プロローグ
今日は自分の葬式があった。
死んでからというもの自分の体を三人称視点で見続けるゴミゲーが始まり、まったく同じ光景を3日も見続けることになった。そもそも自分から死を選んだのだから文句を言っていられない。
高校を卒業し、就職。社会の歯車として働き続けるまさにモブのような人生。
いつからだろう。自分が頑張れなくなったのは。
中学の時自分の無力さを知ったからだろうか。
それとも高校の時あまりクラスになじめず毎日虚勢を張り続けていたからだろうか。
社会人となって少ない給料を悩みながら楽しくもない仕事を休みもなく毎日していたからだろうか。
いやすべての積み重ねだろう。
疲れてしまったんだと思う。起きて仕事をして帰って寝て、起きて仕事をして帰って寝て、起きて仕事をして帰って寝て、、、起きる。
帰ってきてコンビニの冷たい弁当を食べている時つい思ってしまうのだ。あの時ああしていたらと。
毎日後悔が積み重なっていき、自分なんて,,, と自分自身を言葉の凶器で傷つけていく。
そんな毎日に嫌気がさしてしまったのだろう。
世界では働いて食事をして寝る。それも満足にできない人もいる。そう考えると自分は幸福のようにも思える。しかしそんな毎日が続いても楽しくもなんともない。
自分には養う家族も好きな人も欲しいものも友達すらもいない。
そんな自分が嫌だったのだろう。
あるときふっと体が動き電車に衝突した。
たった2歩前に出ただけで死んでしまえた。
痛いという感情よりも救われたという感情のほうが大きかった。
自分はほとんどの人と違って電車の前に飛び出すことができるのだと優越感さえ感じていた。
その時思ったのだ。次の人生は頑張ろうとほかの人ができないことをやってやろうと。
火葬される自分を見ているとゆっくりと瞼が下りてくる。
すうっと体が引っ張られていき暖かい空気に包まれる。
そうして僕の人生は本当の意味で終わるはずだった。
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気づくと体が冷たくなっていた。
「寒っ!」目を開けると大柄の男が映り、その男は僕の体をお湯の中に押し込んだ。
「熱っ!」体が急激に温まり、覚醒した。
あれ?
体をタオルケットで包まれながら自分の体を触ろうとした。うまく動かない。
声もうまく出ない。軽くパニックになり、涙が流れる。
「おぎゃあああ!」まるで産声のように叫び声をあげた。