第7話《聖騎士との決闘》
「あなた、本当は強かったのね。どうして、黙ってたのよ!」
「さすがは、パパ上でござるな!」
なぜだかハウゾウくんが、誇らしげだった。
別に黙っていたわけではないけど、ミリアが不機嫌そうに問い掛けてくる。
ゴブリン討伐を苦もなく終えて、帰路についている最中だった。ギルドで報酬をもらえば、しばらくの生活費にはなる。今夜はハウゾウくんに、ご馳走を振る舞ってあげようか。
街の入り口に、一組のパーティーがおるのが見えた。20代~30代ぐらいの男が3人。煙草を吹かしながら談笑してる。見ための印象は、元ヤンっぽいな。
はたからは下品に見えたけど、ミリアとミレーニアの異様な空気感でいえばこちらも負けてない。ダントツでこっちの方が、ヤバい集団に見えるのは間違いないで。
自慢にならへんけどな。
「おい、見ろよ」
パーティーの一人が、仲間に声をかけた。
リガルド:レベル230 職業:魔導士
それなりに、やり込んでいるベテラン勢といったところか。他のメンバーも、似たようなものだ。
俺とハウゾウくんで、一掃できるのは間違いない。
「ニワトリ剣士って、どんな職業だよ」
「絶対、役に立たねぇだろ?」
「おい、止めてやれよ。かわいそうだろ?」
皆、アホにした調子で、口々にミリアを非難した。
とたんにミリアの表情が、暗くなる。よそのパーティでも、同じような想いをしてきたのかもしれない。だからこそ、仲間に入れてもらいたがっていたのかもな。
「他の奴らも、低レベルな初心者だな」
「おい、お前ら。悪いことは言わん。その女を解雇して、他のメンバーを揃えた方がいいぞ!」
空気は読めんし、なんの役にも立たへん。おまけにブルドッグみたいな顔してて、目つきも悪いからな。ブサイクコンテストに出れば、ミリアとミレーニアで、ぶっちぎりの決勝戦や。
ミレーニアと合わせても両手に花どころか、両手にババやで。
――けどな。
「何だ、てめぇ。何か、文句あるのかよ?」
リーダー格の男が、睨みつける。
低身長だが、筋肉質の男や。日に焼けているところを見ると、現場関係の仕事をしてるんやろうな。
バルバロ:レベル307 職業:聖騎士
多分、強いんかな。
どんなもんかは知らんけど、恐らく俺の方が上級職やで。ガチでやっても、負ける気はせぇへんな。
「ガチャ運は良いようだが、流石にそのレベルだと、まだ俺には勝てんぞ?」
どの程度の実力差があるかは解らんけど、少しばかり腹が立つねんな。
普段なら、いらん喧嘩はせぇへん。
余計なことには、首は突っ込まへん主義やからな。
「お前さぁ。確かにこいつは、空気も読まれへんアホな女や。レベルも低いし、変な魔剣も持ってる」
それでも俺が任意で選んだ以上は、仲間には違いないねん。
「はっきり言って、俺一人で十分や」
その仲間を馬鹿にされては、さすがに腹が立つで。
「けどな。だからってアホにするんなら、お前らしばくぞ?」
「やってみろよ!」
剣を抜いた瞬間、覇王竜刃破が発動した。
金色の竜が、バルバロを飲み込んでいく。
「甘いッ!」
バルバロの一閃で、覇王竜刃破は消し飛んだ。
流石に高レベルなだけあって、それなりに強いようやな。
「ふんッ!」
剣を振り切ろうとしながら、バルバロは昏倒していた。
白目を向いて、泡を吹いている。
ちょっと、面白い。