177話
それを聞くと今度はカイトが、心配の声を上げる。
「それじゃあエリスも危ないんじゃ」
それに対して、ナハトは落ち着いて答える。
「大丈夫だよ。だって、きっと僕らと同じ異世界人がいるはずだもの。それに何かあったとしても、エリスさんの強さなら一人でなんとかなるはず。」
エリスの父は疑問を投げかける。
その問いに対して、ナハトは自信ありげに応える。
「僕らが元いた世界にこの世界の住民と同じような特徴を持つ種族がいたんです。彼らは魔法を使っていました。おそらくこの世界にも使えるものはいると思うのですが……。とにかくその特徴が似ているということから、エリスさんのことも知っているかもしれません。」
その話を聞いて、一同は驚くような顔をして聞き入る。
それからエリスの父が納得したところで、これからの行動についての話し合いを始めることになった。
まず最初に情報を集める為に、酒場へ行くことにした。そこに集まる人は冒険者だけなので色々な話が聞けると思ったからだ。
早速出発しようとすると、エリスのお母さんに呼び止められた。
振り返り立ち止まると、「これを持っていって」と言われて一つの手紙を受け取った。中身を読むとそこには
『あなたたち二人には感謝しています。今までありがとう。そしてごめんなさい』
と、書かれてあった。それを読んで2人とも心が苦しくなった。だが、今は行動しなければならない。二人は無言のままうなずき合い、走り出すのだった。
***
街中を走っている時も、住民からの不安そうな声がちらほらと聞こえてきた。しかし誰も何もできない為なのかあまり反応はなかった。
そのことについて、不満や絶望を感じてしまうのは自分の傲慢さだと感じて気持ちを強く持った。
しばらくすると目的地に着いた。そこは街の中でも一際大きい建造物であり、外観からも豪奢さを感じさせる建物であった。中に入り階段を登っていく。最上階まで着くと扉を開き部屋に入る。するとそこには、一人の男性が待っていた。
部屋に入ってくると同時に彼は、勢いよく口を開いた。
「お前らがあの女の言ってた奴だな」
どう返事をすればいいかわからずに戸惑ってしまう。するとカイトが間髪入れずに口を挟む。
「そうですけど。どういうことですか?」
男は一瞬眉根を寄せたが、質問に対して応え始めた。
彼の名前はリヴァイアサンと言うようだ。その風貌はまさしく海龍と呼ぶのにふさわしい。見た目通りの年齢ではないがかなりの実力者のようで威圧感を感じられる。
彼の話は続く。
「俺の仲間を殺ったのは貴様等だろ?あれは間違いなくあいつの手のものじゃない。まぁそういうことができる知り合いがいないとは言わんが、大方予想がついている」
そこまで言うとナハトたちの方に指を指して言った。
「それで?あの女はどこにいったんだ?」
その問いかけに対してナハトたちは言葉を詰まらせてしまった。