表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスイズザヒーロー!-悪の組織の最強怪人、ヒーローに転身する-  作者: 蠱毒成長中
第一章:継承者誕生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/53

エピソード8:水ならぬ"溶けた鉛を差す"男

 場面は前回から引き続き、だだっ(ぴろ)い採石場跡地。


「大丈夫かユウト! 助けに来たぞ!」


 ヴィラン組織『チャカイーズ製菓』代表取締役社長"ジャバオクタルス・ホワイトナイト"

  対

 新進気鋭の若手ヒーロー"遺恨リーパームジョウ"こと

 本名"ホンゴウ・ユウト"の戦いが今まさに幕を開けようかってその時……

 場の空気をブチ壊すが如く乱入してきたのは、

 ユウトの同僚で先輩にあたるヒーローチームこと

 二代目『撃鉄戦隊マズルフラッシャー』の面々だった。


『なんで来んだよ、このタイミングで来るんじゃねーよ……。

 ガキの意見度外視で宿題代行業者呼ぶ過保護なバカ親かよ、ったく……』

『ぐうっ、今のはかなり効いたぞ……

 ムジョウくん。彼らはなんだ、知り合いかね?』

『……職場の先輩だ。

 揃って俺如きじゃ足向けて寝らんねーレベルに優秀な人格者なのは間違いねーが、

 正直間違っても一緒に仕事してえようなタイプじゃねえ。

 特に今声かけてきたあのお方とは壊滅的に相性悪くてマジで苦手なんだよ……』

『ふむ、確かにあの男……見るからに君とは真逆なようだな。

 宛らスコット・サマーズ(サイクロップス)ジェームズ・(ウルヴ)ハウレット(ァリン)といった所かな』

『いやぁ、そんな崇高なもんじゃねぇよ。

 精々エツィオ・アウディトーレとドレインディモスってトコだな』

『……せめて君も二足歩行をしたらどうだ?』

『じゃあ品田辰雄とスキャグデッド(メーデーさん)で』

『君はもっと華がある方だと思うがね』

『ロバート・バクスターとヴェルデューゴならいいか?』

『……まともな台詞のあるキャラにしたまえよ』

『ルーク・フォン・ファブレとカール・ハイゼンベルク』

『版元ぐらい揃えたらどうだ?』

『ダンテとジェームズ・マーカス』

『……今更だが、

 そもそも君も彼もヒーローなんだからその手のカテゴリで例えるべきじゃないかな』

『となると忍法帖の方のトリガーと宇宙爆弾怪獣(ヴァラロン)かな〜』

『令和世代のキャラがなんでウル忍にいるんだおかしいだろう』

『じゃあフツーにゼアスと宇宙電磁怪獣(ゲバルガ)

『何ら普通ではないチョイスだな……』

『だったらレオん時のセブンと宇宙甲殻怪獣(バザンガ)

『なぜレオの時……?

 というかまず等身大で考えないか……?』

『伊狩鎧とメ・ビラン・ギ』

『君の方だけもうちょっとメジャーで目立つキャラにならないか?』

『伊狩鎧とクロコダイル(Jのオ)オルフェノク(ッサン)

『……そんなに伊狩鎧が好きなら君も戦隊キャラの方がよくはないかね?』

『伊狩鎧と芝刈機オルグ』

『せめて頭は上に持って来なさい……』

『伊狩鎧とコルシザー』

『レギュラーキャラにしないか?』

『伊狩鎧とサンダールさん』

『……どうしても怪人じゃなきゃいけないのか?』

『そりゃなぁ、肩書がヒーローってだけで実質怪人だもん』 

『……まあ、それはそうかもしれんが……。

 ところでムジョウくん』

『どうしたね代表取締役社長』

『君の先輩方、もう変身を終えて名乗りに入りそうだぞ。

 どうするんだ、先輩方を追い返すのか?』

『……追い返せるような方々なら世話ねぇよ。

 まあ待て。俺に考えがある……』

『考え、か』

『おうよ。苦渋の決断だが仕方ねえ……』


 ユウトが下した"苦渋の決断"とは?

 てかこいつなんでこんなに先輩連中(マズルフラッシャー)避けてんの?


 その辺のついては後々説明するとして……

 少しばかり、時を戻そう。


〜〜〜〜〜


「どうしたんだ、ユウト……!

 敵は隙だらけなんだぞ、何故戦わないっ……!?」


 場面は採石場跡にある高台の上。

 まさに王道の特撮ヒーローめいて颯爽と馳せ参じ後輩の身を案じるのは、

 如何にも正統派にヒロイックな"顔のいい偉丈夫"。

 その正体ってのはズバリ、新生『マズルフラッシャー』最強の戦士と誉れ高い、

 二代目"レールガンマイスター"こと本名"バンバ・ライホウ"

 ……要するにユウトが言う所の"壊滅的に相性が悪く苦手な先輩"その人に他ならねえ。


「さては、なにか術か罠にかかって動けなくなっているんだな!?

 全く……!

 だから平素からヒーローとしての基礎を忘れるなと言っているのにッ!

 如何なる不測の事態にも柔軟に対応できるよう、

 ヒーローとしての作法や心構えを鍛え、

 正義の魂に磨きをかけておくべきなんだ!

 僕の言う通りにしていれば、あんなことには……!」


 具体的な人物像は……上の台詞から概ね察しがつくだろうが、

 所謂英雄主義(ヒロイズム)系っての?

 法規や倫理を尊び、義や愛を重んじ、必要以上の見返りを求めず、

 如何なる時も正々堂々と戦い、名乗りや技名宣言といった礼儀作法を怠らず、

 女子供や老人、傷病者等の社会的弱者を思い遣り、

 社会への奉仕や民衆への献身なんかを率先してこなし、

 改心や更生の余地があれば犯罪者やヴィランにさえも慈悲を見せる。

 まさに絵に描いたような"正義の優等生ヒーロー"……

 それがバンバ・ライホウって男だったんだ。


 ともすりゃユウトの評も納得だろ?

 事実、ヤツは間違いなくライホウをヒーローの理想像として尊敬しこそすれ、

 同時に"自分とは住む世界の違う、根本的に相容れない存在だ"って認識だった。


 ……で、だ。

 これでライホウ側もユウトを

 "所詮その程度"と考えてりゃ別に何も問題はなかったんだが……


「とにかく彼を助けなくてはっ!

 そして今日こそ彼に教えてやらねばならん、

 ヒーローとしてのあるべき姿をっ!」


 ……とまあ、御覧の有り様でな。

 ライホウとてユウトの実力や実績を純粋に認め、心から敬意を払ってはいた。

 紛れもなくヒーローに必要な"正義の心"や"英雄的精神"の持ち主だと確信し、

 ヒーロー業界に無くてはならねえ存在だと方々で太鼓判を押していたほどだ。


 だが、だからこそライホウはユウトの"ヒーローらしからぬ点"を容認できず、

 なんとか改善・更生させようと躍起になってやがるのさ。

 ……当然ユウトからしたら単なる有難迷惑に過ぎず、

 奴らの喧嘩や決闘とてセキガハラじゃ日常茶飯事なんだがね。


「みんな! "ヒーローらしく"ユウトを助けるぞっ!」

「「「「「了解!」」」」」


 さて、そんなこんなでライホウは、

 まさか助けようとしてる後輩が自分について愚痴ってるなどとは露知らず、

 五人の仲間たち共々"変身"を決行する。

 その様子は一見ノリノリに見えたが……


(ごめんなホンゴウさん!)

(この埋め合わせは必ず……)

(ワイらもツラいやでぇ……)

(全く困りますよ~……)

(てかヒーローショーの案件が……)


 その実こいつらとて内心ではユウトに同情する立場ではあり、

 必然ライホウの石頭ぶり・アホさ加減にも内心呆れてたワケだが、

 さりとて諸事情から従わずにいられねぇのが現状だった。


「行くぜ! チェンジャーマガジン、セット!」

「「「「セット!」」」」

[[[[[ソウ・テーン!]]]]]

「起動せよ、ローレンツバスター!」

[チャージマァァァックス!]


 マズルフラッシャーの面々は各々銃型の変身アイテムを取り出し構える!

 ライホウは専用のゴテゴテしたメカ銃"ローレンツバスター"にエネルギーを充填!

 他の五人は汎用装備ナガシノマグナムのカスタムモデル"トキタガンナー"に、

 変身用の弾丸"チェンジングバレット"を込めた"チェンジャーマガジン"を装填する!


「「「「「撃鉄チェンジ!」」」」」

[[[[[ダンガン・ファイアーッ!]]]]]

「イカズチ鎧装!」

[フルブラァァァスト!]


 六人が引き金を引くと、

 銃口からカラフルなエネルギー弾が放たれ各メンバーに直撃!

 ライホウは銀色の電撃に、他の五人は各スーツカラーの光に包まれ、

 瞬く間に変身は完了する!


『邪悪撃ち抜く熱き弾丸! ハンドガンレッド!』


 真っ先に名乗りを上げたのは、赤い拳銃の戦士"ハンドガンレッド"!

 変身者のアサガキ・タイセイはチーム最年少の現役男子高校生で、

 戦士としての優れた才能と強い正義感を持つ熱血漢だ!


『反撃許さぬ疾き連弾! マシンガンブルー!』


 続くのは、青い機関銃の戦士"マシンガンブルー"!

 変身者のバンジョウジ・ユライは若手実業家として名を馳せる色男で、

 海外の公立大学を飛び級で卒業した天才的な頭脳派で通ってる!


『大地に轟くつよき砲弾! リコイレスイエロー!』


 豪快に名乗るのは、黄色い無反動砲の戦士"リコイレスイエロー"!

 変身者のトビホシ・カイトはゴリマッチョで陽気な関西人の大男で、

 元自衛官だが色々あって今は料理人として自分の店を持つに至ってた!


『問答無用の猛き散弾! ショットガングリーン!』


 芝居がかった仕草が特徴の、緑色をした散弾銃の戦士"ショットガングリーン"!

 変身者のカタオカ・ユカはトランジスタグラマーのボーイッシュ女(トムボーイ)で、

 元は舞台女優だったが今ではコンカフェ店員として人気を博してる!


『捉えて逃さぬ鋭き魔弾! スナイパーピンク!』


 クールで謎めいた雰囲気を纏うのは、ピンク色をした狙撃銃の戦士"スナイパーピンク"!

 変身者のアイザワ・ユメは正統派グラドル体型のミステリアスな別嬪で、

 平和な時は宅録声優や動画配信なんかをしてるそうだが、正直結構謎が多い!


『天上天下、唯我独尊!

 雷霆纏いし流星弾!

 神罰代行、レールガンマイスター!』


 そしてラスト、トリを飾るのは既にご存知!

 銀色をした電磁加速砲の戦士"レールガンマイスター"!

 変身者バンバ・ライホウについては既に説明したから省略!


『我ら、悪を討ち世を守る正義の弾丸!』

『『『『『『撃鉄戦隊! マズルフラッシャー!』』』』』』


 最後に全員で決めポーズ! そして背後が謎に爆発!

 以上がバンバ・ライホウ監修による

『ヒーローとしての作法に則った、

 戦闘開始時にすべき模範的に正しい名乗り』の一例だ。


 ……当然ヤツはユウトにもこういう『正しい名乗り』をさせようと躍起になっていて、

 態々名乗り口上やポーズを複数パターン以上も考えてやってるらしい……

 が、ユウトにしてみりゃそんなもん、

 柄じゃねえしダセェし馬鹿馬鹿しいしめんどくせぇしで、

 ライホウの言いなりになるつもりなんて毛頭ねえのは明確……

 ともすりゃそれが原因で喧嘩の十や二十も勃発するワケだが、

 まあそれはそれとして……


『みんな、行くぞ――

『ぐおわあああああああ!?』


 "作法"通りタイセイ(レッド)が出撃の音頭を取ろうとしたその瞬間、

 やけに激しい爆発を伴って、

 悲鳴を上げながら盛大に吹き飛ぶのは……なんとユウト!

 どうやらジャバオクタルスに攻撃されたらしい!


『があああああっ!

 ぐっ……クソ……なんて、こった……!」


 そのダメージは強烈そのもの!

 余りのダメージにユウトの変身状態は強制解除に追い込まれちまう! 


『なっ、ユウト!?』

『ホンゴウさん!?』

『おいおい、大丈夫なのかっ!?』

『どう見ても大丈夫やあれへんがな!』

『へ、変身が強制解除されてますっ!?』

『ガルムモードは防御そんなに高くないったって、

 一撃で強制解除は流石にヤバいんじゃ……!』


 とするとマズルフラッシャーの面々は動揺せずにいられねぇ!

 何せヒーローの変身が強制解除に至るってのは、

 概ね実質再起不能レベルの深手を負わされたも同義だからだ!


『ええい、予定変更だ! ユウト抜きであの怪人を倒すぞ!』

『『『『『了解!』』』』』


 かくしてライホウ率いる二代目マズルフラッシャーは戦いに身を投じる。


『ふん、あくまで戦うつもりか……いいだろう!

 来たれ、オン・ボードゥル!』

『『『『ヴォンドゥルルルルラギッツァンダァッ!』』』』

『『『『ボッドドドッドドボドボッドドダアアッ!』』』』

『『『『クサムックォロロロロロロロロロッッス!』』』』

『『『『ウォレァザイッギョオオオッダアアアッ!』』』』


 当然、相対するジャバオクタルスとて黙っちゃいねえ。

 ヤツが懐から取り出したカードの束をバラ撒けば、

 無数に散らばりながら異形の化け物に姿を変えていく!

 作業着姿の半魚人か、スーツ姿のカエル人間みてえなそいつらの名は、

 チャカイーズ製菓の代表取締役社長だけが使役できる使い魔"オン・ボードゥル"!

 所謂特撮作品に居がちな"戦闘員"みてーな連中で、

 実力はピンキリだが最弱個体でもレスリング部時代の原田将大に圧勝できる程度には強いらしい!


『来るがいい、撃鉄戦隊マズルフラッシャー……!

 悪を討つ正義の弾丸とやらの威力、どれほどのものか味わってやろう!』


 さあ、戦いの幕開けだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
まず目に飛び込んでくるのは、秀逸なサブタイトル。薄々お気づきかと思いますが……当方、こういう言葉遊びが大好物です(笑)。水を差すという表現はまさに的確で、「これから敵組織の首領との死闘が始まる!」とワ…
 うはぁ……。  普通はやらない敵キャラとのコント。こういうところは筆者様の個性ですよね。(笑)  あと、こんなヒーローものを書いているのにヒーローものに対するツッコミネタもまた個性。  面白くはあり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ