第5話《バンザイアタック!》
窮地においても、リチャードは不敵に笑っとるやん。
そんなリチャードに対して、女性ファンたちは黄色い声援を送ってるわ。
「リチャードさま、負けないでぇ~っ!」
「リチャードさま~、頑張ってぇ~っ!」
その声援は、次第に大きくなっていく。
闘技場内に、リチャードさまコールが響きわたる。
「まったく、うるさいメス豚たちね!」
中指を立てるラミー。
そのさまは、悪役そのものやな。
ここでは、リチャードが主役やな。
「ヴォーグ。すまないが、死んできて貰えるか?」
「任せときな!」
リチャードの意図が伝わったのか、二つ返事でヴォーグは突撃した。
頭上に浮かぶ黒い月が、あらゆる攻撃を吞み込んでしまう。
なにをしたところで、ヴォーグの犬死で終わってしまうのは目に見えてる。それやのに、何の迷いもなく彼は動き出した。
余程にリチャードのことを、信頼してるんやろうな。
俺の知る限りでも、二人は五年以上は同じギルドに所属してる。これまでに築いてきた信頼関係が、そうさせてるんやろうか。
敵陣に向かって疾走るヴォーグの身体が、赤く輝いている。その光りはまるで、ヴォーグの生命エネルギーを顕しているかのようやった。
【神風特攻】(A)
術者の命と引き換えに、攻撃力の10倍で全体攻撃をする。
この効果はあらゆるスキルを、すべてリセットする。
頭上の月が消えて、大爆発が敵陣内で起きた。
爆風のなかで、二つの影が揺れていた。