第5話《業火の華》
その後の数ターンは、ステータスアップやら、ちまちまとした小競り合いが続いていた。
勝負は膠着するかに見えたが、さきにドクターが動き出した。
「じゃあね、アッキー!」
――パチン。と、指を鳴らすと、9つの剣が出現した。
その標準は、アッキーを捉えている。
昨日、見せられた時よりもその輝きを増している。良く解らへんけど、何らかのスキルを併用してるんは間違いないな。
「カッコイイでござるーッ!」
興奮したようすで、ハウゾウくんが叫んでいる。
それに呼応するように、剣が勢いよくアッキーを襲った。
【ナイン・ソード・アロー】(A)
9つの剣を、任意の対象一体に放つ。
攻撃力の2倍の9連撃。
剣の雨を受けて、アッキーのライフはゼロになった。
だけどなぜだか、アッキーは倒れなかった。
不敵に笑いながら、声高らかに叫んだ。
――SPスキル。
【業火の華】
発動条件は術者のライフがゼロで、尚且つSPゲージが満タンであること。
この効果が発動すると、術者のライフは全回復する。
敵全体に攻撃力の10倍の炎属性攻撃。
味方全員の攻撃力を3ターンの間、2倍にする。
3ターンの間、術者は無敵になる。
3ターン経過後、術者は倒れる。
「残念ねぇ、ドクター。私には、攻撃は無意味よ!」
「いったい、いつSPを溜めたんだい?」
不思議そうに、首を傾げるドクター。
無理もない。
SPゲージは攻撃をしたり、ダメージを受けると溜まっていく。
ドクターみたいに、味方のスキルを使って溜めない限りは、急速には溜まらない。
「あら、ドクター。私の武器は、全開放してレべマよ!」
武具のレベルが高ければ高いほど、SPゲージの溜まりは早くなる。
アッキーは、スキル玉を掲げていた。
「かわいそうだから、殺すまえに教えてあげるわ!」
【SPチャージ(極)】
SPゲージの溜まりが、三倍になる。
どうやら、スキル玉によるSPチャージだけで、こんなにも早くSPゲージを溜めていたようや。
武具を全開放するとか、どれほどの時間をクエストに費やしてきたのかは不明やが、さすがはチートガチ勢ユーザーやな。
「カーズを先に殺せば、もう少し楽しめたかもね。彼にも、同じスキル玉を与えたわ!」
カーズの周囲を、無数の衛星が旋回している。
絶体絶命の危機ってやつやで。
さぁ、ドクター。
どうやって切り抜けるんかが、見物やなぁ。