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第15話

 あの騒動から二日後、僕達は生徒会室で紅茶を楽しんでいた。


「いや。まさか有馬君の叔父様が、警察庁の高官とはね……。お陰で助かったよ」


「ははは……。そうらしいですね、全然ピンとは来ないんですけど」


 あの先輩が僕の為に危険な目に遭い、助け出した日。僕達は無事騒動の原因として警察に捕まり。更に冒険者崩れで、犯罪者の一味である大男達の仲間と疑われて厳しい取り調べを受けていたのだが、突如として叔父さんが取調室に直接乗り込んで来たのだ。


「けど、最初叔父さんが乗り込んで来た時滅茶苦茶怖かったんですよね。何というか雰囲気がこう冷たくて鋭いって言えばいいのか……兎も角、最初は叔父さんのそっくりさんが来たのかと」


「遅く連絡を受けた時に、あの犯罪者崩れの一味の疑いがあるとでも言われたんじゃないか?」


「そう、ですね……」


 あの日。叔父さんは入室して来て早々に刑事と変わったかと思うと、戦った理由やなぜ勝てたのかを厳しい態度で聞かれたのだが、先輩を助ける為だと言ったら多少態度は軟化した。

 ただ問題は暫く和やかに話した後、その力がなんなのか知っているのかを聞かれた時が一番怖かった。まぁその後即釈放になって、先輩も一緒に焼肉に連れてってくれたんだけど……。


「けれども、今まで何も無かった私達に嫌がらせをして来ていた元々素行の悪かった生徒や、傍観していた教師が一斉に処罰されたのは恐らく叔父さんの影響もあったんじゃないか?」


「多分そうですね……僕の話聞いてる最中、不良生徒や同級生の話が出た時一瞬冷たい笑み浮かべてました」


 殺気とともに、なんか企んでそうな笑い声出してたしなぁ……。


「ところで有馬君。あの日の事についてなんだが……」


「あ、はい」


「改めて本当にありがとう。君が居なかったら私は今頃どうなっていたか」


「どういたしまして。けど僕がやりたくてやったことですから、気にしないでください」


「ありがとう……。それに、嬉しかったよ。私の事を大切だって言ってくれて」


「え、あ、いや! その、ですね! 生徒会メンツとしてと言いますか、友達としてと言いますか!」


 今思うと、とんでもなく恥ずかしい事言ってたな僕!?


「フフフ、分かっているさ。今まで私にそんな事を言ってくれる人は居なかったし、私自身を必要としてくれる人は居なかった。だから、嬉しかったんだ」


「……僕は先輩と出会わなければずっと独りで、つまらない生活を送ってたと思います。誰とも話さず、誰とも笑い合わない。そんな日常を。なので先輩には感謝してるんです。だから、ちゃんと僕にも頼って下さい。弱音を吐いたって良い、愚痴を言ったって良い、泣きついたって良い。僕に先輩を支えさせてください。」


「いい、のか?」


「任せてください!」


 僕が胸を張ると先輩は顔を伏せ、少し目を拭った。


「え、あ。すまない、涙が……君という人は本当に……。ありがとう……有馬君。君には感謝してばかりだな」


「こちらこそ、です。所で……」


「どうしたんだ?」


「これからもココに来ても良いですか?」


「……勿論! 君の為と思ってした事とは言え、君を傷つけてしまい済まなかった」


「良かった、ココに来れなくなったら僕どうしようかと」


「それで、その……だな」


 先輩は、急にもじもじしだしだす。


「私は大切な友達? なんだよな……?」


「え、えぇ。はい」


 僕が答えると、意を決した様に先輩は僕に言った。


「だったら、これからは名前で呼び合わないか?」


「へ?」


 や、確かに友達なら普通なんだろうけど……!?


「その、ダメか?」


 僕が混乱していると、先輩は徐々に落ち込み始める。


「わわわ、良いですよ!? ただちょっと先輩を名前呼びするって言うのが……」


 僕が返事をした瞬間、先輩は小さくガッツポーズする。


「やった! んん! いや、常々名前呼びというものに憧れていてね! それについては気にせずじゃんじゃん名前で呼んでくれ!」


「え、えっとじゃあ改めてよろしくお願いします。凛子さん!」


「こちらこそ 改めてよろしくな、スエヒロ君!」


 凛子さんはそう言いながら微笑む。


 その後。僕達は以前よりも仲良くなって、凛子さんが中学を卒業するまで一緒に遊びに行ったりするようになった。

 まぁ凛子さんが中学を卒業してからも、メッセージアプリのやり取りは毎日してたんだけどね。


 因みに甘やかし過ぎて、気がついたら凛子さんが甘えん坊なポンコツキャラ化していたのは余談である。




「……それにしても友達、か。意識してもらうには、容姿を整えなければいけないかな。よし、決めた。高校デビューにかこつけて変わろう、色々と」





 時は戻り、現代。ダンジョン内にて過去に思いを馳せていた僕を心配して、凛子さんが僕を覗き込む様に見つめてきた。


「ん? スエヒロ君? どうかしたのか?」


「いえ、ちょっと物思いに耽ってました」


「大丈夫か? 君がなんらかのスキルを持っているのは知っているが、まだレベル1だ。油断はしないように。まぁもしもの事があっても、先程も言ったように君は必ず私が守る。だから、存分に頼ってくれ」


「それじゃあお願いしますね、凛子さん」


「あぁ、任せてくれ!」


「ちょっと! 二人とも何話してるの!? 遅れちゃうわよ!」


「今行くよ!」


 いよいよダンジョン攻略だ、気を引き締めていこう。

 

 そうして愛華に呼ばれ、僕達はダンジョンの奥へと歩き出した。


 今日は時間があったので何日間かかけて書いてた14話と15話の二話投稿です。

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