61.大悪魔戦①
「我が名は大悪魔ルシファー。まずは矮小な地上の生き物達から血祭りにあげよう。そして、我を堕とした天の輩も皆殺しにしてくれるわ!」
そう言って、元勇者ユージーンの肉体を乗っ取って顕現した大悪魔ルシファーが私たち人間と、バアル達魔族の前に立ちはだかる。
長く伸びた黄金の髪と瞳、私たちを上回る巨躯、三つのヤギの角、堕天する前は白く美しかったであろう、禍々しい三対の羽根。その姿だけでも私たちを威圧する。
……落ち着いて。まずはみんなにバフをかけ直さないと。
「総筋力増加」「総速度増加」「総攻撃強化」「総魔法強化」
「よし行くぞ!デイジー!」
「よっしゃあ!」
バフを合図に、フルフルがデスサイズを、デイジーがハルバードを担いでルシファーの足元に走り寄る。
「「そぉれっ!」」
二人がルシファーの両腕目掛けて得物を振り下ろした。
ルシファーが、ふんっ!と気合いを入れると、彼の体の筋肉が一瞬で硬質化する。
ガキン!と金属音がぶつかる音がして、二人の得物が硬質化した筋肉に弾かれてしまった。
「わぁっ!」「きゃあ!」
二人は逆にルシファーに腕を取られ、振り払われる。城壁に打ち付けられ、城壁を崩し、その残骸に埋もれる。
「ヒール」「ヒール」
私はすかさず、はい出てくる二人に回復魔法をかけた。
「そんなものは効かんわ」
ルシファーが二人を嘲笑する。
「行くぞ、アドラメレク」
バアルが言うと、アドラメレクが頷く。
「地獄の業火!」「絡み付く竜巻!」
業火を取り込んだ竜巻がルシファーの体を覆い尽くす。
しばらくすると竜巻は鎮火し、ルシファーは無傷でそこに立っていた。
「そんなものか、魔王」
ルシファーがくつくつと笑う。
「返礼と行こうじゃないか」
ルシファーがそう宣言し、バアル達の方へと一歩前に踏み出す。そしてゆっくりと片手を上げる。
「串刺し公の庭園」
ルシファーの言葉と共に、バアルとアドラメレクの足元から複数の槍が突き出し、二人の腹をザクザクと貫通し、その身体を持ち上げて空に晒す。
「バアル!」
「アドラメレク!」
私とエルが彼らの名を呼んで叫ぶ。
その血なまぐさい名の通り、彼らの足元を、彼らが流した血で染めて、槍が消失し、二人は地面に打ち付けられた。
「「ぐっ……」」
「ハイヒール」「ハイヒール」
私は即座に彼らに回復呪文をかける。すると、傷は癒え、彼らは立ち上がった。
「ありがとう」
バアルは私に笑みを向ける。
私も彼に笑みを返した。
「次は私!」
今の魔法じゃダメってことは、もっと威力のあるものを持ってこないとダメ……。
「識天使の門!」
私が口にすると、私の背後に、かつてヘカトンケイルに向けた、あの、白い黄金で飾られた巨大な門が顕現する。そして、その両開きの扉がゆっくりと開いていく。扉の中には直視できないほどの光と熱がこもっているのが見える。
門が開ききった時、扉からありとあらゆる物を溶かし切る程の光が、一斉にルシファーへ向かって放たれた。そして、その巨躯を光が覆い尽くしていく。
「何ぃ!我を傷つけるだと!」
光に包まれるルシファーの声が聞こえる。
「追加よ!」「天の断罪の光!」
天空から大地を貫く光線が、ルシファーがいるであろう場所へ向けて幾本も降り注ぐ。
降り注ぐ光はルシファーを逃さず、激しい熱線が彼を焼き、苛む。
「ああああああああ!許さぬ、許さぬ!矮小な人如きが我をこのように苛むなど……!」
ルシファーの苦悶の声が聞こえる。
私の放った魔法の光が消えようとすると、すかさずバアルがルシファーに向けて魔法を放つ。
「鉄の処女!」
ルシファーの背後に、拷問道具『アイアン・メイデン』が左右に扉を開いた状態で現れる。その処女の顔はまるで聖母のように慈愛に満ちている。そして、開かれた扉の中には、太い鉄の杭が余すところなく生えており、生存空間を許さない。
そこへ、光に焼かれ、無惨な姿となったルシファーが、処女の中に吸い込まれていく。
「やめろ!このようなものの中に入るなど……!」
抵抗するルシファーが、扉が閉じるのを防ごうと抵抗する。その合間にも、鉄の杭がルシファーの身体にくい込んでいく。そして、抵抗虚しく、無慈悲にガシャンと扉が閉じられた。
「ぎゃああああああ!許さぬ、許さぬぞおおお!」
ダン、ダン、と扉を叩く音がする。
そして、処女の下部からは、ルシファーが流したであろう血が、ボタリ、ボタリと地面を汚していく。
そうしてしばらく経って魔法の効果が消え、刺し傷だらけになったルシファーが姿を現す。
「今だ!」
エル、デイジー、フルフルが、ここぞとばかりにルシファーに駆け寄り、その首を、その胸を、その腹を切付け、その身体を、バラバラにする。
「やったか!?」
エルの言葉に、皆が固唾を飲む。
バラバラになった体のパーツは、何故かどれも地面に落ちずに、宙に浮いている。
「……許さぬ、お主ら皆血祭りにあげてくれるわぁッ!」
宙に浮いた頭が叫ぶ。
宙に浮いた頭は、硬質な毛が覆い尽くし、形も徐々に歪んでヤギのものとなる。
宙に浮いた胴体は、失った羽根に変わり、新たにコウモリの羽、二対に生え変わる。
宙に浮いた下半身も、頭同様に硬質な毛が覆い尽くし、形も徐々に歪んでヤギのものとなる。
やがてそれは近付きあい、ひとつの体に纏まっていく。
「矮小な者共相手にこの姿になろうとは……」
赤い瞳が私たちを睨めつけた。
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