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同棲していた彼女に部屋を追い出されたけど、外国帰りの強気な妹さんの青春に付き合わされることになりました。  作者: 遥風 かずら


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第22話 ニセ高校生


「――以上のように、当校においては学期ごとに専属となる執事を選び直し、共に過ごす男子を決めることが認められます。文化祭や体育祭では有利となることが多いため、執事を希望する生徒は早急に検討するように!」


 唯花の部屋で色々と準備を重ねた翌日。

 偽の高校生として転入を果たし、俺は見事に潜入を果たした。


 担任の話によれば、隣接するバトラー育成機関から執事役の男子を受け入れているらしく、数人程度の男子がほぼ女子高である虎山高校に通えるらしい。


 現時点では何故か男が俺しかいなく、頼れるのが隣に座っている唯花だけという構図だ。受け入れている割には他の女子からの視線が痛い。


「な、なぁ、唯花……」

「――却下」

「まだ何も言って無いのに……」

「黙って。男子のひそひそは結構響くから、今は黙っておくこと」


 唯花にはひそひそ声で話しかけたつもりなのに、周りの女子たちは不機嫌そうにしていてかなり怖い状況だ。


 着席出来ている唯花の隣で座ることも許されない俺は、一時間近く立っているしか無かった。


 ――しばらくして、


「カズキ、平気?」

「……足が痛い。座りたい」

「わたしの膝なら空いてるけど、それでもいいなら座っていいよ」

「くっ――」


 そうですか、そういうことですか。


 ここでの立場はまさにご主人様と下僕の関係。格好良くバトラーなんてことを言ってるが、他の生徒がそもそも受け入れてない。


 そんな状況下で出来ないことをやらせるとか、ニヤけた唯花の表情が全てを物語っている。


「部屋でもそんなことさせなかっただろ……出来るわけないぞ、そんなもん」

「カズキには冗談くらい通用して欲しいな」

「可愛げがある奴なら通じる」

「ほれほれ! 生足に触れまくったカズキくん。膝の上に座る度胸も無いのかな?」


 ――恐らく唯花は、緊張しまくりの俺を緩める為にしてくれている……はず。そしてこのやり取りを周りに見せて、怖くない男子ということを知らせているような気がしないでもない。


「……それが唯花様のご希望であるならば、遠慮なく座らせて頂きましょう!」


 からかう相手には誠意を持って示す。

 ――ということで、ここは堂々と唯花の膝の上に座ることにした。


「――やっ」

「ふむ。心地よいカオス……これは執事冥利に尽きま――すべっ!?」


 バチーン、といった響きのいい音が教室中に響いた。予想はしていたが、まさか本当に座るとは思っていなかったことによる手痛い反撃だった。


 頬ではなく頭を思いきり叩かれた。あまりの音に周りがざわざわしているが、ざわめきは次第に笑いに変わりつつあった。


 そして笑いを隠し切れない女子たちが声をかけて来た。


「ウケるんだけどー! 女子にやられる男子とか、弱すぎー!」

「てかさーてかさ、君って唯花っちの執事なの?」

「怖そうかと思ってたけどバカそうだし、ウチが立候補しようかなー」


 ――などなど、急にモテ期が訪れた気になるから戸惑う。

 

 今まではつきっきりで唯花の相手をして来ただけに、見知らぬ女子たちからの質問攻めは免疫が無さすぎる。


「え、えーと……俺は――」

「コホン! カズキ……その前に何か言うことは?」

「いや、叩かれたのは俺の頭……」

「――あ?」

「ごめんなさい、唯花さま! ほんの出来心とかじゃなく、本気でしたもので……もしかしなくても怒ってらっしゃる?」


 他の女子たちがひきつった顔を見せながら一斉に離れていったが、唯花の怒りを見たことが無いのだろうか。


 今回の怒りはあくまでも俺のおふざけに対しての怒り。モテ期と勝手に思った俺に対する怒りでは無いはずだ。


 そう思っていたのに、


「目的を見失ったらどうなるか分かるよね、カズキ? カズキは他の女子に目移りする余裕も暇も無いんだからね? わきまえてもらうけど、オーケー?」


 これはマジな怒りだ。どうやらほんの少しモテ期を感じた気になるのも気に入らないご様子。ここでの潜入目的のことを考えれば無理も無いが、もしや唯花オンリーな生活になるのか。


「オ、オーケー」

「ヤー! 無心で行くなら他の子と仲良くなっていいからね!」

「……かしこまりました。唯花さま」

「そういう冗談もいらないから。呼び方はいつもの通りにしないと、休み時間ごとにぶつから!」


 唯花には冗談が通じないし、他の女子とのスキンシップにも度合いが存在しているらしい。俺と唯花の関係がそもそも……って話になるが。


「分かったよ、唯花」

「うんうん、じゃあカズキ。一緒に行こ!」

「え? どこに?」

「まずは廊下。そこから!」

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