第8話《ハウゾウくんでござる!》
ハウゾウくんは、大きな風呂敷を背負ってるねんけど、めちゃくちゃ可愛い。
許可を得てから広げてみると、バナナが一房とスマホが入っていた。
バナナは見た目にもまっ黒で、傷んでる。食べられへんことを告げると、ハウゾウくんは哀しそうな顔をしてた。
遠くからは街と思わしき灯りが、ようやく見えはじめてた。
「街に着いたら、ご馳走を食べさせてあげるから、もう少し我慢できるかな?」
「本当でござるか?」
とたんに目を輝かせるハウゾウくん。
申し訳ないが、バナナは処分させてもらった。
ハウゾウくんのスマホを開いてみると、ハウゾウくんの情報が記されていた。
ハウゾウくん:レベル50 職業:黒竜
属性:竜・闇
武具種:牙 スロット数:6
ランク:UR☆☆☆☆☆☆☆☆☆
――黒竜の牙クニトラ。
どうやら俺と同じく、チート武具を持っているようやな。
かの大剣豪が所有していた刀の名が冠されているのも、何かの偶然やろうか。武具の固有スキルは、さきほど体感した通りのチートスキルやで。
【ブラック・タスク】(P)
攻撃を受けると、一度だけ発動する。
味方全員の攻撃を2倍にする。
術者にカウンターを付与する。
かなりのチートやな。
覇王剣と組み合わせたら、最強のチートになるやん。当たり前やが、ハウゾウくんは闇属性キャラやった。
ぜひとも仲間なってもらわんとアカンなぁ。
ちなみに、固有スキルは以下の通りやった。
【黒竜のブレス】(A)
防御無視の全体攻撃。
相手の素早さを下げる。(3ターン)
全体攻撃と、デバフ付与はかなり魅力的やな。
素早さを上げることで、ずっと俺のターン的な戦法も狙えるかもしれへんな。
【怒りの咆哮】(A)
自身の素早さを10倍にする。
攻撃力に、自身の素早さを加える。
敵一体に攻撃力の10倍で、防御無視ダメージ。
ガチで、ハウゾウくん無双できそうやな。
さっきの闘いで、これを使われてたら負けてたわ。
スキルスロットには、さきほどの復活スキルがセットされていた。
【武士でござる!】
倒れた時に一度だけライフ1で復活する。
自身の攻撃力を100倍にして1ターン行動してからリタイアする。
間違いなくハウゾウくんは、チート級の強さや。これから、もっと強くなるやろうな。
その辺の雑兵とは、明らかに違う。早速やけど、フレンド登録させてもらった。
ハウゾウくんと共に、歩き続けて数10分。ようやくブカレストに辿り着いた。
「遅いで、ロキ。待ちくたびれたわ!」
街の入り口では、漆黒の法衣に身を包んだ彼女――ラフィーネの姿があった。
怒って実家に帰ったことなんか、本人はすでに忘れてるようやった。すっかり機嫌を直してるみたいやな。怒ってる時の彼女は、口もきいてくれへん。