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チビ  作者: チビ
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はじまりの歌

第九話 それぞれに出来ること


赤子の泣き声に誘われる様に婆さまが駐在所の中に入ると、

その後に綱らなる様に石のおかみさんと鳥越先生も入って来た。

菊之丞が抱く赤子をその3人が囲むように、その子の顔を覗き込むと、3人は「めんこい子じゃなぁ」「よう来てくれた」

「まっことによう無事でなぁ」とその赤子を慈しむ様に、

柔らかな笑顔と共にそう言う3人に、赤子を守ろうと硬くなっていた菊之丞も自然と力を抜いて、その子を3人に見せるように

菊之丞「この子に、この子に乳をやってはもらえませんか?」と話しかけた。

すると、石のところのおかみさんが「はいな、そん為にわしがやって来ましたもんで」と、菊之丞から赤子を預かると、

慣れた手つきで赤子を抱いて、恥じらいを見せる様子もなく

その場で豊かな乳房を片方出すと、泣いていた赤子にその乳房を含ませた。すると赤子は、力強く乳を吸い始め、その様子に

石のところのおかみさんは「こん子は達者な子に育ちますで」

と、その様子に優しい笑顔を浮かべていた。

その様子を見ていた婆さまは「まっことになぁ、達者で何よりじゃわ」と相槌をすると、鳥越先生は「まずは乳を飲んでくれて一安心じゃが、それでも生まれたばかりで、えらい目におうとった様じゃで、乳を吸い終わったら、その後はわしの診療を受けてもらわんとならんぞ」と、ちくりとから釘を刺すと、

じっとその様子を見ていた

和尚が「そりゃもっとじゃわ!それとな、婆さまやおかみさん、鳥越先生を見ていて思ったんじゃが、わしらも、わしらで

それぞれに出来ることをせんとならんなぁと、そう思った、

なぁ、街のお方がた?」と、黙って赤子が乳を飲む様子を見守っていた、菊之丞、東雲、武田、橋本の4人に水を向けた。

4人がそれぞれに「えっ」と呆気に取られている中で、

和尚は続けて「わしを含めて男どもが何人顔を突き合わせてみたところで、この身から乳を出してやることはできんかった。

それに、どんなにこの子の身を案じても鳥越先生の様にこの子の診察をしてやることも出来ん。それに、そもそもおかみさんや先生を、2人合わせてここに連れて来らたんは、普段の付き合いから考えてみても婆さまやからやと、わしは思う。

それぞれがそれぞれに出来ることをして、今、みんなでこの子の命を繋いだんじゃろうなぁ…。

しかしまあ、そもそもお前さん方がこの子を見つけてくれんかったら、この子の命はどうなっとたかも分からんことや。

だからこそ、ここに縁あって集まった皆が、これから、

それぞれに何が出来るか知恵を絞っていかんとならんなぁ」と

菊之丞達に問い掛けた

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