09.『奈落』で美味しいご飯と女子トーク
「いやーさっきの魔法は凄かったな。で、ホントに賢者になってるん?」
デイジーがアイテムボックスの中をゴソゴソしていたかと思うと、おたまや器、スプーン、大きなお鍋、三切れのパンがでてきた。
「リリー、鑑定するよ」
そう言ってエルがアメシストの瞳で私をじっと見る。
「うん、職業が回復師と賢者になってる。上位職になったからか、魔力も上がってるね」
「よっし、準備完了!」
私たち三人の前には、パンと、具が沢山入った暖かなシチューとスプーンが置かれていた。
「「ええっ!」」
私とエルは驚いて目を見開く。そして、デイジーとシチューを交互に見る。
「アタシ、アイテムボックス持ちやん。これって、時間が経過しないから、温かいものは温かいままやねん。だからダンジョン攻略前にはご飯作って入れとくんよ。だからしばらくは美味しいシチュー食べられるよ」
そう言ってデイジーは、大きなお鍋を指さした。
「デイジーを追い出したパーティーって、探索中の快適さ、ダダ下がりだよね……」
うんうん、と三人でうなづいた。
「ま、あっちはほっといて頂きましょ」
「「「いただきまーす!」」」
シチューはとっても美味しかった。一口大に切りそろえた野菜とお肉はちょうど口に入れると、食べやすくてかつ満足感がある。お肉は特に絶品で、口に入れるととろけるのだ!
「美味しー♡」
私はうっとりして、スプーンを持ったままの手でほっぺたを抑える。
エルも、クールではあるけれど、口角が上がっていて満足そうにうなづいている。
「ホント、デイジーを追放したリーダーって理解できないよ!」
「うーん、それなんだけどなあ。アタシ見た目これでも十八歳なんだ。でな、突き落とされた数日前に、リーダーに付き合えって迫られてな。……お前だったら『合法ロ〇』じゃん!ってさ……顔ぶん殴って断ったけど」
うわあ、と思ったけど、なんか私にも思い当たることがあった。
「……そういえば、私もリーダーにコクられてお断りしたかも……だってメンバーの他の女の子とも付き合ってたはずだったから」
「そういえば私もリーダーを振ったぞ。好みじゃなかったんでな」
エルまでしれっと言ってきた。
「「「……」」」
3人は目を合わせ沈黙する。そして。
「「「それか!!!」」」
と、互いの顔を指差し合う。
奈落に突き落とされたのは、男側からの、振られた逆恨みが原因だったのか!
「ありえないよー」床をゴロゴロしながらいう私。
「最低やな」デイジー。
「……嘆かわしい」エルがため息をつく。
ご飯を食べ終え、お片付けしながら、各リーダーやパーティーメンバーの愚痴を言ったり、コキ下ろしてみて笑いあったり。女の子同士の時間を過ごした。とても楽しかった。
そして、私たちは休息して回復を図るため、眠りについたのだった。
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