62.大悪魔戦②
「矮小な者共相手にこの姿サタンになろうとは……」
赤い瞳が私たちを睨めつけている。
大悪魔サタンだ。
「全滅」
サタンが静かに唱える。すると、六人の足元に、大きな血色の魔法陣が展開される。そこから、邪悪な炎が吹き上がった。業火が私たちだけでなく、地表の草木も全て焼いていく。
「「「きゃああ!」」」
「「「……っく!」」」
全員が業火に巻き込まれる。
さらに、サタンは追い打ちをかける。
「苦痛の叫び」
私たちの周りを禍々しい闇が覆い、周囲から苦痛の言葉や呪詛の言葉が私たちを苛む。ハヤトやスノウ、フォリンにトオル、そして、ユージーンの幻影が絶え間なく呪詛の言葉を吐く。
きっとこれは、負けて屈したら連れていかれる……!
「解呪」
サタンの作った呪いの領域を解呪する。
「エリアハイヒール!」
私は歯を食いしばって立ち上がり叫んで、清浄なる光がみんなを包み込み癒していく。
……受けてばかりじゃ、みんな死んでしまう。
恐ろしいサタンのその目を睨めつけ、私は宣言する。
「神の憤慨!」
天より降る閃光をサタンに直撃させる。邪悪なものを突き破る光だ。
「ぐあああああああああああ!」
サタンは神々しい光を全身に浴び、苦痛に胸を掻き毟る。
「粛清の業火」
追い打ちをかけるように、バアルが、極限魔法を行使する。
サタンの元へ、空からたくさんの流星が降り注ぎ、サタンの体を打ちつけ穴を開け、炎で包んでいく。
「極限の嵐」
アドラメレクの言葉に、暴風雨・稲妻を伴う大嵐を引き起こされ、サタンを襲う。稲妻が際限なく降り注ぎ、サタンの体を無数の怒槌が焼いていく。
「なぜだ、なぜだあああ!」
サタンが、激怒する。
「なぜ、勝てない、なぜこの矮小な生き物達に勝てないぃ!」
「……それは背負っている命が、抱えている命が沢山あるからよ!あなたになんか、そのひとつひとつの大切な命を奪わせたりしない!」
ヒルデンブルグ出会った人達、お爺さま、お祖母様。優しく匿ってくださったエルの家の人々。ドワーフ村の陽気なデイジーの仲間たち。
そして、魔族領で出会った優しい人たち。みんなみんな私の手の内からこぼしたりしない。
「あなたを破って、大切な人たちを守ってみせるわ!」
「小賢しいわ、小娘え!!」
サタンが私に獣の爪を向けて駆け込んでくる。
「させるか!」
エルがそこに割り込んで来る。そして飛び上がって空を舞い、その差し出された腕を空から切りつける。
「重力増加30」
私はエルに重力負荷を追加し、その剣戟の威力を上げる。
剣戟は、サタンの腕を片方失わせた。
「ぐあああああああああああ!腕が、我の腕がぁ!」
「範囲速度上昇!」
私は味方全員の速度を上昇させる。
「神よ!邪悪なものにあらがいし者達に祝福を!聖戦」
そして、全ての味方に聖属性を付与する。これで、みなが邪悪なものサタンに傷をつけられるだろう。
「「行くぜー!」」
フルフルがその大鎌でサタンの腹を抉る。
同時に駆け込んだデイジーは、ハルバードの大きな刃で、残った腕をたたきつぶす。
「ふっ」
サタンの背後にまわったエルが、サタンの首を切りつける。彼の首から血が吹き出す。
「神よ慈悲を……邪悪なるものを討ち滅ぼしたまえ!」
私の背後に、断罪の光が無数に顕現し、サタンに向かって行く。
邪悪なものを断罪する神聖な光が、徐々に徐々にサタンの存在を削り取っていく。
「あああああ!やめろ、やめろおおおおおおおおおおおお!」
サタンを苛む光は止まない。徐々にその存在を無きものにされながら、サタンが最後まで叫ぶ。
……そして、サタンがボロボロになり、抵抗する力も失った時。
私は空間魔法を展開する。
「異界顕現」
空間をこじ開けて、異空間が現れ中にサタンを取り込む。
「消滅」
私は『それ』を手のひらで握りつぶす仕草をする。
……サタンを取り込んだ空間が、サタンごと消滅した。
「「やったあ!」」
デイジーとフルフルが無邪気に抱き合って、飛び跳ねる。
「剣戟、お見事。美しかったですよ」
アドラメレクが、エルに賞賛の言葉をかける。
「そういう貴方は、折角のオシャレが台無しね」
エルがからかうように彼にクスリと笑いかける。
確かにアドラメレクの孔雀の羽は焦げ落ち、白いスーツも焦げや煤で大変なことになっている。
「……お前は強いな」
そう言ってバアルが私を背後から抱き寄せる。
「……ううん、みんなが、……貴方がいるから頑張れるの」
私はバアルの腕での中で瞳を閉じた。
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