第3話《管理者と遭遇しました!》
暗闇のなかで人の気配を感じて、俺は立ち止まっていた。
自動スキルのせいで、覇王竜刃破が目前の人物にむかって発動されてしもうた。
――しもた!
そう思った時には、大爆発が起きとった。
覇王竜刃破の余波で、周囲を土煙りが舞っている。もろに喰らってるのに、人影が身動きしないまま最初と同じ場所に立ってるのを見て、驚かされた。
マジか。
アレを喰らっても、耐えられるんか。
多分やが、かなりの高レベルプレイヤーなんやろうな。
正直、この時点では、その程度にしか思っとらんかった。
「すまん。攻撃するつもりは、ないねん。怪我しとらん?」
俺は慌てて、駆け寄っていた。
光りに照らされるその人物を見て、俺の思考は固まってしもうた。
狐面をかぶったその人物は、小柄ではあるが筋肉質やった。その佇まいは、異様な雰囲気に包まれとった。まるで、武道の達人かなんかやで。心なしか亡くなったオジサンに似てる気がしたねん。
微動だにせずに、こっちを見ている。面のせいでその表情までは解らへんが、好意的なようには思われへんかった。
もしかしたら、いきなり攻撃されて怒ってるんかもしれへん。いまの一撃に耐えれるほどのプレイヤーやからな。ガチでやったら、いまの俺じゃあ勝たれへんのは間違いない。
そんな訳で俺は、狐面からの反撃がくるんが恐かった。
いまの俺はまだ、ただの初心者やからな。
いかに強いスキルを持ってたとしても、しっかりレベリングがされたガチ勢ユーザーを相手にしたら、勝てる自信はなかった。
「心配しなくて良い。私は管理者のひとりだ。この程度では、かすり傷の一つもつくことはない」
「はい……?」
いま狐面は、管理者だと名乗った。
つまり、この世界の中枢であることを意味している。
それにどういう訳か、狐面の声は変声機を使っているのか、妙に機械的やった。
性別や年齢どころか、性格までもが感じられずに気味が悪かった。覇王竜刃破をもろに喰らっても、向こうは無傷やで。
はっきり言うて、次元がまったく違い過ぎる。
いまの俺が勝てる相手と違うのは、間違いないな。
「安心していい。君を、どうこうする気はない。タナトスの所有者が、いかなる人物か見に来ただけだ」
どうやら、敵意がないようや。
それで安心しとったら、獣の唸り声があがった。それとともに、空気が揺れるのが理解った。まるで漫画みたいに、びりびり震えんねん。
「どうやら、あっちはやる気のようだな」
狐面の指先から、小さな炎が生み出されていた。
かすかな灯りに照らされて、獣の姿が垣間見えたんやけど――あまりにも、ヤバすぎる光景やった。