176話
それを聞いたエリスはナハトたちに協力して欲しいと頼み込んだ。その依頼に対して、ナハトは快く承諾した。
こうして二人の新しい生活が始まったのだった。
あれこれと考えているうちに、カイトが話しかけてきた。
「ナハトはこれからどうするか決まったのかい?」
「あぁ!僕はこの世界を見て回りたいと思う」
カイトは微笑んで言った。
「よしっ!決まりだな。一緒にこの世界を楽しもう!」
「うん。楽しみにしておくよ」
その後、二人はこの世界での生活について話をし始めたのであった。
~1ヶ月後~ 二人は冒険者登録を済ませたあと、簡単な依頼を受けたり、この惑星の街の地理を覚えつつ観光したりしながら過ごしていた。そして、この星での生活に慣れ始めて、充実した日々を過ごしているとある日、事件は起きたのである。
ある朝、
「ねぇ、カイト起きて」
ナハトは優しく語りかける。
「……うぅ……ん……どうしたんだい……こんな時間に……」
カイトはまだ眠そうな声を出す。
ナハトは続けて言う。
「実はね。エリスさんが行方不明になってしまったみたいなんだよ」
すると、まだ少し寝ぼけていた目がパッと覚める。そして、勢い良くベッドから出て部屋の窓に駆け寄る。
外を見ると街の人たちが右往左往としている光景が目に入ってきた。
カイトは焦ったように口を開く。
「一体、何があったっていうんだ!?」
ナハトも窓から外の様子を見ていたが、表情からは深刻さは伝わってこなかった。ただ事ではないことは予想できていた。だが、どこか余裕がある雰囲気を纏っていたのだ。
そんな時に玄関のドアがノックされる音が聞こえる。ナハトはゆっくりと歩み寄り扉を開ける。そこにはエリスの父、ウストの姿があり、 慌ただしく話し始める。
「おぉ、ナハトさんか。よかった無事でいてくれて。急で申し訳ないが、至急冒険者ギルドに来てほしい」
エリスがいなくなったことを悟る。同時にナハトは事態を理解した。
「わかりました。すぐ向かいます」
そう言い、ウストは急いで走っていった。
ナハトは急いで身支度をし、カイトを連れて家をでた。
***
2人が外に出ると、空は赤くなっていた。それはまるで血に染まっているかのように赤黒く不気味な光を放っていた。
ナハトたちは急いで冒険者ギルドに向かった。
着いてすぐにウストを見つけることができたのは幸運だったと言えるだろう。受付の前でエリスの母が座り込み泣いている姿が目に入った。
ウストはすぐに駆け寄って行った。ナハトたちもそれに続く。
「皆さん来てくれたか」
エリスの父は安堵の様子を見せながら話し出した。
エリスの母は、 顔を上げて
こちらを見つめ、涙を浮かべながらも必死に笑おうと頑張っているようだった。
そこでようやく気づいたのだが、エリスの母以外にも何人もの冒険者が床に座るように倒れ伏している。
それをみて、事態がどれほど深刻なのかを理解するとともに胸騒ぎがした。
ウストは咳払いをして、気を取り直すようにして話を続ける。
「先程までは、まだみんな意識があったがいつの間にかに姿を消してしまったのだ。」