第5話《真っ向勝負です!》
拮抗する力が、手元で弾けようとしている。
ブラックドラゴンの口元が、赤く輝いてるねん。高熱を帯びた赤いひかりが、俺の手元を焼こうとしてるのが解った。
――というよりも、タナトスを握る手が、めっちゃ熱いねん。このままやったら、大やけどやで。絶対、火ぃ吐くつもりやで。
これはもう、なんとかせなアカンな。
ドラゴンなんやから、火が吹けて当然や。
このままここにおったら、丸焦げにされてしまうがな。
バックステップで、ブラックドラゴンから距離をとった。それとほぼ同時に、炎が噴出された。まともに喰らったら、間違いなく黒焦げにされてまうわ。
【黒竜のブレス】(A)
防御無視の全体攻撃。
最初のスキルで、ブラックドラゴンの攻撃力は2倍になっているはずや。
どの程度の威力なんかは解らへんけど、防御は無意味なんだけは理解できた。タイミング的にも、避けられるもんとちゃうからな。火炎放射器なみの火力で、かなりの炎が噴出されてるねん。
――それでも不思議と、俺のなかで焦りや不安はなかった。
覇王竜刃破の効果で、俺の攻撃力は100倍のはずや。
なら、負けるはずがない。いくら相手のレベルの方が勝っとっても、俺の火力を上回れるはずがないねん。
2倍と100倍。
この差は、歴然や。
竜刃破の時と、要領は同じやで。真っ向から、突っ切るしかない。
残りのスキルは二つしかないけど、現時点で役立つんは一つだけや。
【覇王の一撃】(A)
編成キャラの攻撃力の合計値を、自身の攻撃力に付与する。(3ターン)
自身に覇王の闘気をまとわせる。(2ターン)
剣に竜属性を付与して、全体攻撃をする。
単身で使えば自身の攻撃力のみが付与される――つまり、2倍になるはずやで。なので100×2倍で、俺の攻撃力は初期ステータスの200倍になってるはずや。
いかに相手のレベルが高くても、俺の火力の方が明らかに上なんは間違いないねん。
なので、負けるはずがなかった。
炎に包まれながら、俺は雄叫びを上げていた。