夜〈???〉
「一応、ありがとうと、言っておきます。
メッセージカードの呼び出しに応じてくれて。」
「まさか、そっちから来るとは思わなかったぜ?
って、お前もしかして、さっき書庫にいたか?」
「よく分かりましたね、少しの間ですが。次はどの部分を読むべきか、自分で探したかったので。
それはともかく。
キミ、最初にこう言ったそうですね。聞きたいなら直接聞いてくれと。
だから、聞きに来ました。」
「へぇ、何が聞きたい?」
「では単刀直入に。箱庭を出る方法を知っていますか?」
「お前……。なぜ俺がそれを知ってると考えた?」
「毎晩、調べているみたいなので。」
「魔力持ちの動きが追えるのか?」
「違います。単に、女官さんたちが教えてくれたんです。」
「やっぱりか、ある程度監視されてんじゃねーかとは、思ってたけどよ。どんな魔導具使ってんだか。
ならお前、俺以外にも調べてる王子がいるのは分かってんだろ?」
「キミが一番、話が通じるかもしれないので。期待外れかもしれませんが。」
「期待外れとは言ってくれるな。」
「先に質問に答えてください。」
「箱庭から出たいのか?」
「……出なければなりません。」
「お前、何を知ってる?」
「儀式が終わらなければ、箱庭に閉じ込められるかもしれない。」
「閉じ込められるねえ?そんなら、箱庭をぶっ壊してやろうか。」
「キミ、すごいですね。その発想、ボクには思いつかなったです。」
「お前、おもしれー女だな。」
「あ、それはボク、要らないので。」
「は?」
「それは、各方面で大変よく知られている事例ですよ。例えば、ショージョマンガとか、ネットショーセツとか。」
「……は?」
「キミのような俺様タイプが、興味を示す女性像の一つです。
まあキミのように、自信があって、能力も申し分なく、ついでにイケメンだったら、キミがいうところのオンナが群がってきますよね。
そのオンナたちって、キミに気に入られたいあまり、キミの望むような行動をしがちになります。キミから見ると媚びているようにしか見えないかもですね。
そんな中に、キミの予想を裏切るようなオンナが現れたら、興味を惹かれますよね。
でもボク以外にも、探せばそういう女性は少なくないので、というか確実にいますので。そちらを探してください。」
「……お前、おもしろすぎるな。」
「それ、褒め言葉じゃないですよね。」
「気に入った。」
「気に入らなくていいので。」
「お前の意見は聞いてない。」
「それ、ボクに対して失礼ですから。」
不意に、ケヴィン王子がボクの髪を手に取った。取られてしまった、長い銀の髪を。
そこに落とされる口づけ。
ケヴィン王子が顔を上げる、その獲物を狙うような視線。
まさか、ボクがそんなものを体験するとは思わなかった……。
その時。
「何の音だ?」
「光が!……割れてしまった。」
「分かるのか?」
「卵が割れたかもしれません。ボクたち、箱庭から出られないかも。」




