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同棲していた彼女に部屋を追い出されたけど、外国帰りの強気な妹さんの青春に付き合わされることになりました。  作者: 遥風 かずら


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第11話 教育的指導の眼差し

 

 バイト面接帰りついでのコンビニに入ってすぐのこと。

 マンション下のコンビニということも関係していたが、唯花の行動は非常に気まずい思いをする羽目になった。


「んー……? え、駄目なの?」

「そりゃそうだよ。お酒は二十歳からって決まってるし。そもそも文化の違いってものがあるわけだし、慣れて行かないと……」


 唯花がいたドイツでは16歳でお酒が飲めるらしく、その勢いでお酒を買おうとしていた――のを、直前で何とか止めさせた。


 唯花曰く、「カズキの方が年下に見えるから大丈夫」などと言っていたので、余計に意地を見せてしまった。


「ふーん……カズキせんせー的には、これからスパルタで行くんだ?」

「そこはまぁ、一応年上だし……行かせてもらうよ」


 二人で行ったまでは良かったものの、唯花が買おうとした物が物だけに、結局大した物を買わずに部屋に戻ることに。

 

 唯花はこれまで数年間ほど、それこそ思春期が始まる手前くらいから外国で暮らしていた。そのせいか日本に帰って来ても、そこでのことが当たり前だと思っているようで、早くもその違いに戸惑い始めた。


「そうかそうかー、カズキはわたしを真面目に教育するつもりがあるわけだ?」

「きょ、教育って、そんな大げさな……」

「でも文化の違いを教えてくれるわけだし、間違ってないよね」

「まぁ、うん……」


 身長的なものに大して差は無いのに、どうしてこの子は下から覗き込んで来るんだろうか。そんな眼差しをされたら、これ以上強く言えなくなる。


「じゃあ、問題無い問題なーい! オーケー?」


 お国柄というやつだから仕方が無いとはいえ、まさか()()()()()()での先生になるとは夢にも思わなかった。


(まぁ、唯花の方が頭良さそうだし、勉強を教えろとか言われても困るけど)


「オ、オーケー」


 ――ということがあったものの、部屋に戻ることが出来た。


「――はい、ただいまーっと」


 部屋に入ると唯花はすぐに着替えを始めようとする。

 本来なら嬉し恥ずかしいことになるが、言った傍からの行動すぎるのですぐに注意をすることになった。


「こ、こらっ! それも良くないことだから、気を付けてもらわないと困る……」

「困る? カズキがどうして困る?」

「いや、だから、人前だしそもそも俺は男だし、だから何というか」


 やはりというか、俺のことをどうにも子ども扱いしている気がする。

 童顔はともかくどう考えても、男であることに警戒を持っていない。


「カズキは嬉しくないんだ?」

「へっ? どういう意味で……?」 

「わたしと一緒にいることが! 最初に言ったけど、別に着替えくらい良くない? それにカズキのここでの立場はホームステイだよ?」

「……うっ、そ、そうでした」


 ついつい年上ぶりを発揮してしまったが、立場は非常に最弱だった。

 文化の違い的なものは厳しくするとしても、生活に関することはむしろ俺が気を付けなければ。


 そんな俺にトドメを刺すかのような眼差しが、ずっと突き刺さりっぱなしだ。


「カズキ、ネットカフェ生活に戻りたくないよね?」

「出来ればここがいい……です」

「ヤー! じゃあ、成立! カズキの口うるささは、教えることだけ。ここでの動きについては沈黙! それでいいよ」

「い、いえすいえす」


 唯花の言う動きとは、もちろん着替えとか生活スタイルのそれとかあれとか。

 幸いにして唯花の寝室は別なので、その辺は心配しなくていい。


 問題は、現時点で固定の部屋が無い俺のいる場所での行動だ。

 さすがに風呂上りの姿は見せて来ないと思われるが、妙な挑発行動に出られる恐れがありそうで怖い。


 それさえ気を付ければ、生活指導における立場は俺の方に軍配がある。


「――って、わあぁっ!? 言ってる傍から、それはまずいって!!」


 やることが無いのか、唯花は薄着になって自由に動き出した。

 スタイルがいいのは太ももを目の当たりにした時から気付いているだけに、本当に困る。


 さすがに上はカーディガンを羽織っているので、胸の辺りは気にならない。


「もしかしてカズキって……」

「な、何?」

「元カノのあの人とは、そこまでじゃなかったりする?」

「……ど、どうだっていいと思うけど」

「ふーん、そうなんだ……。カズキって、やっぱりそうなんだ」


 あまり思い出したくも無いが、元カノとなった麗香とは結婚前提をしていただけに、進んだ関係では無かった。


 せいぜいキスくらいなもので、大学の友達に言うと相当驚かれた記憶がある。

 そういう意味で、俺もあいつも子供っぽさがあった。


 そうかといって、あいつの妹である唯花に知られたくも無いわけで。

 しかし――


「何か嬉しそうにしてる? そんなに恥ずかしいこと?」

「んんー、カズキのことだから安心しただけ。お酒のこともそうだけど、優しいよねカズキは」

「と、とにかく、ここでの生活はともかく、これから厳しく行くから!」

「期待してるね。カズキせんせ!」

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