07.『奈落』探索②
私たちはフロア探索を続けていた。
「ボス部屋の向かいのドア、開けてみようか?」
エルが意を決したように私たちに尋ねる。
「待ってね、バフをかけ直すよ」
私は全員分のバフをかけ直した。
「「ありがとう」」
そう言ってくる二人の瞳は、決意と緊張に張りつめている。
「モンスターが大量にいたら、まずはリリーの魔法で足止め。慌てずに行くぞ」
「「了解」」
部屋にいたのは、十匹のフェンリルだった。二十の爛々と輝く瞳が私たちを捕える。
私たちが部屋へはいると、扉は自動で閉まり、逃げ場はなくなった。
「氷縛!」
両手でいつもより大きな魔力を練り上げ、捕縛の効果を部屋全体に行き渡らせる。
しかし、二匹が戒めから逃れこちらへ向かってくる。
「風の刃」
真空の刃をその二匹の足元に向けて飛ばし、二匹分の脚八本を切り裂く。
体を支えるものを奪われ、二匹のフェンリルは、エルの頬とデイジーの腕を牙で掠めながら、大きな音を立てて倒れ込む。
そこを、エルが一匹の首を叩き砕き、デイジーがもう一匹の額にハルバードの先端の楔を突き刺した。
「ヒール」「ヒール」
彼女達の頬と腕の怪我が綺麗に消えていった。
「「「あと八匹!」」」
「氷の楔」
出来うる限り顕現させた氷の楔が、フェンリル達に降り注ぐ。
二匹の眉間に集中的に降り注ぎ、絶命させた。
その間に、デイジーがハルバードを振り回し、鉤爪の部分を使って三匹のフェンリルの喉を掻っ切る。
「風神剣!」
エルが剣を一閃させると、真空の鎌鼬が発生して二匹のフェンリルをなぶり殺した。
「これで最後や」
どす、とデイジーが最後の一匹の額にハルバードの先端の楔を突き刺した。
「さて、回収回収~。フェンリルの毛皮は高く売れまっせ。あ、リリーさん、凍らしたのとかしてー」
そう言われて、「ウォーム」と唱えて凍ったフェンリル達の体を溶かす。
すると、ご機嫌な様子でデイジーは全部アイテムボックスにしまって歩いている。
「あれ?」
なんだか部屋の中央がキラキラと光る魔法陣を描き出した。出てきたのは三つの宝箱だった。
「ねえ、エル、宝箱が出たんだけど」
「ああ、鑑定する、開けないで」
フェンリルを収納し終わったデイジーを含めて、三人で宝箱の前に座り込む。
エルは豪華な装飾の施された三つの宝箱をひとつずつ鑑定していく。
「全部罠はないね。私が開けていいかな」
「「うん」」
一つ目は剣だった。すぐにエルが鑑定する。
「魔剣グラム……竜さえ切れる魔剣だ」
二つ目は指輪だった。
「魔術を統べるものの指輪。これを嵌めると、魔法書を読むことなく全ての魔法が理解できるそうだ。まるでアーティファクトだな」
三つ目は黄金の鎧だった。
「カヴァーチャ。どんな武器でさえ貫けない鎧……らしい」
さすが最下層なのか。とんでもないものが出てきてしまった。
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