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一言から物語

解ける

作者: 誣妄 姫子

溶けそうな程に暑い夏の日の事だった…


夏休み中盤。大学の課題がなかなか進まず気分転換にアイスを買いにコンビニへ向かいながらふと、今日までの日々を思い出していた。


大学で仲のいい友達が出来た。彼と出会ったのは、半年前だった。彼の名前は、春翔(はると)。出会って数日、仲のいい友人になった。暇な時間は毎日のように遊んだ後、春翔か私の家でお泊まり会。異性ではあったが、男女の関係ではなかった。ただただ、居心地のいい関係だった。


ある日のこと。私は、春翔の家に向かっていた。特に連絡もせずに遊ぶことはあったから、いつものノリで向かっていた。


「やっほー!真希(まき)たそが遊びに参ったぞぉ!」


勢いよくドアを開けた。そしたら、春翔が眠そうな目を擦りながら私に言った。


「はっ?うそ?」


私は何が何だか分からなかった。いつもの春翔はそこに居なかった。


「え?この人誰?」


次に口を開いたのは隣に居た女だった。


(はる)浮気してたの?何この女、こんな朝っぱらから何しにきたの?」


朝と言ってももう、昼前なんだけどな。まあそれでも彼女はとっても美人で、私とは比べようがないほど出来た女なんだよな。


「いや、違うんだって。……真希。帰って。早く。」


そう言いながら私の腕をつかみ、玄関へ連れ出した。


「ごめん、春翔。彼女いるなんて思わなくて。また、連絡っ……。」


春翔は私の顔も見ずに、玄関のドアを閉めた。あの時の春翔の顔は、今まで見た事のない男の顔だった。



何日かたった。春翔とは顔も合わせてないし、連絡すらとっていない。怖い。ただただ、あいつが。心変わりとは早いものだ。昨日まで大好きだった彼があいつに変わった。それが、ただ怖い。今まであった心の支えがいつの間にか、いや瞬間的に消えたのだ。彼女がいるなら言えばいい。お前と浮気するほどお前のことは好きじゃない。家に行ったときいつも「おかえり」って言ってたよね。それは、なに?私を彼女代わりにでもしてたんか?私は、お前の友達じゃなかったの?私だけか。そう思ってたのは。私はそんないい女じゃないけど、お前にちょうどよくあしらわれるための人間でもない。女じゃない。


おっと、アイスが溶ける。買ったばかりのアイスを私は食べ始めた。


「うまっ。」


男がこんなものだなんて思わせないでよ。お前と恋愛していたつもりはない。彼女がいたって、友達として愛してたよ。距離感もちゃんと保てた。彼女に心配されないように細心の注意をしながら接しられたよ。彼女に怒られたなら、私は頭だって下げられた。2人で遊ぶなって言われるならちゃんと他の友達も混ぜて遊んだよ。友達の距離と恋人の距離なんて把握済みだよ。


幻想だった。今はその言葉に留めておこう。私の理想は、崩さない。あいつはそういう男だった。私は気づけなかった。それだけだ。


でも、なんでだろう。文句は出るのに嫌いにはならない。そういうものなのかな。いつか笑い話になる。それまでは、昨日のことを思いながら戦おうではないか。


感情とは、怖いものだ。


後日、判明した。彼女とは遠距離恋愛だったらしい。久しぶりに帰っていたらしい。彼女は社会人で出張が多いらしい。私はそんな中、変な気遣いの要らない相手でちょうど良かったらしい。彼女の心は寛大だ。まだ、別れてないらしい。喧嘩したけど、仲直りしたらしい。男女の関係が無いのならなにしてもいいらしい。変な世の中だ。不幸になったのは私だけ。振り回されたのに、私だけ。こんな理不尽嫌いだ。


彼の不幸だけ願って、生きてみようか。いや、それじゃ楽しくない。私の幸福を祈ろうよ。男なんてどこにでもいる。友達なんて、作ろうとすればいくらでもいる。私にとっての幸せを与えられるように生きてみようじゃないか。生きてやろうじゃないか。


アイスは溶けたけど。私はまだ、ここにいる。

アイスは食べ終わったけど。私はまだ、歩いてる。

私がドロドロになることは、この先ない。

溶けないから、美味しいんだよ。

溶けかけだって美味しいんだ。

味わえない、お前が悪い。




私は、異性間の友情が出来てる人だから異性で友情はできるって思ってるけど。まあ、相手によるよね。当たり前だけど。

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