08.戦利品の分配
私たちは一旦、白い部屋に戻った。
さすがに初めてのモンスター部屋は怖かったし、緊張した。みんな気持ちは同じなのか、部屋に入るなりそれぞれ座り込んでいた。
「先に分配する?それとも食事にする?」
デイジーに聞かれた。
そういえば、私たちは奈落に落とされてから何も物を食べていなかった。確かに言われてみるとお腹がすいてくる。
でも、エルの目はさっき得た魔剣に釘付けだし、私も指輪がすごく気になる。デイジーだって、鎧をさっきからチラチラ見ているのだ。
みんなの様子を見て、エルがくすくす笑い出す。
「この調子じゃ、さっきの部屋で手に入れたものが気になって、落ち着いて食事出来そうにないな」
「「だね」」
よって、分配を先にすることに決定したが……。
「剣はエル、指輪はリリー、鎧は重戦士のアタシって、なんかそれぞれのために与えられた感があるなあ」
アタシ重戦士なのにポーターさせられてたせいで皮鎧だったしなー。と、もう鎧は私の!状態だ。
「まあ、デイジーの言う通りかな、不満ある人いる?」
だれも異議は唱えなかった。
「じゃあ、剣は私で、指輪はリリー、鎧はデイジーね」
私はエルから指輪を受け取った。
デイジーは早速皮鎧を脱ぎ、アイテムボックスに放り込むと、『カヴァーチャ』という名の黄金の鎧を着込む。最初小柄な彼女には大きく見えたのに、着たらぴたっとサイズがあった。さすがアーティファクトクラスの武具だ。
「なあなあ、エルさん。試しにその元の剣で切りつけてみてくれん?」
デイジーのノリは新しいおもちゃを手に入れた子供だ。やらないと気が済まないだろうし、実際に性能テストは必要だろう。
「よし、行くぞ」
そう言ってエルが今まで使っていた剣で一閃する。……傷は全くつかなかった。
「エルさん結構本気……にしても見事にキズ一つ付いてないわ」
そう言ってエメラルドのような目をキラキラさせて、鎧を撫で回している。
エルはと言うと……。
グラムを持って扉を開けたかと思うと、偶然そばにいたミノタウロスの首を一刀両断にした。まるで通り魔だ。
「素晴らしい……」
扉を締めながら瞳は輝く刀身にうっとりだ。
で、私なんだけど……。
恐る恐る右手の中指に指輪を填めた。すると、すごい勢いで魔術書のページをめくるように、ありとあらゆる魔法の名前と効果イメージが頭の中を駆け巡っていった。
「うわあああ」私は頭に溢れる膨大な知識量に頭を抱える。気持ち悪い……。
そして追い討ちをかけるように、アレが頭に響いた。
【全魔法を理解したことを確認しました。特別措置により、魔術師を賢者に昇格します】
「魔術師が賢者になったらしいです……」
そうぼんやり言いながら私も部屋の扉を開ける。少し離れたところに狼が群れで三匹いた。
「細氷の嵐」
私が唱えると、オオカミと言わず、エリア全体が凍りついていた。
「「うわぁ」」
扉の隙間から見ていたふたりが引いている。いや、みんながみんな大概だと思うよ。
下記をどうかお願い致します(。ᵕᴗᵕ。)
駆け出し作家の身ではありますが、すこしでも
・面白かった
・続きが気になる
と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。
評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。