表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ショートホラー

ショートホラー第16弾「おじと私の失敗」

作者: HOT-T

久々の投稿

「ねーねー、これ見てよー」

「うわっ、これ高い奴じゃん。彼氏にでも買ってもらった?いや、でもあんた彼氏いなかった気が」


 友人の1人が私が見せたブランドバッグを興味深そうに見つめながら言う。


「ふふっ、これはさ、私が稼いだお金で買ったんだよねー」

「え?あんたが?まさかウリとか……」

「違うよー。おじにお金いただいて、それで買ったの!私、ビジネスの才能あるみたいなんだよねー」

 

 すると友人のひとりであるカナが変な顔をする。


「それってパパ活? その、そういうのってちょっと……」

「パパ活? あー、私がやってるのはおじ活だしー。しかも、健全なお付き合いだよ。おじが私をサポートしてくれるの」


 ネットで販売していた情報商材。

 ホテルへ行ったりする事なくさえないおじさん達からお金を頂くマニュアルってのを試してみたらもうこれがクリティカルヒット。

 優しいおじ達がお金をくれて、私はそれを頂き適当な所でドロロンパッ。


「あのさ、アリサ。それって詐欺じゃん。ヤバイよ」

「バッカだなぁ。私はつまらない人生を送っているおじ達に夢を与えてるの。こんなのイマドキやらない方がおかしいよ?」

 

 それを聞いて『自分にも教えてよ』という友達もいたがカナと傍に居る根暗な娘は嫌そうな子をしていた。


「あんた達、ダサいよね。時代の波に乗れない奴らは惨めだよ。だっさー」

 

 私はそう言ってやる。

 去り際、陰キャの娘が呟く。


「気を付けた方がいいよー。破滅の『音』、聞こえるからさー」

「うっさいのよ!!」

 

 その言い草に何だか腹が立った私は手に持っていたアイスティーを 

 ブンッ!! と、根暗娘に投げる。

 冷たいアイスティーが根暗娘に直撃してびしゃっ!と、服を汚す。

 それが面白くて私は大笑いしてやるんだ。


「ちょっ、ナギ大丈夫!?」 

 

 とりあえずカナとこいつははぶ確定。

 あれ?私って人気者じゃね? そんな充実感を覚えつつ友達と一緒にその場を後にするのだった。

 私は今、お金を頂いているおじとメールのやり取りをする。

 適当に作った親の話をして、その後に親が重い病気になってるって相談。

 50万払わないと病院を追い出されちゃうって嘘で同情心を煽りつつそうなったら親の看病でもうおじと会ったりできないの、とか適当な事を書いておじを味方に付ける。

 するとおじ達からのメールは一変。

 お金を貸してあげようとか、会いに行くよ、とかさ。

 ちょろいよね。


「ありがとう、おじ。ホント助かるよ~」

「あ、あのお母さんのお見舞い。僕も行こうかい?」


 あ、ヤバイ。面倒な奴。


「ううん、おじにうつっちゃったら悪いもん。今日はすぐ振り込まないといけないからごめんね」

「あ、うん……」

 

 小太りで頭皮も薄い おじはしょんぼりしてしまう。


「ごめんねー、今度ゆっくりご飯しようね。おじはすぐにホテルに連れて行こうとしたりしないから安心して色々話せちゃうの。これからもアリサの味方でいてね」

「も、もちろんさ」 


 ちょろっ! 

 でも大分搾ったしちょっとしつこくなってきた。

 こいつもさ、そろそろ捨て時だよね。

 次のおじを見つけないとね~。 

 私は小太りおじにお礼を言うとその場を後にした。


 帰り道、マンションの前で夕焼けを背にあの陰キャがこちらを見ていた。


「な、何よ」

「本当にもう止めた方がいいよ。『破滅の音』が大きくなってる」

「ばっかじゃない?てか思い出した。あんたさ、母親が殺人鬼とかじゃなかったっけ?」

 

 陰キャの表情が 

 ピクッ と、動く。

 これは多分当たりだろう。


「あんたさ、人の事非難できるほどお利口な生まれじゃないじゃん」

「そう……そう、だね……」

 

 あれ?泣いちゃうのかな?

 ちょっと強者な私、いじめちゃったかな?

 私は万札を一枚押し付ける。


「これ、この前の服のクリーニング代。まあ、あんたみたいな女じゃクリーニング出す様な服は持ってないだろうけどさ あはははははっっ!!」


 陰キャの娘は札束を握り締めて俯いてしまう。

 なんか調子くるっちゃうじゃん。

 ちょっと泣き真似して私を悪者みたいにする気? こんな所で泣くとかありえないんだけどー。

 あー、もう無理無理。

 そんな空気に耐えられないわ! 私は走り去る様にその場を後にするのだった。

□□

 部屋に戻った私はおじにお礼のメールをする。

 これが大事で繋がりを続けることで通報とかを遅らせる効果があるんだって。

 とりあえずこれでフェードアウトして新しいおじ探しだなぁ。


 ピロリンッとメールが届く。

 えっと、あ、おじから返信だ。

 うん?なになに? は? 私はスマホの画面を二度見する。

 その文面にはこう書かれていた。 


”お友達、殺人鬼の娘?凄い怖い顔してたけど大丈夫?逆恨みで刺されない様に気を付けてね(はぁと)”

 

 と……。

 

 「う、嘘っ!なんで!?」

 

 まさかさっきの現場に居た!?

 ハゲおじにつけられてたの!?

 そんなはずない。だって電車を乗り継ぎして移動したもん! じゃあ……陰キャのあいつだ! あいつが何かしたんだ!! 私は慌ててスマホを手にする。

しかし、それよりも早く着信音が部屋に鳴り響く。

 あ、あれ?マナーモードにしてたんだっけ? あ、えと……出なきゃ。あは、あはは……。

 私はスマホを手に取ると画面には知らない番号が表示されていた。

 出るべきか出ないべきか。でも後で掛け直してくるってなった時面倒くさいしなぁ……なんて迷ってる間にコールが鳴りやんでしまった。

 あれ?切れたのかな? と、思っていたらすぐにメッセージが来る。


“アリサちゃんの部屋から○○の看板見えるよね。面白いよね、あれ”


 !?

 確かによく行くスーパーの特徴的な看板が窓から見えるけど……

 そんなことおじと話をしたこと無い。

 てか、これってつまり………何で私の家知ってるの!? 何?何なの?もう怖い!!

 くそっ、あのおじ、もうちょっと早く切ってればよかった。

 お金をたくさんくれるからキープしてたけどヤバいじゃん。ストーカーじゃん。


 再びメールが。

 

“今日までで400万……アリサちゃんへの結納金、これで十分だよね?”


 

 は?結納金? 何それ?わけわかんない言葉使わないでよ?


“おじは私に酷い事しないよね?そんな人じゃないって信じてるよ”


 とりあえずこう送っておけば きっと大丈夫だろう。

 そしてまたもメール。


“もちろんだよ。これからもずっと守ってあげるからね”


 ガタッとベランダから物音がした。

 え?嘘、いるの!? 私はベランダのガラス戸を開けて外を覗く。

 そこには薄ら笑いを浮かべたハゲおじが……


「嘘……ここ、10階だけど……」

「迎えに来たよ、アリサちゃん(はぁと)」

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かった。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ