エピソード3:番犬、三月兎を火刑に処す
場面は前回から引き続き怪人どもに占拠されたショッピングモール!
『ねぇ~ボスぅ~?
ボクちゃん、提案したいことがあるウサ~』
『ほう、提案とな?』
ヴィラン組織『チャカイーズ製菓』の巨乳バニーガール怪人が、
リーダー格の全裸チビにした提案ってのはつまるところ……
『あのバカさっきからムカつくし~、
ボクちゃんがやってもいいウサ~?
あんなカッコつけのクソザコ童貞にボクちゃんが負けるワケないし~
みんな楽できるからけっこーイイ話だと思うんだけど、どうウサ~?』
要するによくある『自分だけでジューブンだ』ってヤツだわな。
よっぽど腕に覚えがあるのか、はたまた敵をナメ腐ってるか……まあ両方だろうな
で、肝心なのは全裸チビの返答だが……
『フム、よかろうタマゴ。
ならば一先ずあの童貞の処分は貴様に任せるタマゴ。
好きにやってみるがよい、ボインバ』
『ウッサササ~♪ 任せるウサ~♪
ボスたちはぁ~ボクちゃんがあいつを
コテンパンのギタギタにしてブッ倒す所を、
間近で見てて欲しいウサ~♪』
すんなり出たGOサインに気分を良くしたバニーガール怪人は、
不服そうなタキシード怪人と縞模様ネコ怪人を尻目に意気揚々とユウトを煽りにかかる。
『ウッササ~♪ さぁ~クソザコ童貞地球人~? 覚悟はできたウサか~?
これからテメーはこのボインバ・O2・ππ・ニーギャル様の手にかかってぇ~
究極の苦痛と耐えがたい屈辱に塗れて、
ギタギタのコテンパンになっちまうウサよぉ~?』
『……能書き垂れてねえでさっさと来い。
こんな舌戦ばかりに字数割いてちゃ読者もダレる』
『そんなに早く死にたいウサかぁ?
しょ~がないウサねぇ~!』
かくしてヴィラン怪人"ボインバ・O・ππ・ニーギャル"と
若手ヒーロー"遺恨リーパームジョウ"こと本名ホンゴウ・ユウトの戦いが幕を開ける!
『とぉ~ぅ! まずは下準備ウサッ!
喰らえっ、童貞狩りおっぱいボンバー♥』
ウサギ特有の脚力で跳躍したボインバはアクロバティックに身を捻り、
やたらデカい乳をこれでもかと揺らしながら強調!
谷間に溜め込んだピンク色のエネルギーをハート型にして発射!
『けっ、ふざけた技使いやがって……ブガアッ!』
どう考えても喰らっちゃマズいそれを、
ユウトは口からの火炎弾で撃ち落とす!
『ウッサァ!? よくもボクちゃんのおっぱいボンバーをっ!
童貞のクセに生意気ウサ~ッ!』
『この程度でアツくなんなよ~。
自慢の脂肪が溶け出しちまうぞ?
オラァ……芯までしっかり焼かれとけ、よっ!』
『へっ? ――うぎゃああああっ!?』
続け様にユウトがボインバの顔面を睨みつけると、その両目が赤く発光!
バニーガール怪人は爆炎に包まれ、爆風を喰らってド派手に吹き飛ばされる!
『ウッ、サアアア……』
爆発は強烈……人間なら首から上が丸ごと吹き飛んでそうなもんだが、
怪人特有の(?)耐久力によるもんか、ボインバに大したダメージはねえ。
精々顔面スス塗れで衣装は黒コゲのボロボロ、
序でに髪型はチリチリの歪なアフロヘア……
要するにギャグ漫画の爆発オチが如き滑稽な有り様だった。
『……丁度いいイメチェンじゃねえか。
お前のふざけたノリにピッタリだぁ』
『うっ、ザぁぁッ……この、童貞風情があっ!
テメーは本気でぶっ壊して、"調教"してやるウサァッ!』
あっという間に持ち直したボインバ。
いつの間にか"元通り"になったヤツは、
余裕ぶった態度もかなぐり捨ててユウトを"調教"しにかかる!
『喰らえウサァァ! 悶絶調教☆キンタマ蹴り!』
最早どこ狙いなのか丸わかりなアホ過ぎる技名だが、
とは言え腐ってもウサギの怪人なだけあって動作は機敏で狙いも正確……
鞭の如く加速された革製ハイヒールの爪先が、
ユウトの股座に直撃する――その刹那!
『――うぐっ!? ぎいあ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛っ!?』
悲鳴を上げたのは、何故か蹴りを放ったボインバの方だった!
だがそれもそのハズ……蹴りが直撃するその寸前、
パワードスーツの股座部分を覆う装甲からは無数の頑丈そうなトゲが飛び出し、
剣山みたく密集したそれらがボインバの右爪先をヒールごと貫いてやがったんだ!
『あ゛っ! がっ!? あ ゛っぐううああああ~っ!』
しかも質の悪いことに、
トゲには返しでもついてんのか下方向へ引っ張っても抜ける気配がねえ。
『……急所攻撃対策なんぞ今や戦闘者の必需品。
特に"変身する系"は大概装備に何やら仕込んでっから、
あからさまな急所狙いは悪手だってなァ初歩の初歩……』
『うぎい、ひっぎいいいっ……』
『なのにさあ』
『――ぐうあっ!?』
爪先を貫かれたまま右足を下ろすに下ろせず身動きの取れねえボインバ。
ユウトは無防備に露出した太腿へ容赦なく爪を突き立て……
『……なんで地球より文明進んだ国出身のヤツがそれ知らねンだよ。
おかしいじゃねぇかよ……なあ?』
『ぐぎゃあああああっ!?』
そのまま太腿の肉をごっそりと、
大腿骨が見えるほどに抉り取って見せたんだ。
……まるで軽々と、バゲットでもちぎるようにな。
『番犬の爪牙よ、我が手元に……』
意味深に呟きながら肉塊を握り潰すと、
掲げた右上腕が炎みてぇな赤いオーラに包まれ……
程なくユウトの右手には、
イヌだか狼だかの前脚を象ったガントレットが装着されていた。
それは一見ただの、何の変哲もねぇ"SF特撮にありがちな武器"にしか見えねえが……
『教育してやらァ……』
ユウトがぐっ、と右拳に力を籠めると……
何かスイッチでも押されたか、ガントレットの先端から三本の刃が生える。
あたかも爪みてえなそれの刃渡りは、概ね四十センチほどか……
ユウトはおもむろに視線を下げ、ある一点に狙いを定めると……
『ほいっ』
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!?』
右拳から生えた刃で、
ボインバの膝を軽くカッ切りやがったんだ。
所謂"鉤爪"系の武器というと、
"刃が複数ある関係上、力が分散して威力が落ちる"ってのが定説なのに、
事も在ろうに常人より頑丈な怪人の脚を軽々断ち切る辺り、
ムジョウシステムが如何に規格外かわかるってモンだろう。
『あ゛っ、あ゛あ゛あ゛っ! あ゛、あ゛し゛、が゛あ゛っっ!』
キレイな輪切りの膝二つが床に転がり、
バランスを崩したバニーガール怪人は仰向けに転倒……
傷口からは尋常じゃねえ量の血が流れ出る。
……序でに転倒の衝撃でヤツのやたらでかい乳が盛大に揺れはしたが、
こんなのでヌけるのは相当な上級者に限られるだろう。
『あ、そういやトゲ引っ込めてねーや』
一方ユウトは不気味なほど冷静なもんで……
眼前で苦しみ悶えるボインバになぞ目も暮れず、
かえってヤツの右足を引き抜き雑に投げ捨て股座のトゲを引っ込める。
『う゛、あ゛あ゛っ! あ゛し゛っ!
あ゛あ゛あ゛あ゛し゛い゛い゛い゛い゛っ!!』
右膝から下を喪ったボインバは、
惨めに這いつくばってその場から逃げようともがく。
ほぼ再起不能と言って差し支えねえが……
ついさっきの勝気な態度がウソみてえな豹変ぶりは、
全くもって無様で滑稽としか言いようがねえ。
んでまあ当然、如何に未熟な若手とは言え、
深傷を負った敵を敢えて見逃すほどユウトも甘くはねえワケで……
『……どうしたよ、ボインバ・O・ππ・ニーギャル……
俺をギタギタのコテンパに調教するんだろ?
何背ぇ向けて逃げてんだよ、
まだ右膝から下が無くなっただけじゃねえか。
地球より文明進んだ国の人にしてみりゃ、
精々ささくれみてぇなもんだろッ』
『うっぐああ゛あ゛あ゛あ゛っ!?』
追い打ちとばかりに歩み寄り、
ガントレットの刃で左の脹脛を刺し貫く。
当然ボインバには抵抗の術も意欲もなく、
悲鳴を上げて苦しみ悶えるばかり……
『……しょうがねぇなぁ』
呆れた様子のユウトはガントレットの刃を引っ込める。
(や、やったっ……助かるっ……!
見逃して、貰えるっ……!)
極限状態での予想外な展開……
ボインバの楽観視は必然だったんだろう。
だが……
『わかったよ、もう無理しなくていいから…… 焼 か れ と け 』
『え゛っ』
冷酷に吐き捨てられた言葉を合図に、
ユウトの両目は燃え盛るように発光し……
『ぐう う゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ あ゛ っ ! ? 』
倒れ伏すボインバの身体は白い炎に包まれる。
その火力たるやまさに圧倒的で、
肉付きのいいバニーガール怪人の全身は瞬く間に灰化……
その場に残されたのは、燃え残ったナンボかの骨だけだった。
『……まずは一匹。やっぱ爆発させねえ方が楽だな』
補足
チャカイーズ製菓幹部社員のうち三人は『不思議の国のアリス』の「狂ったお茶会」の面々がモデル。
ボインバのモデルはそのまま三月兎で、
とりあえずなんかこうラノベとかエロ同人のカジノに居そうな性悪バニガを更に邪悪かつふざけたノリにしていったらこうなった感じである。




