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休日の午後〈参の姫クリスタ〉


 ケヴィン様とエルナ様が抜けられた後、私たちも解散となった。私たち4人は何となく一緒に館に戻る。

 テレーゼ様は、安心しつつも先のことが気になるよう。

 イザベル様も、先のことを考えて戸惑われているよう。

 シャルロッテ様は、明らかにまだ気になることがあるよう。

 私も後のことが気にならないわけじゃないけれど、今はもう少し気を抜いても良いんじゃないかしら?

 

 部屋に戻れば、昼餐の用意がしてあった。

 テーブルの隅には、積み重ねていた国からの手紙。

 そうね、もしかしたら、お父様は娘のことを心配していただけかもしれないわ?その心配の仕方が、私に合ったものではなかったとしても。

 国に帰れば、陛下からはお叱りがありそうだけど、卵を孵した姫にならなかったから。

 でも、私はこれで良かったと思う。本当に、そう思うわ。


 そしてもうひとつ、日記帳。

 “もし、箱庭の鍵があれば、こんなことにはならなかったのかしら?”

 日記を書いたアリーセ姫にしか、その答えはわからないけれど。

 ただ、もしかして。


 アリーセ姫がアードリアン王子からもらった金のリング、もしあれが、箱庭の鍵だったとしたら。アードリアン王子がそうなるとは思わず、密かにアリーセ姫に贈ったのだとしたら。それを何かのきっかけで箱庭の鍵だと、アリーセ姫が気づいたのだとしたら。そんな時、金のリングを持っていることをコンラート王子に知られてしまったら。さらには、コンラート王子が密かにアードリアン王子について調べていたことを、アリーセ姫が知ってしまったとしたら。そんな折に、弐国に行ったアードリアン王子からアリーセ姫宛てに手紙が届いたり、なんてこともあったら。


 もし箱庭の鍵である金のリングが儀式の最中にあれば、こんなややこしいことにはならなかったのかしら、という意味になるかもしれない。

 そして、もしかしたら。ややこしいことになったおかげで、いろいろと誤解が解けて、喧嘩もおさまって、雨降って地固まる、そんな未来になったかもしれないわ?



 昼餐をいただいた後、図書室に行くことにした。今日で最後になりそうだから、箱庭の図書室という雰囲気を味わっておきたかったのよね。

 窓を開ければ、さわやかな風が入る。

 窓際の椅子に腰かけて、書架から持ってきた本のページを開く。

 しばらく読み進めて。けれど、何となく気分が高揚して、本に没頭できなかった。


 ここに、箱庭に来た日のことを思い出す。

 儀式より謎解きがしてみたかったのよね。

 風に、本のページがぱらぱらとめくれていく。


 結局、箱庭の鍵とは何だったのかしら?

 ただのキーアイテムにしてはちょっと、意味深な言葉だもの。


 それに、もうひとつ。

 やっぱり私は、暗闇をただひとり歩いている気がするけれど。

 近くに、そばに、光玉のような明かりがともっていると、そう思える、そう思えるようになった。


 コンコンと、開け放していた図書室のドアを叩く音がした。振り向けば、

「やっぱり、ここにいたか。」

とディルク様。

 私は何だか嬉しくなって、そして今日でお会いできるのは最後だから、がっかりするような気持ちになった。

 そういえば私、ほとんど毎日のようにディルク様とお会いしていたのではないかしら。それなら、やっぱり落ち込むわ。


 ディルク様も本を読まれるのかしらと思ったら、書架ではなく私のほうに来られた。

「こんなに早く終わるとは思わなかったな。」

「そうですね。最低3か月、長ければ半年以上ということでしたから。」


 私も立ち上がれば、ディルク様と視線が近くなって。

 ディルク様が小さく笑う。それが、なぜか真剣な表情に変わった。


「クリスタ、七国に留学に来ないか、俺の婚約者として。」


 驚いた。でも。

 私にとって、その関係はとても自然な気がして。

「はい。」

と、ただそう答えていた。ただ、何だか、何だかとっても嬉しいわ?


 私の返事を聞いて、なぜかディルク様が大きく息をついた。そして、なぜかちょっと視線をそらして。続きの言葉はこう聞こえた。

「もう一度、抱きしめてもかまわないか?」

 何となく気恥ずかしくなって、私も視線をそらして。何と答えようと、考えて考えて言葉にならないので、うなずくことにした。


 ディルク様が一歩近づき、そっと私の体を引き寄せる。そして。

 私はディルク様の腕の中におさまってしまった。

 ああ、やっぱり。ディルク様とこんなふうに触れ合うのは自然な気がするから。


 耳元でディルク様が告げる。

「これから続く人生、俺は君と一緒がいい。」


 やっぱり、嬉しいわ。だから、その気持ちのままに伝えてみたい。

「私も、ディルク様と一緒が良いですね。」

 

 ディルク様がもう少し強く、私を抱きしめる。 

 そして、二人で笑いあった。




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