第7話《必殺の間合い》
リチャードのターン。
勝負を長引かせれば、不利になってまうからな。敵のライフは不明やが、そこまで多くない気もする。
相手はおろか、自分のライフも見られへんから、感覚だけを頼りに予測せんとアカン。
なので予測をミスれば、誤った判断へと繋がってしまうねん。
確実に倒すには、お互いにSPスキルを叩き込みたいとこやけど――。
一撃で仕留められるライフ残量なのかが、問題となってくるな。
それにスキルによる応戦で回避されれば、次に仕留める術を失いかねへん。
だから互いに、必殺の間合いを確保したいはずや。
基本的に攻撃フェイズには攻撃系スキルが、防御フェイズには防御系スキルが使用できる。
カウンターやステータス効果などの特殊系は、攻・防・両のいずれかがスキル玉に書かれとる。
さきに動くよりも、守りを固めたほうが楽な場合もある。
今回のような状況も、そうやった。
このターンはステータス効果を上げるために、防御を選択したほうが無難やな。
けどリチャードの出した答えは、まったくの逆やったみたいやで。
【捨て身の覚悟】(A)
ライフを1にして、ターンを終了する。
次のターンに攻撃力が、50倍になる。
超攻撃型の姿勢で、自ターンに臨んでいる。
俺やったら、そんな無謀な選択はしてへん。
一撃でも被弾すれば、負けが確定してしまうからや。
正気の沙汰やなかった。
まともな神経とちゃうで。
「恐いねぇ、お兄さん。なにか企んでる?」
「別に、何も企んでないさ。守って貝になるのが、性分に合わないだけさ」
これが、リチャードという男や。