第5話《お金がなくて、3日も宿に泊まれてません……》
「あの……。できれば私も、連れて行ってもらえませんか?」
黒衣に身を包んだ女が、声を掛けてきた。
やせ細った出っ歯の女や。手入れされていない髪には、白髪が混じっている。オバサンではないにしても、若くもない。見た目の雰囲気が暗いせいで、老けて見えるな。
おかっぱ頭やし、ちっさいしで、出来損ないのコケシに見えるねん。
ミレーニア:レベル10 職業:ダークメイジ
職業からして、闇属性で間違いないやろう。ガチな初心者であるが、誰からも仲間にして貰えずに困ってんやろうな。ミリアと同じく、はみだし者というわけや。ラフィーネはミリアにも、ミレーニアにも興味がないといった感じや。
俺も興味ない。
職業的にみても、攻撃よりも防御系のスキルに特化してると思われる。一人ではゴブリンが相手でも、苦戦をしいられそうやな。
クエストに行かなければ、生活費も稼げないのでミレーニアにとっては死活問題。そりゃあ、暗くもなるやろう。
恐らく攻撃よりも、防御系のスキルに特化してるんやろうな。闇属性やから、ひとまずは連れていったるけど、あまり仲間にはしたくないタイプではあるなぁ。
まぁ、この手のタイプは経験上、気付いたら自分から去っていくんやけどな。
「お金がなくて、3日も宿に泊まれてません……」
表情を曇らせて、ぼそぼそと語り始めた。
性格も暗いみたいやし、需要はないやろな。三日間、路上生活してたんかな。
ゲームの世界でも、現実世界でも、周りに溶け込めずにいてるんやろうな。
放っておくとそのへんで野垂れ死にしそうで、追い返すと後味が悪くなりそうや。
「良いよ」
そう答えると、表情を輝かせた。
ホンマは、仲間にしたくないねんけど、しゃあないわな。
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
暗いけど、最低限のコミュニケーションはとれそうや。ミリアよりはマシ、といった印象でしかないがな。
ミリアはというと、面白くなさそうにミレーニアを見ていた。というか、めっちゃ睨みつけてるやん。バチバチに対抗心、燃やしとるがな。
コケシVSニワトリ女とか、B級映画でもないで。
「ウチはロキみたいに甘くないから、しっかり働かんかったら追い出すからね?」
現実主義のラフィーネが、しっかりと釘をさしていた。
ミリアやミレーニアとは対照的に、ラフィーネの顔立ちは整っている。
気性の荒い性格と、生まれついての赤髪のせいでかなり攻撃的に映って見える。そんなわけで、ミレーニアはビビりまくっている。
ミリアはというと、面白くなさそうにミレーニアを見ている。ミレーニアの存在が、不満でしかたがないんやろうな。
「ねぇ、ロキ。こんな女が居なくても、わたしが居れば充分、クリアできるわよ?」
「いや。ミレーニアは、連れていく。見ての通り、うちのラフィーはかなりドライやからな。しっかり、働いてもらうで?」
「ロキ、お前もや!」
本当に、ラフィーネはドライやった。
それは、ともかくや。
はっきり言って、ミリアは邪魔やな。ミレーニアも、いらんねんけど。
大体、ニワトリ剣士なんて、ふざけた職業が役に立つとは思えない。
おまけにブルドッグみたいな顔で、目付きが悪い。
ハウゾウくんは呑気に、毛づくろいをしている。
「もしかして、私はお邪魔でしたか?」
「そうね。あなたは、足手まといになるわ」
「ごめんなさい……」
邪魔なのは、ミリアの方や。
多分、使えない。
少なくとも、ミレーニアは気を使える。
その差は、大きかった。
「やっぱり、私は居ない方が良いですよね?」
「そんなこと、有らへんよ。ついておいで」
表情が、みるみる暗くなる。
「とりあえず、5人で行ってみよか?」
「そうね。どっちが役に立つか、格の違いを教えてあげるわ」
自信満々に、ミリアが頷いた。
その自信は一体、どこから来るんやろか。
ミレーニアはと言うと、すっかり萎縮してしまっている。
どのみち。
何もしなくても、その辺を歩いているだけでクエストクリアになってしまう。
覇王のスキルは、それだけ絶大なんや。