第6話《武士でござる!》
すべての力を、この一撃に籠めた。チートが籠められた通常攻撃を、全霊で放ってやった。
ブラックドラゴンの咆哮が、耳を劈いている。確かな感触に触れて、俺は勝利を確信した。
ブラックドラゴンの身体が、光りの粒子に変わっていく。一撃必殺の攻撃をまともに受けて、ブラックドラゴンの身体は弾けていた。
その刹那である。新たなスキルが発動されて、俺は絶望した。
【武士でござる!】(P)
倒れた時に一度だけライフ1で復活して、自身の攻撃力を10倍にして1ターン行動してからリタイアする。
――マジか。
俺は心のなかで、絶叫しとった。とんでもない、パッシブやな。
復活とか、反則やで。
焦ってるのがバレたら、つけいられてしまうからな。
あくまでも、ポーカーフェイスでいかんとアカン。クールでお馴染みのロキちゃんが、慌てふためいたらカッコ悪いからな。
それにしても、とんでもないスキルである。
復活をするうえに、攻撃力が10倍であった。チートにも、ほどがあるやろ。
いまの俺に対抗する力は、残ってへんかった。
文字通りに、全力を尽くしてしもたんや。
眼前で弾ける光りに、俺は身構えた。ブラックドラゴンの姿が、別の姿へと変わっていく。
今度こそ、絶体絶命やで。
「まだで、ござる……」
可愛らしい子供の声が、聞こえてきた。
獣らしき何かが、喋っているのだ。
変異を遂げたブラックドラゴンの姿を見て、俺は思わず気が緩んでしまった。