表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/64

46.魔王さまは三人娘が気になる

 リリーたちが旅する場所からはるか遠く、高い岩山に囲まれてその城は建っていた。


 ここは魔王城。黒の大理石を豪奢に使ったシックな執務室で、その城の主が、申請書や嘆願書の山を処理していた。城の主とは、もちろん魔王その人である。

 彼の名は魔王バアル。銀色の腰まで届く長い髪に、アイスブルーの瞳。背が高く、黒のローブは銀糸で編んだ平織りの紐で緩く結んでいる。その上から、黒い銀糸の刺繍を豪奢に入れたローブを羽織っていた。


 そんな彼、魔王が書類を処理するのはおかしい?

 いやいや、治める民達が『人間』とは少し見た目が違ったり、特殊な能力を持っていたりするだけであって、彼は普通に『一国を治める王』なのである。


 ちなみに勇者に魔王が倒されたとなったらどうするかって?

 宰相が国王代理として実務を引き受けるのである。彼らからすると、暴力的に一国を治める王を倒しに来る勇者の存在は全くもって迷惑甚だしいのである。まあ、簡単に倒されてやるものでもないが……。


 と、そんな彼が、一枚の申請書に目をとめた。

「は?人間に人間の誘拐犯を捕まえてもらったから、人間の誘拐犯を引き取って処分して欲しい?ウサギどもめ、なんだこれは。おい、アドラメレク!また書類不備だ!民にいい加減に書類をきちんと書くよう周知しろ!」

 山のように積み重なる書類に、しょっちゅう混ざる書類不備。彼はイラッとして、その一枚の申請書を机の上に放り投げた。


「違いますよ陛下、それはそれで正しいのです。それくらい、宰相の私が先に調べておりますよ」

 そう言いながら、アドラメレクと呼ばれた青年が呼ばれて部屋にやってくる。

 彼の出で立ちは、華美、妖艶。緩やかなくせを描くショートボブの髪は濃いエメラルド色で、同色のまつ毛は影を落とすほどに長い。片目に泣きボクロをつけた瞳は濃いサファイアのよう。弧を描く唇は女のように赤い。体にフィットした真っ白なスーツ。そして極めつけが、マントの裾一面をレースのように飾る孔雀の羽であった。


「どうやら、人間の女三人が我らが領地で人助けをして歩いているようなのです。その書類も、誘拐犯を捕らえたというのが、その三人娘のようで」

 そう言って、主が放り出した書類を元の場所に戻す。


「新しい勇者なのか?前のは悪魔に誘惑されてどこかへ消え去っただろう。次が来るにしても早過ぎないか」

 彼にとっては勇者など頭痛の種でしかない。眉間に皺を寄せ、こめかみを押す。


「そうでは無いと思いますよ。なんでも、三人娘の一人は治癒の力を持っているらしく、領民の怪我や病を治して歩いているそうです。『勇者一行』であれば、領民を傷つけはしても癒しはしないでしょう」

 アドラメレクの言葉にますます謎が深まるバアルである。


「バアルさま、追加の書類お持ちしました!」

 そう言って部屋に入ってくるのは、十二歳ほどの少年の見た目をした、侍従長フルフルである。濃い金色のショートカットの髪に、同じ色のツリ目がちな瞳。ちらりと除く八重歯。『猫のような』の形容がふさわしい顔立ちだ。

 そんな彼は、「追加の書類」の言葉にバアルが睨むも、しれっと机の空きスペースにしっかり置いていく。


「そうそう、その三人娘ですけど、ハーフリング達の村で、片足を失った男の足を元に戻したとか。村人が女神だって大騒ぎしてましたよ!」


 バアルは魔道具である『遠見の水晶』を取り出してくる。しばらく探すと、確かに人間の三人娘が馬に乗って旅をしている様子が映った。

「足を治したって言うのはどの娘だ」

「ピンク色の髪と目って言ってましたよ」

 コレですかね、と覗き込んだフルフルがリリーを指さす。


「何がしたいんだろうか?」

 リリーを眺めながら首を傾げるバアル。

「まあ、領民に危害を加えず、我が城へと向かってきているようですから、着いてから聞いてみてはいかがですか?」

 アドラメレクの言葉に、バアルは一先ず頷くのであった。

下記をどうかお願い致します(。ᵕᴗᵕ。)


駆け出し作家の身ではありますが、すこしでも

・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


感想もいただけたら、とっても喜びます"(ノ*>∀<)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ