06.『奈落』フロア探索
私の魔法適性のチェックが終わったところで、エルが奈落から生還するための計画を立てようと提案してきた。
私たちがいるダンジョンは王都からほど近い街ハルムにある。ハルムはこのダンジョンを中心に成長した迷宮都市だ。
ちなみにハルムのダンジョンは、『奈落』と呼ばれる第六十階を最下層としていて、五十三階が最高踏破記録である。五十四階層より先は足を踏み入れて生きて帰った人間はいない。
……ということを、エルが私たちに丁寧に教えてくれた。
「まずは三人でこのフロアの探索をして、構造把握をせんとな」
デイジーが部屋に座り込んでハルバードの手入れをしながらの状態で答えた。
「構造把握が出来たら、生還に向けたレベリングをする方針を立てようか」
エルの言葉に、私もデイジーも、同意、とばかりにうなずいた。
うん、みんなで生き抜こう!
◆
全員にバフをかけたあと、エルを先頭にして扉を少し開けて外の様子を伺う。
「狼が二匹いるな……リリー、開けて直ぐに足止めいいか?」
「はい!」
エルが扉を大きく開ける。その隙間から私が部屋の中から狼へ向けて魔法を打つ。
「氷縛!」
私の両手から発せられたふたつの冷気が、狼二匹へと向かい、足元を氷で捕縛する。
狼は激怒するが、足が氷漬けで動けないので、「ガウガウ」とむやみに頭を振って噛み付こうとするが空振りするのみだ。
「よっしゃ、頭狩ったる!」
デイジーがハルバードを一匹の首に何度も振り下ろす。
「これで最後や!」
骨が切れたら早かった。その言葉通り、デイジーは首を切り落とした。
エルはもう一匹の両目に向けて剣を一閃する。
視力を奪ったあと、眉間に向けて剣を突き立てた。
「じゃあ、進むぞ」
私たちが居た白い円形の部屋の外壁伝いにぐるりと周囲を見渡す。敵がいなくなって落ち着いて見ると、私たちがいる円形の白い部屋を中心として、正方形にモンスターの出没するエリアが展開されているらしい。
正方形の四辺の壁にそれぞれ扉があって……そのうちの一つが、彫刻のような模様の上に金で装飾された一際大きな扉となっていた。
「あの豪華な扉の奥がボス部屋かな。あと三つは宝箱があるか、モンスター部屋か」
「あ、ミノタウロスが一体湧いた」
私が小声で指さしながら指摘する。
「私に行かせて」
「「OK」」
まずは足止めして。
「氷縛!」
そして両腕を空に掲げて叫ぶ。スノウが得意にしてたあれ……!私にも、きっとできる!
「私は要らなくなんかない!!氷塊の吹き荒れる嵐!」
私の言葉と共に、ミノタウロスの足元から冷気が立ち込め、やがて氷塊を含んだ冷気の竜巻がミノタウロスを包み込む。
ミノタウロスは、しばらく抵抗していたが、氷塊に散々嬲られたあと、やがて動けなくなり傷だらけの氷結死体となって倒れた。
エルが私の頭をよしよしと撫で、デイジーが私の背をぽんと優しく叩いてくれた。