53.醜悪すぎる『玩具』①
シャーマンの村以降、私たちはなるべく早く魔王城に到着すべく、馬を走らせた。ずっと前には景色にも見えなかった魔王城は、景色として高い山々に囲まれるようにそびえ立っている。
そして、私たちは山の麓の平原にある街にたどり着いた。
この辺りまで来ると、人々は見た目人間と変わらない。少し違うのは、角が生えていたり、牙が生えている程度だ。着るものも文化的で、人間と変わらないようなワンピースを着ていたり、ドレス、作業着にスーツを着ていたりする。
街の塀は高いレンガづくりで、夜間は閉門できるように扉付きだ。
「こんにちは。怪我や病気で苦しんでいる方はいらっしゃいませんか?」
門の両脇にいる門番に声をかける言葉はいつもの文句だ。
「おお、噂の人間の聖女御一行ですな!」
「闇の神殿にご案内します。病や怪我に悩むものは集まるよう、触れを出しましょう!」
そう言って、歓迎されて街に足を踏み入れた時だった。
「こんなところにいたんだぁ。探したよ?」
背後を振り返ると、漆黒の髪に血色のガーネットの瞳。頭に生える二本の角に、漆黒のコウモリの翼、そんな緊張感しか覚えない出で立ちの少年が、いた。
「「あ、悪魔だ!住民に避難指示を!」」
門番の魔族はそう叫んで街中に駆け込んで行った。
そんな彼らなど気にせずに、現れた少年は私たちに告げる。
「君たちさあ。僕の可愛いテューポーンとピュートーンを殺したよねえ」
そう言ってガーネットの瞳を半月のようにたわめる。
覚えがある。ドワーフ王国で退治した異形の龍のことだ。
「あれはね。僕が、彼らが子供の頃に作ったの。とっても頭が良くて、可愛い子たちだった。龍は黄金が好きな性質だからね。ドワーフの宝物室に入れてあげたんだよ。彼らはとても喜んで、そこで眠っていた」
可愛がっていた幼い双龍を思い出しているのか、悪魔は目を瞑って自らの体を抱きしめていた。が、その血色の瞳を見開く。
「でもね、そんな子を君らは殺したよね。僕はね、とーっても君たちに怒っているの。だからね、君たちにとーっておきのプレゼントを作ったんだよ」
そう言って、『悪魔』と呼ばれた彼は手を振るって魔法陣を展開する。
「いでよ、我がヘカトンケイル!」
魔法陣の上に、魔物の影が浮かび上がる。巨大な体躯に、鍛えられし腕の数々。
……そこには、変わり果てた、かつて私たちを貶めた、それでもいつかは仲間だった、そんな彼らの集合体がいた。
腕は人間のそれ、百。
顔は人間のそれ、五十。
瞳は人間のそれ、百。
そんな肉の塊がそこにはいた。
「リ、リー……ご、めん」
「デイ、ジー……俺、を、コロシテ」
「リ、リー……イタいの」
「リ、リー……コロシテ……」
恐らく五十人の人間を犠牲にしたであろう中に、ハヤト、スノウ、フォリン、トオルの顔があったのだ。
「どう?どう?どう?傑作な玩具でしょう!君たちの泣き顔を見るために作った、僕の新しい最高傑作だよ!」
そのあまりの残虐さに、そのあまりの人間の尊厳の冒涜に。……そして、そのあまりの醜悪な容姿に、哀れな泣き声に。
彼らは確かに罪をおかした。
でも、そこまでの罰が必要か?
私たちは、憐憫よりも前に、その醜悪すぎる姿に吐き気を覚えるのを耐えるしか無かった。
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