第10話《喫煙者の権利も、尊重しましょう!》
「見ていたよ、ロキちゃん!」
第三試合を見届けようと、客席に戻るとドクターがいた。
フランクフルトを片手に、ビールを煽っている。
「いやぁ~……やっぱり君は、最高だね!」
「せやろ。ウチのロキは、最高やろ!」
ラフィーネが相槌を打つと、ドクターはますます上機嫌に話し出した。
「前回の君をみて、僕も編成を見直したんだ。そしたら、穴だらけでさ。自分の未熟さを、改めて思い知らされたよ」
「それなら、心配あらへん。ロキも昨日、ドーピィにびびってイモ引いたから、ウチが気合い入れなおしたったから!」
「本当かい。それは、ラフィーちゃん。しっかり、支えてあげてやってくれ。男なんて、弱い生き物だからね。僕も妻には、しょっちゅう救われている。あぁ……つまらない話を、したね。酒が不味くなる」
「飲みなおしましょ!」
ミリアが隣りに座ると、ドクターにビールを注いでいた。
女二人に挟まれて酒を飲む姿は、完全に接待を受けている重役のそれやな。
「あさっての最終試合は、楽しみにしてるで!」
適当に座ると、俺は煙草に火をつけた。
Aランク以上の選手は、2階席に入れるねん。
喫煙者に厳しい世のなかやが、2階席では喫煙が認められている。
きっと運営者も、喫煙者が多いんやろうな。