカァ~。

 ホンゴウ~おめ~そのラグナロク末弟が苦戦する怪人に殴られといて~

 なんでピンピンしてんだって話してんだろ~がっえぇ~?」


 そう! 読者のみんなとしても気になってただろう!

 具体的には『キレイに終わった特撮ドラマの最終回でふと浮かんだ疑問』ぐらいには!

 果たして何故ユウトはジャバオクタルスに殴り飛ばされたのか!?

 結構本気で吹き飛んで変身解除にまで追い込まれた割に無事なのか!?

 それがユウトの言っていた"苦渋の決断"だとして、

 果たしてヤツはあの女ヴィランとどんな話し合いをしていたのか!?

 今遂に明かされる、その真相とは……


「まあ何ですね、

 別に何も難しいこたァありませんや……

 ホント簡単な理屈……

 ただあの女が、どうにも俺をナメ過ぎてて殺し切れなかったってだけですよ」


 ……オーケー、わかるよ。納得できねーよな。

 当然これは大嘘だ。

 それも"信憑性を持たせるべく真実を織り交ぜた"結構悪質なヤツ。


「はあ~? なんだおめ~、そんなの理由になるかボケ~」

「けどあいつ弱ってたじゃないですか。

 だったら威力落ちてても不思議じゃないですって。

 例えばクウガ的に言っちまえば、

 紫の必殺技(カラミティタイタン)青の必殺技(スプラッシュドラゴン)になるようなもんでしょう。

 タイタンフォームの初陣を思い出して下さい。

 イカ野郎(ギイガ)()れたのはあの腕力と刃物攻撃だからです。

 果たして素早い動きで墨爆弾を掻い潜れたとして、

 腕力控え目なドラゴンフォームの打撃技があの軟体に効くと思いますか?」

「バッカおめ~、ラグナロクの末っ子が苦戦すんだぞオイ~?

 精々ガヴで例えてオバマス併用右フックがグルキャン連射になるぐれぇじゃねえか~。

 兄貴姉貴やタコ野郎でもなきゃ無事じゃ済まねーだろそんなもんよ~」

「確かに並みのヤツじゃあの火力は死にますが……

 作品の枠を超えちまえばどうです?

 バグルドライバー時代のゾンビ邪神や始祖生物どもなら?」

「そりゃおめ~、しぶといんじゃなくて死なねえ連中じゃね~か~……

 って~、そうかホンゴウ~。

 おめ~確かに半ば"不死身"に近えクチではあったわな~」

「覚えてて下さってんですねぇ、光栄です」

「そりゃ~よぉ~、忘れたくても忘れらんねえよあんな能力(モン)~」


 さて"禍根ハンター(タチバナ・ソウキチ)"の後継にあたる"遺恨リーパームジョウ(ホンゴウ・ユウト)"に受け継がれたのは、

 何も肉体同化型の高機能変身ベルトや多彩な戦闘センス、

 バケモンじみた身体能力や一見善玉ぽくねぇビジュアルだけじゃねえ。

 師の切り札こと異能"魂魄狩り(アニマヴェナトル)"もまた、

 より洗練された上位互換に姿を変え弟子に継承されていたんだ。


「"霊魂を刈り取る"と書いて"スピリットハーベスター"だったか~?

 モノの魂を奪うに飽き足らず~、

 奪った魂や倒した敵の命を吸い取っちまうってんだろ~?」

「ですです。所謂マジでゲームのHP回復みたいなもんでね。

 まあ、吸い過ぎて持て余すとそれはそれでアレなんですが……

 ともかくあん時、俺ァ既にショッピングモールでヴィランを殺してました。

 それも推定中堅以下とは言え一応幹部クラスの怪人タイプを五匹も」

「な~るほど~? となりゃ確かに〜、

 あのヴィランに殴られても平気なわけだぜ〜」


 ……とまあ、上手い具合に誤魔化したユウトだったが、

 核心的な真相は別にあった。

 というのもユウトはあの時ジャバオクタルスに"八百長(ヤラセ)"を持ち掛けていたんだ。

 具体的には


先輩方(マズルフラッシャー)の存在は自分たちにとってノイズでしかない。

 奴らが居ては満足に戦えないだろう。

 そこであんたには、いい感じに加減しつつも、

 自分が派手に吹き飛ぶような攻撃をして欲しい。

 吹き飛んだ自分は上手い具合に変身を解除して、

 あたかも"致命的なダメージを受けた"フリをして逃げる。

 先輩方の対処は任せる。

 無理に戦わなくてもいいから、

 お互い生きていたら頃合いを見て落ち合い改めて戦おう』


 って感じで……。

 何ともメチャクチャで、ともすりゃチャカイーズ製菓の幹部社員どもが如くふざけた申し出だが、

 さりとてジャバオクタルスはこれを快諾。

 そこにはヤツなりの、ユウトさえ知り得ない色んな事情があったワケだが……

 まあそれはともかく、

 これぞユウトがあの場をほぼ無傷で逃げ出せた真相だったんだ。


(……あとは代表取締役社長が生き残ってくれてりゃ完璧だ。

 量産型戦力ぽいのを出してたし、奴らに任せて逃げるのが安牌だが、

 ラグナロクの末っ子が苦戦するレベルならワンチャン勝っててもおかしくねーし……)


 それほどの強豪相手なら"ムジョウ"システムの真髄を見せられるかもしれねぇ。

 余程の強敵でもなきゃ使いようのねえ"あの力"を全力で叩き込める相手と戦えるのは純粋に楽しみだ。

 ……とまあ、期待に胸を膨らますユウトだったが……


(……流石に弾丸天帝(バレットルーラー)相手じゃ分が悪かったか……)


 結末は悲惨なモンだった。

 マズルフラッシャーを前に戦闘員(オン・ボードゥル)の群れは瞬く間に全滅、

 幾らか善戦したジャバオクタルスも必殺技"アルティメットキャノンブレイク"に敗れ去り……

 しかも総本山『ワンダーランド王国』の差し金で不本意な巨大化復活を強いられ、仕方なく戦闘を続行。


 マズルフラッシャー側も巨大戦力を動員し応戦、かなり壮絶な死闘を繰り広げるも、

 土壇場で繰り出された最強ロボ『弾丸天帝バレットルーラー』の必殺技が決め手になって敗死しちまったんだ。


(……ま、仕方ねえか。何でも上手くいくワケはねぇもんなぁ……)


 過去は過去、無理だったもんは無理なんだ……

 そう結論付けて強引に納得するユウト。

 ただ奴の心には、確かな未練と後悔が深く突き刺さっていた……。

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― 新着の感想 ―
いつも丁寧なご返信ありがとうございます。ライホウの名前の由来を知った瞬間、「あ~~~~~~っ!」と膝を打ちました。苗字のバンバが昭和最初の追加戦士となっている時点で、ユウトと同じ法則性に気づくべきでし…
 ははは……、さっぱりネタが解りません。  まあでも、そんなところもこの作品の魅力なのではありますが。(笑)
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